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「クソッ」
俺は姫野が図書室から出て行って呟いた。
あー、やっちまった。
思わず抱きしめちまった。
目の前であいつを感じていたくて‥
入学式の時ぶつかられた時から妙に印象に残っていた。
印象に残ったのは他の奴らも同じだろう。あいつは飛び抜けて綺麗だった。俺も一目見た時からなんて綺麗な人なんだろうと思った。茶色い長い髪の毛、そして長い睫毛にキリッとした目、ちょうどよく出た鼻筋に色っぽい唇、まるで人形のようでどこか儚げな寂しそうな顔をしていた。
そして入学式が終わり俺の所にぶつかってきた。
そして話してみると俺が思ってたのとは違いとても刺々しい態度だった。
俺はこれでも結構モテる方であまりそんな態度を女子にとられることがなかった。だからなのか余計に印象に残ったのかな?
俺にぶつかって謝っているもののなんだか喧嘩を売られているような。
でも嫌な感じはしなかった、それどころかそんな態度も可愛かった。
クラスが一緒になった時は少し嬉しかった。席はちょっと遠いけど。
図書委員になったのはあいつがそうだったからだ。
好きになっているかと聞かれればそうかもしれないし少し興味を持っただけと言われればそれもそうかもしれない。
だから目の前であいつが転んだ時想わず抱きしめてしまった。
俺は姫野を追いかけていた。
走るのは遅いのかすぐ追いついた、そして肩を掴み止めた。
「イタッ」
しまった、思わず力が入ってしまった。
「なぁ、悪かったよ」
「どうして?どうしていきなりあんなことしたの?」
消え入りそうな声で姫野が訪ねてきた。
「だからついって言っただろ?だから悪かったって」
「ついであんなことするの?好きでもないくせに?」
キッと姫野が涙目になりこちらを睨む。
そんな結構きつい状況のはずなんだが彼女のそんな目も俺の心を掴んで離さない。
そして彼女の頬に手を添えようとした。
だがバシッと弾かれた。
「触らないで!!私‥あんたみたいないい加減で強引な事すればどうにかなりそうとか思ってる奴大っ嫌い!」
「何もそこまで怒んなよ、それくらいで」
「うるさい!あんたなんか大っ嫌い!!」
あー、ダメだ。こりゃマイナスからのスタートどころじゃないな。
そして俺は深いため息を吐き彼女が走り去るのをただ見てた。