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超銀河戦艦ブライヤー  作者: エンドウ
1/5

荒野星アルザッド(上)

続きは近いうちに投稿できると思います。

 ブライヤーという男は、昼過ぎにその星に降りた。

 襤褸布の外套に鍔広の帽子。その隙間から見える彼の肌はすべてメタリックに輝く銀色だ。金属光沢の腕で帽子を持ち上げた。彼の緑色のセンサー・アイが蜃気楼と荒野を映す。

「荒野星アルザッド・・・・・・ね」

 アルザッドは、ブライヤーが小さい頃に見た西部劇を思わせる荒野の星だ。

 左手で地図を広げる。

 リス型生命体キースレムが懐から顔を出す。

「もう!また寄り道しようとしてる!」

 彼女が、滑らかに巻き付いて耳元で叫んだ。

「地図見ただけだぜ?」

「一番近い街に行くんだから視線を泳がす必要なんてありません!分かってるんです!」

「ハイハイ」

「まったく、私はあなたにはとてもとても感謝してるけど、そういう短絡な所はキライなんですからね!聞いてます?大体あなたは可愛い人型をみつけたら端から声をかけて!」

 ブライヤーは今、キースレムの両親を探すための旅に付き合っている途中だ。超銀河戦艦のバリアシステムのパーツ補充のために、この星に立ち寄った。幸い金銭は、旅先の出来事を銀河連合に伝えるバイトである程度貰っているため、心配ない。

「ハイハイ。君の言うとおりだよ。っと、キースレム、着いたよ」

「ホントですか?」

 キースレムは顔を上げた。キースレムの目には岩と砂の荒野が映っただろう。

「何もないじゃないですか」

「この辺りの荒野は砂や岩場ばかりで、建物を建てるにはそぐわないのさ。と、いうわけで」

 ブライヤーが親指で指し示したのは半径5メートルほどの平皿を逆さにしたようなセラミックの建造物、シェルターハッチだ。

「えー」

 キースレムは眉をひそめた。

「俺は、ここで待ってるよ」

 彼は地下には潜れない。光の当たらない場所では活動不能に陥るのだ。

 ブライヤーは彼女にメタルスキンを転送する。

 メタルスキンは超銀河戦艦から光子転送され約2秒でキースレムの体に人間大のアンドロイドボディーを作る。

「はい、買い物メモ。それにお金」

「わかりましたーよー」

 アンドロイドの体をひらひらと操縦しながら、キースレムは不満げに声を上げた。

「燃料が足りないから2時間な。寄り道なんてしないように」

 2時間が制限時間だ。

「誰かと違って寄り道なんかしませんから」

 キースレムはシェルターハッチのロックに手をかけた。


 シェルターハッチの中での所持品検査を終えて、シェルターに入ったキースレムは目を丸くした。

「へぇ!」

 目の前に広がったのは、地下シェルター内の人工太陽のもとで、貧民街のような脆さと活力に滾ったバザールだ。大通りの両サイドに日差しを避けるためのテントと所せましと商品が並べられている。

 キースレムはリス型生命体であり、彼女の星ではほとんど樹上で暮らしていた。そこは枝と葉と花と地面しかないシンプルな世界だった。

 故に、何度見てもこういった雑多でゴミゴミとしたバザールには自然と目が輝く。

 通り過ぎる人々も、右を向けばアンドロイドやサイボーグ、左を向けば獣人や獣型生命体だ。

「お兄さん、可愛いわね。ねぇ?」

 ネズミ型獣人のコールガールがもたれ掛ってきた。

 獣人は人間に近い体格を持っている種族だ。実際にほぼリスと同じ体格のキースレムとは勝手が異なり、そういった商売もできるのだろうが、

「私は女の子です」

 相手をせずにバザールを見回る。バザールの商品も、食料品や装飾品、それに武器やコンピュータチップまである。

「テメェ!」

 その声は、バザールの中に響いた。

 バザールはどよめきだした。だが、すぐに人々は厄介ごとを避けるように物陰に隠れはじめる。

「・・・・・・」

 キースレムはゴーグルを声の主に合わせた。

 声の主は、3mはあろうかという巨体のサイボーグだ。その服装はキースレムも見たことがある、銀河連合政府の軍服だ。

 サイボーグは犬型獣人の首を捉まえて締め上げている。

「それが俺に対する態度かよ!」

 叫びながら、獣人を右腕で持ち上げた。獣人は通常の人間よりも頑丈とはいえ、叩き付けられれば確実に死ぬだろう。だが、バザールの参加者は怯えて、目を反らし物陰に隠れるばかりだ。

 キースレムは、銃器『ユースエイト』に目を落とした。彼女がいるのは、銃器を扱う露店の前だ。

「・・・・・・」

 サイボーグの手から、獣人がこぼれた。

「・・・・・・ッ!」

「軍属の癖に、体格の劣る一般人を締め上げるのですか?」

 サイボーグは眼光をキースレムに向けた。彼の右腕がプスプスと煙を上げている。

「テメェ!」

 サイボーグは瞳を鈍く光らせる。それを、キースレムは殺意と知覚した。

 キースレムの右手にはレーザーガン『ユースエイト』が収まっている。軍用品の横流しだろう。威力と精度と整備性が高いレベルで纏まった、15年前に最も普及していた銃だ。

 整備不良だろう、一発撃っただけで銃口からは焼け焦げた煙が漏れ出している。

「店主さん、私の知ってる店は、銃の試し打ちは三発までOK でした。ここは!?」

 目を丸くしたのは、銃器店の店主だ。だが、

「各一発だな。それ以上は買いあげだ」

 店主は困ったように頭をかいた。

「アレは軍人だよ。この辺りの責任者のカーソン大佐の息子のリザコードという男だ。この街に軍人に逆らう人間はいない。手を出せばタダではすまん。それが、外からの人間であってもな」

「各一発ですね?」

 キースレムはレーザーガンを店主に向けた。

 店主は頭を振って、好きにしろ、とジェスチャーし、物陰に退避した。

 メタルスキンには、銃のエイミングを補佐する能力はない。銃を操る技能は、彼女がブライヤーを助けるために得た技能だ。

「テメェ、殺してやる!」

 リザコードが迫る。

 キースレムは店の銃を全て、抱えた。

「各一発でしたね」

 リザコードは体のギアをきしませた。

 バザールの中は騒然として、キースレムとリザコード、そして地面に放り出された獣人以外は周りにいない。

 リザコードが動いた。

(真っ直ぐ・・・・・・短絡な動きです)

 キースレムは引き金を引き、リザコードの体がよろけた。

(精度が甘い!)

 元より買う気もないため、ただの独り言だ。撃った銃を地面に置き、別の銃に持ち替え、引き金を引く。

(威力が低い!引き金がカタい!バランスが悪い!撃った後のノックバックが気持ち悪い!これも精度が低い!なんか全て問題外!)

 そこまでで、リザコードの動きは止まっていた。右足の膝から下が吹き飛ばされている。

「う・・・・・・お前!俺が誰だかわかってんだろうな」

 うずくまり、睨みつけて、呻く。

「・・・・・・旅の者なので。申し訳ございません」

 キースレムは頭をちょこんと下げた。

「あ、店主さん、銃はここにお返ししますね」

 

「あの!」

 犬型獣人がキースレムの前に現れたのは、すべての買い物が終わった後だった。

「さっきはありがとうございました」

 息を切らせているのは探し回ったからだろう。獣人は頭を下げた。

「ああ、さっきの」

 キースレムは頷いた。先ほど軍人に締め上げられていた獣人か。

「怪我は大丈夫ですか?」

 キースレムの問いを獣人は掌で制した。

「私はチャシャって言います。困っていることがあるんです」

「え?」

 チャシャが出したのはボールペンサイズの筒だ。

「さっき、リザコードが、あなたを」

 キースレムの視界に衝撃が走る。メタルスキンのゴーグルには『電撃』と表示された。

「あなたを連れてこないと、私の家族を殺すって」


 ブライヤーには、現在のキースレムの状況は分からない。

 センサー・イヤーは地下での雑音は分からないし、通信もシェルターで電磁的に遮断されている。

 ブライヤーは、懐から絵画電子画板を取り出して趣味である絵画のために筆を走らせている。キースレムに言わせれば「個性的な」絵らしい。我流であるため、そう思われても仕方ないところはある。

「ん?」

 筆を止めて、周囲を見回す。何か、予感を感じた。さらに、センサー・イヤーを張り巡らせたが、変化はない。

「気のせいか」

 ブライヤーは再び電子画板に筆を走らせた。


「ヨォ」

 メタルスキンの両腕を縛られて、キースレムはもがくことしかできない自分に気が付いた。

 リザコードがヘラヘラと笑っている。先ほどの巨体サイボーグだ。その後ろに数体の軍用アンドロイドを連れている。

「お前に恥かかされてよ!」

 キースレムは睨み返した。

 リザコードから逃げるなら簡単だ。メタルスキンを解除すれば逃げられる。

 リザコードはアンドロイドに目配せした。その手のひらに棒状の金属機械が置かれた。

「・・・・・・」

 バンッ!という音とともに金属機械が叩き付けられ、キースレムの視界がぶれる。

 状況を確認する。

 メタルスキンが示す高度は地下2m。恐らくシェルターの最上部だろう。使われていない物置スペースだろう。その柱に彼女は縛られている。上を見る。光沢を持つセラミックに覆われている。いや、よく見ればガラスとセラミックの二層構造か。

 右隣には意識を失っているチャシャが倒れていた。

「俺達はな!いつでもお前なんか殺せるんだよ」

「・・・・・・足を吹き飛ばされる人間が言うことじゃないですね」

 リザコードの右足は膝から下が歪にサイボーグ化されている。

 リザコードは、笑った。

「決めた。お前殺すわ」

 金属機械のダイヤルをいじる。金属機械から電撃がスパークした。スタンガンか。メタルスキンのゴーグルがその電撃を受ければ無事には済まないことを表示した。

 だが平静を保つ。

「私は宇宙から来たから、宇宙が見たいのですが、スイッチはどこですか?」

「ヘッ」

 リザコードは苦笑した。彼の視線が動くが、それは無意識だろう。それを見逃すキースレムではない。

「じゃあ、下らねぇ遺言だったな。死ねよ」

 リザコードがスタンガンを振り上げた。

「アーマーアウト!」

 音声コードを認識し、メタルスキンは瞬時に閃光の中で光子に分解される。

「な!?」

 リザコードは目を抑えた。

 メタルスキンはまだ実用化されていない。彼には未知の技術だ。故に怯む。

 その一瞬のスキを突き、キースレムは先ほどリザコードが視線で指した方向へかける。

 リザコードはあの時緊張を解いていた。だから、無意識にスイッチを見た、筈だ。

「なんだ!」

 キースレムが叫ぶリザコードの股をくぐり、スイッチを見つけてタックルする。

 鈍い音がして、ゆっくりとセラミックカバーが開く。

 空だ。今の時間はすでに夜だ。月が見えた。

「何だ!てめぇ!どこだ!」

 リザコードのいら立ちを感じる。キースレムが光に紛れて姿を消したのだ。

 キースレムの望んだ通りの展開だ。予想では、しばらくリザコードはキースレムを探すだろう。

 あとは、『叫ぶ』だけだ。

 次の瞬間青ざめる。

「とりあえず、こっちを殺す!」

 キスレムの怒声。アンドロイドたちは頷いて、スタンガンを取り出す。

「馬鹿な」

(短絡すぎる!)

 リザコードは恐らく『とりあえずストレスを発散する』つもりなのだろう。スタンガンを振り上げた。振り上げたスタンガンの先にはチャシャがいる。

「そんなこと、許せるか!」

 キースレムはリザコードの顔にとびかかった。

 スタンガンが逸れる。

 だが、キースレムは振り払われてチェシャの真横にたたきつけられ、キースレムの意識は明滅した。

「あ!あなた!」

 チャシャの声だ。意識を取り戻したのだろう。

 キースレムは血だまりのなかで、少しだけ笑った。

「気が付きました?よかった」

「その声、アンドロイドの・・・・・・!?」

 キースレムはぼんやりと考えていた。短絡は、自分だと。四肢が動かない。声を出すのにも体中が軋みを上げる。もしかしたら自分がこのまま死ぬのかもしれない。なんと、短絡な行動をした。彼女を助けなければ、ここから逃亡することもできた。ここで死ねば、彼女の悲願である両親との再開すら不可能だろう。

 だが、それでも彼よりはマシだ。いつも自分には関係ないことに首を突っ込んでボロボロになって、それでも懲りない彼よりは。

「叫んで」

「え?」

「叫んで。彼は来る。彼の名前は――」

 キースレムは呟いて目を閉じた。

「死んだか?そいつ。まさか小せぇリスだとはな。転送スーツか?実用化されていたのか?まあ、いい」

 リザコードは足を振り上げた。

 チャシャは、キッと、リザコードを睨みつけた。

 肺に、空気を送る。

「ブライヤーーーーー!」

 チャシャは、叫んだ。

「誰を呼んだんだよ!?ハハハ!死ね」

 リザコードの足は、確実にチャシャとキースレムを踏み潰した。

 リザコードはそう思ったろう。


「ブライヤーーーーー!」

 ブライヤーのセンサー・イヤーがその声を聞き漏らすことなどない。

 立ち上がり、加速する。否、加速などという単純なレベルの現象ではない。


「誰だ・・・・・・・誰だお前は!」

 リザコードが叫んだ。

 その襤褸布に鍔広の帽子を被った男は、センサー・アイを光らせた。

 その腕の中にはチャシャとキースレムがいる。

 一瞬の光がリザコードの前を通り過ぎた。次の瞬間、獣人もリス型生命体も消えていた。

「貴方が・・・・・・?」

 チャシャの声に、頷いた。

「ここにいてくれ。キースレムを頼む」

 帽子の男は、ゆっくりとチャシャとキースレムを降ろした。

「俺は、ブライヤー!フォトンモード・ブライヤーだ!」

「スペースオペラ」が最初蔑称であったと知ったのは最近だ。

でも、だとしてもだ。

「スペース」で「オペラ」。

もはやワクワクしかないじゃないか。

それを蔑称とか、チャンチャラおかしいぜ!(個人の感想です)

関係ないけど、食べ物の「豚」は好きだし「ゴリラ」もかっこいいと思うけど、

「ブタゴリラ」は蔑称だと思います。

関係ありませんね。


というわけで、スペースオペラ書いてみました。

続きは近いうちに投稿できると思います。

ご興味あれば、お待ちくださいな!

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