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「なんだこりゃ……臀部が穴だらけだな。アイル、お前一体どんな戦いしたんだ?」

「あはは……それはちょっと秘密で」


ホーンラビットに微妙な勝利を収めた後、兎を入れた袋を担いで兵団(レギオン)に帰還した。

兵団(レギオン)への道を知らなかったので、親切そうなおじさんに案内してもらった話は割愛。


アニキは俺の帰還を大変喜んでくれた。

まさか本当に兎を仕留めてこれるとは思わなかったらしく、驚いてもいた。『クリストフィアに自慢してくるぜ』とか言っていたところを見るに、彼女に俺の金銭的援助の許可を乞うてくれていたのが伺えた。


俺だってやればできるのだよ。



「しっかし本当にナイフ一本で兎を倒してきちまうとはなぁ……アイルが心臓を一突きにされた死体が見つかる事だって懸念してたのによぅ」

「物騒なこと言わないでくださいよ」


今は俺が持って帰った兎をアニキが大きな肉切り包丁で解体しているところだ。


グロ系に全く耐性のない俺からしたら吐き気を催すただのグロ映像でしかないけど、『アイルも冒険者になるなら覚えた方がいい』とアニキに言われて鑑賞中である。


五分ほど兎がバラバラにされていくのを見て少しだけ慣れてきたけど、これを自分でやれと言われたら絶対できないと思う。

あ、目玉が飛び出た。グロいなぁ……


「よし! ツノの品質は良いみたいだな。これは俺があとで受付に出しておこう。ほれ、報酬だ」

「ありがとうございます」


アニキは先払いで銅貨を5枚払ってくれた。

これで何か買えるぜ。


「なんか食べるものを買ってきます」


アニキはいい笑顔で送り出してくれた。





暗くなってきた王都の街並みを歩く。

王都というのは平民が住んでいる区画と貴族が住んでいる二つの区画に分かれている。


俺が今歩いているのは平民区画の中央通りだ。この大きな通りにはたくさんの商店が立ち並んでいる。

この中央通りを北にまっすぐ進めば、貴族のいる高級区域に通じる入口がある。絶対に行かないけど。


平民が貴族の住む区画に入ることは許されないけど、貴族は暇つぶしでこちらの区画に来ることがよくある。主にストレス発散の目的でだが。



「生意気そうな小娘がちらほらといるなぁ……」


無駄に金のかかってそうなドレスを着たどっかの令嬢が取り巻きを連れているのが見える。学園はどうした。サボりか?


……いや夕方だから授業とかは終わってる時間か。ブラック企業で時間の感覚がズレちゃってる。


「オホホホ!!」


あんな若い年なのにどっかのおばさんみたいな笑い声あげちゃってまあ。扇で笑ってる顔を隠してるつもりだろうけど、隠しきれてないぞ。取り巻きも注意してあげればいいのに。


まあいい。俺は食べ物を買いに来たのだ。また何か言われる前に、チャッチャと買ってチャッチャと帰ろう。


「銅貨6枚で買えるもの、ポテチとか売ってないかな」


日本で食べたジャンクフードの味を思い出して、それらを探してみたが見つからなかった。やっぱり日本とは根本的に違う世界らしい。


せめてフレッシュな果物を、と思って探し回っているがなかなか見つからない。りんごなんかもないのだろうか?


「ご覧になってよ? あのこぶたを。醜いと思いません?」


あ〜聞こえねー。僕は何も聞こえません。

僕はただの一般人ですぅ。


「そこの醜いこぶたさん、こちらを向きなさい」


真後ろから声が聞こえる。ですぅ。


「聞こえない? デブは耳まで遠いのかしら?」

「……聞こえてます」


無視するのは流石にまずいと思ったので返事をする。

呼びかけてたのは先ほど見た小娘令嬢、横髪が竜巻のようにクルクルしている。『縦ロール』とでも呼ぶとしようか。


「貴族様が平民である私に一体何の御用でしょうか?」

「ああ、特に用はないのでしてね。ただ世にも珍しい歩くこぶたがおりましたので」


用もないのに呼ぶんじゃねーよ。縦ロール……と言いたいところだが、もし言ったら俺の人生が終わることは目に見えてるので我慢する。


自分もつい最近までその一人だったけど、本当に貴族というのはロクな存在じゃない。

俺は今日本人(庶民)の意識があるのでこいつらみたいな存在よりはマシになった……はずだ。なったよね?


貴族的な高慢さは消えたと思うけど、その代わりに俗的な汚さが増えた気がする。最たるものは金への執着、これ以上のものはないよね。


「用がないのなら、もう自分は去ってもよろしいでしょうか?」

「いいわよ。予想通りのブサイクな顔も見れたし、スッキリしたわ」


俺の顔を見て縦ロールとその取り巻きが笑っている。

自分より下の人を嘲笑って楽しいか? 自己満足出来たようなら結構。


こいつらなんかの言葉よりも、鉄仮面の真顔でクリストフィアさんに『豚』と言われたことの方がショックだ。この程度、痛くもかゆくもない。


ただこれだけは言わせてもらう。


「go to hell (ボソッ)」

「何か言いました?」

「いえ何も」


英語で『地獄へ堕ちろ』と言ってやった。たとえ言ってるのが聞こえたとしても、英語だから意味わからないだろうけどな。


ハッハッハ!! 満足満足。小物だって? 褒め言葉だよ。



笑いながら去っていく縦ロールをニヨニヨしながら見送った後、俺は再びリンゴを探し始めた。




グラブル雑談


シヴァ欲しい(切実)

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