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第9話 帝国

リュウと別れた後、馬車をもらった俺たちは、エルフの里に引き返す事にした。

アイはずっとジト目で俺を見て、時々恥じらうようにしていたが、

すぐにキッと表情を整え、今度はすぐにジト目で俺を見続けた。


仕方なかった、これしか方法がなかったと言っても、「そうですか」しか言わないので、

耳元で、アイもしたいのかと聞いたけど反応が無かった。


というより、暫く、口をきいてもらえなくなった。


しかし、リュウから聞いた話によると俺の子供の話は魔族が意図的に拡散している。

それも、魔族の子供として、多分、俺を釣る為の餌である事と、魔人族へのプレッシャーである事は間違いがない。


一度エルフの里に戻ってから、深く考える必要がある。


「ねえ勇者様、あんた、誰でもいいの?」


何をいう、そんな事があって溜まるか、俺だって選んでいる


「ふーん」

里まではあと数日間と時間が掛かる、馬車しかない俺たちからすれば、夜は危険だ、アイは強いから大丈夫だが、俺はまずい。

そんな危機感から、今のマナの状態を考え、アイに提案した。


「今、転移魔法が可能なレベルまで来た、運よくいけば、ミミの所に行けるかもしれない。付いてきてくれないか」


「ちょっと大丈夫なの?どうやってミミの所に限定するの?できるの?」


確証はない、きっとエルフの里に戻って、ユイが帰ってくるのをまっていた方が賢明なのだろう。

だが、待っていられない。数少ない可能性でもそれにかけたい


「わかったわ、好きにして」


焦っている俺の気持ちが表情に出ていたのか、アイは同意してくれた。

「すまない、アイ。ありがとう」


彼女の気遣いに感謝しつつも転移魔法の詠唱を始める、初めて里で転移した時、魔法陣を書いたが、今回は詠唱で省力している、ミミをイメージする。あの夜の事…違う違う。

必ず助ける。

ミミも子供も。詠唱完了。飛ぶ!


まばゆい光に包まれて、高速で体が進んでいく感覚。

大丈夫、アイも一緒についてきている。


そこは…


「団長!不審者です!」

「何!捕らえろ!」


まずい、マナ酔いだ。

アイもふらふらで、ここは…


「報告します。本日、我が第一親衛隊演習所に突如現れた賊は、2名。人族とエルフです」


「人族とは珍しい、あの魔女が言っていた勇者かもな」


「は、勇者ですか、私は、あの魔女のいう事は信じれません。戯言が多いですがから。賊は気を失ったまま、地下に幽閉しております。」


「そういうな、あれはあれで、使い道がある。そんな戯言に救われる者もいるのだからな。後で顔を出そう。下がっていい」


「は!」


魔王親衛隊 第一団長 トラそれが、この者の名だ。

このトラは、豪快で気さくで慎重で、みなから好かれていた。

誰しもがその力、地位、人望に憧れ、12師団ある中で団長と皆から言われるのは、

この男だけである。

しかし、この男には秘密がある。


誰にも言えない秘密が。。。



「隊長!どうやら、第一演習所に現れた賊は、あの勇者だとか。いかがしますか」


「慌てるでない。第一演習所となると、トラのいる所だろう。すでに捕縛し、警備をしっかりしているだろう」


「しかし!」 「たわけ!」


「この事は他言無用。忘れろ。指示があるまで待て、だが、本当に勇者であれば、あたしが出るしかないかもな。準備はしておけ」


「…は!」


「ここは・・・」

「ようやく起きたのね。あんたとんでもない所に転移してくれたわ。」


「どこなんだ」

「ここは、魔族の国、帝国よ。しかもその中枢。さっきの外で話をしていた内容によると、ここは第一親衛隊の地下みたいね」


「成功したのか。ここにミミが」


「あんたね。この帝国にミミが確かにいるかもしれないけど、よりにもよって、第一親衛隊よ?知らないの?」


「すまん、教えてくれ」


ここ、魔族の帝国とは、魔王が拠点とする帝都である。

その魔王には、十二親衛隊がおり、それぞれが、シンボルとなる文様がある。

子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、伸、酉、戌、亥。

魔王が倒されるか、世代交代をする場合は、この親衛隊の辰から、専任される。


「ここはどこの拠点になるのだ」

「ここは、トラみたいね。まあまあ最悪よ。次の転移魔法はどれ位でマナは集まるの?」

「どんなに早くても、1か月以上はかかる、それにここはやはりマナが薄い。もっとかかりそうだ」


「絶望的ね。それだけの時間があれば、私達の首はとっくに無くなってるわ」


失態だ。

こうなる可能性は十分にあった。

だが、こんな所で死ぬわけにはいかない。

まだ、何かあるはずだ。


階段から、音がなった。

ゆっくりと、しかしそれは兵士の甲冑が擦れるものではなく、軽装な装いだった。


その女は、アイに見向きもせず、まっすぐに俺の所に来た。


「あなた勇者って本当?」


妖艶な笑みだった。

一瞬、その笑みに全てを捧げたくなる思いになった。


「あんた!惑わされてるよ!」


アイに頬を引っぱたかれた。

だが、そのおかげか、その笑みをもう一度見ても、変な気にならなかった。

妖術か。


「あら、意外と耐性があるのね。本当に勇者みたいね。私は十二親衛隊、蛇の星よ。トラが言っていた事は本当なのね。」


さっそくお出ましか。

さっきの転移でマナはもうない。アイがどこまで戦えるかだが、牢に入れられる時に、当然持ち物は全て取られている。

魔法力だけで勝てるのか。


「変な気は起こさないでね。私も、あなたは殺したいわけではないの。魔女の言っていた事が本当なのか知りたくてね。あなた、魔族と子供作ったのかしら」


「ぐっ」

あまりにストレートな質問に、怯んでしまった。まずい。


「あらあら、本当なのね。じゃあ、もういいわ。魔人と関係をもってしまう前に、殺してしまいましょうか」


俺たちはここまでなのか。


「待て」

大柄の男がそれを遮った。

トラの紋章が入った甲冑。どうみてもここのボスだ。

「それは俺がやる、シャア、お前は下がっていろ」


ダメだった。


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