表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

第3話 逆召喚

「この星を救ってほしい?」


少女は特に驚いた表情もなく、むしろ冷めていた。

またか・・・のような顔だ。


「そうだ、君は魔法は使えるかな?」


聞いてしまった。

ドキドキする。もしダメなら・・・


「はい、使えます」


よかった!

ああ、よかった。

なんだか、ここまでの緊張が切れて笑ってしまいそうだ。


「ははは、そうか、使えるのか!」


「でも、今は無理です。」



無理?

なぜ?なぜ?なぜ?


「その顔で察しますが、こちらの世界で、今の私には無理という意味です。」


頭の中が真っ白だ。

何も考えられない。

え?無理?


「やはり、魔法が目的でしたか、迷惑です」


「迷惑?」


「私達エルフは、確かに魔法力に長けています。ですが、どれは、世界に対するマナの恩恵を強く受けられるという意味で、マナがなければ、当然、魔法は使えません。」


「マ・・・なんだって?」


言ってる意味が分からない。

とにかく失敗をしたのか。そうか。終わったのか。


「何も知らないのですね。ではこちらからもお願いしますが。」


お願い?え?


「あなた、私達の世界にきてもらいます。今すぐに」


その言葉と共に、またもまばゆい光に包まれた。

サングラスをしていない事に焦りを覚えたが、なぜだか大丈夫だと確信した。

目の前の自称エルフが目を開いていた事もあるのだろう。

何か言葉を発する前に、私は、逆召喚をされてしまった。

まばゆい光に包まれた時、私の脳内には、向こうの世界に取り残されてしまった家族が

仕事が心配になってしまった。

ありがちな、こっちの時間との流れが違うから、戻ってくるとほとんど時間は変わらないとか

そんな希望を抱いたが、


「先に迷惑をかけたのはそちらです。言っておきますが、向こうに帰れるなど期待しないでくださいね」


無駄だった。

私こそが拉致されたという事か。

する側とされる側ではこんなにも違うものなのか。

ここで私はなぜ、少女があんなにも落ちついていたのか理解した。

それはそうだ。彼女の目的は逆召喚。結果として彼女は自分の世界に戻れる手立てが常にあった。

焦る事もない。

それにあの顔。初めてではなかった様子だ。楽勝だろうな。

しかし、魔法は使えないと言っていたが、今使ってるじゃん。


「魔法。使っているではないか!嘘だったのか!」


少女は、はあとため息を付きながら、

「これは魔法ではありません。というより、説明してなんになるのです?」


そこで私は、諦めてしまった。

精々、向こうで絶望してもらおう。私には何の能力もない。

がっかりして殺させてしまっても仕方がないが、どうせ返してもらえないらしい。

無気力に、自堕落に、なされるがままになろう。


なんだか、先ほどまでの苦労が笑えてきた。


「ははは」


つい声に出てしまう。


「あなたも気がおかしくなってしまいましたか、いえ・・・フリですか」


何か聞こえたが、気にしない。

もう、何もかも諦めた。


そして、まばゆい光に終わりが見えた。

そこは、


緑いっぱいの星だった。


ああ、こんな星に戻したかっただけなのにな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ