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タガタメ  作者: ゆきうさぎ
かくして少女は勇者を夢見る
3/43

次なる一歩

もっと長くしたかったけどキリが悪かったので短くなりました

 それから私たちはこの学校でいろんなことを学んだ。私たちの身の回りに起こる現象のしくみだとか、どのようにして私たちの生活は成り立っているのかだとか、なかなかにちんぷんかんぷんなことを教えられた。知識試験ではそこそこの成績だった私だが、こういった小難しいことは性に合わず、この2年間かなり苦労した。

 それに引き換え、アレンやカガリは優等生として教師の信頼を集めていた。私は二人に助けてもらいながら試験を乗り越えた。ほんと二人には感謝しきれないよ……。

 もちろん学問以外のこともいろいろあった。戦闘訓練では勉強で溜まった鬱憤を存分に晴らし、周りから注目される存在となった。上級学年の人たちをも私は余裕でのしていったので、ちょっと恨みとかも買っちゃったけど、それはまた別のお話かな……。

 そんなこんなで私は学校での2年間を有意義に過ごした。友人もできたし、面白い経験もたくさんできた。

 そうそう言い忘れていたけど、私は結局『魔剣士(マギライザ)』を専攻することにした。どちらをもよく伸ばそうというみんなのアドバイスに従ったのだ。

 ところがこれを専攻したのが私以外にいないというなんともひどい有様となった。担当の教師からは異様なまでに可愛がられて、体罰レベルでしごかれた。そのおかげで強くなったとは思うけど、もう2度とやりたくない………。トラウマになったもん。





「2年間もあっという間だったな。もう卒業か」


 卒業式を終え、私たちは帰路についていた。2年経ち、16歳になったわけだが、問題はこれからである。


「みんなはこれからどうするの? 私は首都に行こうと思うんだけど……」

「この街にいてもな……することないし、お前ひとり行かせるのは怖いんだよな」

「いっつも怒られてばっかりの問題児さんに言われたくないね」

「へえ、言うじゃないか。前代未聞の3連続追試を受けたティアナがねえ」

「そ、それは関係ないよ! それ以外じゃ、優等生だったんだから!」

「はいはい、兄さんもティアナも子供みたいな言い争いしないの! ほんとにいつもそうなんだから……」


 そうやって仲裁に入るカガリだが、この2年間でまた成長していた。内面もだが、外見が。また大きくなって、スタイルもよくなって……。妬ましい!


「そういうところ、二人は全く成長しなかったからな」


 私たちのやり取りを見てアレンは笑う。彼もまたすっかり大人びてしまった。2年の月日はかくも恐ろしいものだ。

 かくいう私は………。言わせないでくれ。ガチでへこんでるから。


「……もうシーラが余計なこと言うから話逸れたじゃん。で、皆はどうするの?」

「だから言ってるだろ。俺はお前についてくぞ」

「俺も行く。父さんからは許可を得ているしな」

「私も行くよ。どうするかはまだ決めてないけど、でももっと見聞を広めたい気持ちがあるからね。……あと置いてかれるのはやだし」


 どうやらみんな私と一緒に行くみたいだ。ほんとに腐れ縁だなぁ、私たち。


「なんだー心配して損した。それでいつここを発つ? 長い旅になるからしっかり準備すべきだとは思うけど……」

「俺はいつでもいいぞ? うちは親がいないからな。カガリと出るなら家を空けることになるが……まあ何とかなるだろう」

「さすがにほったらかしにするのはまずいから、ティアナのお母さんにお願いしてるけど」

「ほえーそうなのか。って、勝手に人の親をこき使わせないでよ……」

「むしろ向こうから言ってくれたんだ。『バカ娘の面倒を見てくれ』ってな」


 何がバカ娘だ! でも、そういう気づかいしてくれるところは……母さんらしいけど。


「とりあえず諸々の準備をして3日後に出発しよう。道順も考えたりしないといけないし、とにかく忘れ物があっちゃいけないからな。それじゃ今日はこれで解散だ」

「うん、じゃーねー」


 今日のところはひとまず帰ることになった。とはいえアレン以外はほぼ同じ帰り道なので三人でのんびり帰っていた。


「ついに私たちの冒険が始まるんだね! ほんと出発が楽しみ」

「はは……ずっとティアナは楽しみにしてたものね。でも、ほんとにいいの? しばらくはここに戻れなくなっちゃうけど」

「母さんはとっくに了承済みだよ。そのためにいろいろ叩きこまれたしね!」


 何を隠そう母さんは元冒険者でかつては各地を巡ってブイブイ言わせてたらしい。その時に父と出会って恋に落ちたともう何百回も聞かされた。

 だから私がこの街を出ると言った時も反対はしなかった。むしろ生きていけるようにサバイバル技術をしこたま教え込まれた。


「あの親にしてこの子あり、か……。でも反対されないだけマシか」

「ちょっと寂しいけどね」


 それから二人とも別れて私は家についた。相も変わらず母さんは私に冒険のための技術を教えてくれる。私はその全てを頭に叩き込む。学校では教えてくれない細かいことも母さんは教えてくれた。


「あなたはちょっと野性的だからね、理屈で考えようとしては駄目よ」

「実の娘にそんなこと、よく言えるね!」

「悲しいけど事実だから仕方ないわ。それに娘にお世辞を言ってもねぇ……」

「別に私バカじゃないよ? それに母さんから教わったことちゃんと覚えてるし」

「物覚えはいいけど難しいことを考えきれないだけよ。っと、手、止まっててるわよ?」

「あ、うん」


 こうしてこの家での夜が更けていく。もうすぐ私はここから旅立つ。みんなにもちょっとだけ言ったけど寂しくないわけじゃない。でも母さんは全力で私をサポートしてくれるし、私の夢をバカにせずに聞いてくれる。だから、そんな母さんの期待に私は応えたい。いつかまたここに戻って立派な姿を見せて驚かせたい。

 私はいっぱい夢を見る。叶わないなんてことはない。絶対叶える。だって私は一人じゃないから………。




 出発当日。私たちは家族や友人たちに見送られて街の入口にいた。


「みんな行ってくるね! 私たちの活躍、期待して待ってて!」

「むやみやたらにハードルを上げるな。もう一度聞くけど忘れ物はないよな?」


 まるで母親のようにアレンは口やかましく確認してくる。


「大丈夫だって! カガリにも確認してもらったし、安心だよ。それよりもみんなも大丈夫なの?」

「当たり前だ。昨日のうちに全部済ませたからな。いつでもいけるぜ」

「私ももう大丈夫」


 皆大丈夫なようだ。と、話していると誰かが近づいてくる。がっしりとした体型の壮年の男の人。ちょっといかつくて怖い感じがするが、今は笑顔だった。


「相変わらずの仲の良さだな、君たちは。これから旅に出るというのに緊張感がないな」

「父さん……。仕事は大丈夫なのですか?」


 アレンはびっくりした様子だった。それもそのはずこの街の市長さんであるアレンのお父さん、普段から多忙で暇などまともにないらしいのだ。


「息子の旅立ちに立ち会わない親がいてたまるか。仕事があっても駆けつけるに決まってる」


 何をおかしなことを言ってるんだと言わんばかりにアレンのお父さんは笑う。


「君たちは学校の成績が非常によかったと聞いている。だが、外ではそれが通用しない。決して慢心してはならんぞ」

「……はい」

「それともう一つ、君たちが大成して凱旋してくれたらもちろん嬉しいが、悲報だけは持ってこないでくれ。君たちが無事でいてくれることが我々にとって何より大事なことなんだ」

「アレンのお父さん、大丈夫ですよ!」


 なんだか辛気臭くなってきた。せっかくの日なんだから暗いのはダメダメ!


「私たち一人だったら心配だけど、私たちは四人一緒です。ダメなところはお互いに補い合ってます。だから安心してください! それにいざとなったら私がみんなを守りますから」

「………」


 私は胸を張って宣言する。みんなには私の夢に付き合ってくれるんだからそれくらいしないと申し訳ない。これは私が好きでやってることでもあり、義務なのだ。


「ティアナくん、君はほんとに変わった子だな」

「今のセリフでそんなこと言いますか!?」


 なんだかバカにされてない!? すごいショックなんだけど……。でも、アレンのお父さん、笑ってる。それに見送ってる皆もほんわかした雰囲気になった。


「……ありがとな、ティアナ」


 アレンが私にそっと耳打ちする。ふふん、ここではぐらかすのが大人な対応。私は「なんのことかな」と言うかのように笑った。


「ほら、そろそろ行こうぜ。あんまり出るのが遅いと今日は野宿になっちまう」

「兄さん……さすがにそれは言い過ぎじゃないかなー」

「ティアナが寄り道するかもしれないから大いにあり得るんだよな、これが」

「あ……うん」


 カガリそこは納得しないでよ! さすがに私だってそこら辺は自重するよ!

 と全力で抗議したかったけど、またややこしいことになりそうだからやめておこう。うん、私ったら大人な対応だね。


「顔に出てるぞ」

「えっ?」


 それだけ言ってアレンはシーラたちの方に行ってしまった。


「……バカ!」


 私は慌てて追いかける。

 何ともまあ締まらない旅立ちだが、私からしたらこっちの方がよっぽど心地よいものだ。別にこれが今生の別れになるわけじゃないし、いつでも帰ってこれる。だから笑って送って笑って出ていく方がいいんだ。

 だってほらアレンもシーラもカガリも街の皆も楽しそうに笑ってる。


「さて、冒険の始まり! 世界よ待ってなさい。このティアナが、この名を轟かせてやるんだから! 行くよみんな!」

「何を仕切ってんだ……」

「でもティアナらしい。あんなに楽しそうに笑ってるし、悪い気はしないね」

「何かあったら俺たちが守ってやればいい。そうだろ?」

「へーへー。ほんとにカガリもアレンもあいつに甘いんだから」


 かくして少女の物語は始まった。一体どのようなストーリでが綴られるのかはまだ誰にもわからない。栄光の道か、はたまた挫折の道か。彼女は何を見、何を聞き、何を感じるのか。そして彼女は何を願うのか。

 まだ白紙の物語。果たして最後はどのようなエンドを迎える?

 大団円のハッピーエンド?

 それとも―――

 

 絶望に塗れたバッドエンド?






罪深いと怒られました。なぜだ?

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