第3話 逆召喚
「この星を救ってほしい?」
少女は特に驚いた表情もなく、むしろ冷めていた。
またか・・・のような顔だ。
「そうだ、君は魔法は使えるかな?」
聞いてしまった。
ドキドキする。もしダメなら・・・
「はい、使えます」
よかった!
ああ、よかった。
なんだか、ここまでの緊張が切れて笑ってしまいそうだ。
「ははは、そうか、使えるのか!」
「でも、今は無理です。」
え
無理?
なぜ?なぜ?なぜ?
「その顔で察しますが、こちらの世界で、今の私には無理という意味です。」
頭の中が真っ白だ。
何も考えられない。
え?無理?
「やはり、魔法が目的でしたか、迷惑です」
「迷惑?」
「私達エルフは、確かに魔法力に長けています。ですが、どれは、世界に対するマナの恩恵を強く受けられるという意味で、マナがなければ、当然、魔法は使えません。」
「マ・・・なんだって?」
言ってる意味が分からない。
とにかく失敗をしたのか。そうか。終わったのか。
「何も知らないのですね。ではこちらからもお願いしますが。」
お願い?え?
「あなた、私達の世界にきてもらいます。今すぐに」
その言葉と共に、またもまばゆい光に包まれた。
サングラスをしていない事に焦りを覚えたが、なぜだか大丈夫だと確信した。
目の前の自称エルフが目を開いていた事もあるのだろう。
何か言葉を発する前に、私は、逆召喚をされてしまった。
まばゆい光に包まれた時、私の脳内には、向こうの世界に取り残されてしまった家族が
仕事が心配になってしまった。
ありがちな、こっちの時間との流れが違うから、戻ってくるとほとんど時間は変わらないとか
そんな希望を抱いたが、
「先に迷惑をかけたのはそちらです。言っておきますが、向こうに帰れるなど期待しないでくださいね」
無駄だった。
私こそが拉致されたという事か。
する側とされる側ではこんなにも違うものなのか。
ここで私はなぜ、少女があんなにも落ちついていたのか理解した。
それはそうだ。彼女の目的は逆召喚。結果として彼女は自分の世界に戻れる手立てが常にあった。
焦る事もない。
それにあの顔。初めてではなかった様子だ。楽勝だろうな。
しかし、魔法は使えないと言っていたが、今使ってるじゃん。
「魔法。使っているではないか!嘘だったのか!」
少女は、はあとため息を付きながら、
「これは魔法ではありません。というより、説明してなんになるのです?」
そこで私は、諦めてしまった。
精々、向こうで絶望してもらおう。私には何の能力もない。
がっかりして殺させてしまっても仕方がないが、どうせ返してもらえないらしい。
無気力に、自堕落に、なされるがままになろう。
なんだか、先ほどまでの苦労が笑えてきた。
「ははは」
つい声に出てしまう。
「あなたも気がおかしくなってしまいましたか、いえ・・・フリですか」
何か聞こえたが、気にしない。
もう、何もかも諦めた。
そして、まばゆい光に終わりが見えた。
そこは、
緑いっぱいの星だった。
ああ、こんな星に戻したかっただけなのにな。