12
帰り道、姫野の家に向かうため一緒に帰る、俺の家は姫野もとい白石さんの家のずっと先にあるから帰り道は期せずして一緒なのだ。
登校していると白石さんが家から出てくるのをたまに見るしな。ここが家なのかぁと思っていたが姫野も一緒に今は住んでるとはな。
隣で姫野は黙って歩いている。
なんか話しかけてみようかな。
「俺の家ってずっとこの先なんだ」
「最悪‥‥」
ボソッと姫野が呟いた。
「ん?」
「よりにもよってあんたにあんな恥ずかしいとか見せるなんて」
ああ、コーヒー吹き出した事か。若干コーヒーの匂いが染み付いた髪の毛をクルクル回す。
思い出すとなんだか可笑しくて笑ってしまった。
「あははッ、別に気にしてねぇよ。それより面白い姫野が見れて俺は満足だ」
「面白くなんかない!」
ああ、もうと姫野は頭を抱えている。
「つーかさ、お前も制服汚れてんじゃん。俺のばっか履いてさ、お前も早く洗ったほうがいいな」
そう言うと姫野が自分の胸元のあたりを見てため息を漏らす。
「はぁ、本当についてない」
「俺はむしろ姫野と一緒に帰れてラッキーだわ、誘う手間が省けたってぇの?」
「あんたそんなに私と一緒に帰りたいの?」
「ああ、姫野って面白いからさ」
そんなこと言っていると白石さんの家に着いた。
「ただいま〜」
「お邪魔します」
「おかえり!椿ちゃん。あれ?お客さん?」
白石さんが出迎えてくれた。後ろから足立さんも顔を覗かせていた。
「優さんも来てるんですか?」
「うん、今日優と一緒に晩ご飯食べようと思って!って椿ちゃんの彼氏さんかな?奏です、よろしくね」
「違います」
そっこーで否定された。
「ただの知り合いです。こちらは同じクラスの飯塚 春人君です」
「へぇ、春人君かぁ、こんなにかっこいい人と友達なんて椿ちゃん凄いなぁ」
「い、いや、友達でもないんですけど」
なんだか姫野の態度が違う。俺とは全然。
「あれ?春人君と椿ちゃん汚れてるけどどうしたの?」
「あ、これは‥‥」
そうすると姫野が事情を説明しだした。
白石さんはふんふんと聞いてじょあ洗ってあげるよと言っていた。
「大丈夫です、私のせいなので私が洗います」
「自分で洗いたいんだね、わかった」
「椿ちゃんも面白いところあるな、奏もこう見えて結構ドジなところあるから少し似てるな」
「酷いよ優!私がドジなのは言わなくていいの!」
そう言い白石さんと足立さんはキッチンの方へ向かった。
「なんかお前って普段あんな感じなの?」
「そうだね、私の居場所ここしかないし他に行くところもないし嫌われたら終わりよ」
そう言う姫野はひどく悲しそうな顔をしていた。
「なあ、白石さんは別にお前の素を見せたってあの感じだと嫌いそうにないぞ?」
「そんなのわかんないもん」
と言うより何かあったのか?行くとこないとか今までどうしてたんだこいつ?
「えーと、服脱いでくれない?ジャージ持ってきたでしょ?脱衣所で着替えてきて。一緒に私のも洗うから」
そして風呂場の脱衣所に案内されてジャージに着替える。
「ほら、脱いだぞ」
ポンと軽く投げて渡すと姫野の頭の上にバサッと被さった。ヤバい、怒られる。
と思ったら足立さんが姫野の後ろから話しかけてきた。
「あー、その光景懐かしいなぁ、俺も奏に同じ事したっけ」
クスクスと笑っている。
頭に被さった服を姫野が取りこちらに頬を膨らませ真っ赤になって並んでる。
あ、ヤバい。可愛いなこいつと思ってしまった。
「椿ちゃん、少し濡らしたタオルとかで拭いてちょっと落としてから洗った方が汚れ取れるよ?」
そう言われ姫野は風呂場に向かった。
「なんか1年前の私たちみたいだねぇ」
ニコニコと白石さんが足立さんに言う。
「えーと、春人君だっけ?椿ちゃんと仲良くしてやってね?」
足立さんは俺にそう言いまた白石さんとキッチンの方へ行った。
風呂場をチラッと見るとまた真っ赤な顔をした姫野が隙間からムッとした表情でこちらを睨んでいた。