ランチタイムにそれは起こった(楓目線)
私はいつも、隣の留羽のクラスで留羽とお弁当食べている。
私がお弁当を食べ終わる頃に、今日は思わぬ来客が現われた。
「七瀬野さん」
「あ…」
私は、驚いて思わず声を漏らす。
――――5組の、鳥羽奏太くん。
「あの、lineアドレスを教えてくれる?」
照れたようにハニカミながら、王子が留羽を見つめている。
どうやら私のことは完全にアウトオブ眼中。
見えていないようだ。
私は、それをいいことに、彼を至近距離からじっくり観察する。
切れ長の大きな目、鼻筋も通っていて、口元に色っぽいホクロ。そしてそれらが見事にバランス良く整った顔立ち。
確かにイケメンと言われているだけあるな…ーー
と、改めて近くで見ていたら一瞬見惚れてしまった。
――――いやいやいや、然くんに比べたら…。
じゃなくて、まずはこの状況なんとかしないと!
我に返った私は、急いで口を開く。
「それはちょっと…」
留羽を見つめる鳥羽くんに視界を遮るように身を乗り出して断ろうとすると、隣で静かにお弁当を食べていた留羽が、
スッと私の顔の前に手を出す。
――――留羽?
「良いですよ」
留羽が言った。
――――え、良いの?
「本当?」
嬉しそうに微笑んで、思わずといった感じで鳥羽くんが言う。
―――分かる…、信じられないよね…。
私は、驚きながらも鳥羽くんに共感する。
「断る理由もないですから」
留羽は、お弁当を食べ終わり、片付けながら淡々と言う。
「ありがとう」
鳥羽くんが、笑った。
―――――…イケメンが満面の笑みで笑うとなぜ後ろに花が見えるのかなー?
すっごくキラキラしてますけどー。
連絡先を交換すると、満足そうに鳥羽くんは自分のクラスへと戻っていった。
鳥羽くんが居なくなったところで、私は留羽に尋ねる。
「留羽…どうして鳥羽くんと連絡先を交換したの?」
留羽は自分から人との関わりを持つ子ような子じゃなかった。
私も然くんの彼女になる時まで、留羽と話したことがなかった。
昔から留羽に話し掛けてきた女子は、
最終的に毎回然くんへ近付くための手段として利用してきたらしい。
高校1年の時ずっと一人でいたのは、
そういう“人付き合い”にうんざりしたからだと仲良くなってから聞いた。
そんな留羽が、初対面に近い人と連絡先を交換するなんて…ーーーー。
というか、私はこれを然くんに何と説明すれば…ーーー。
「あの人、楓と同じ匂いがした。」
留羽が私を見て、笑って言う。
「私と?」
「――――裏表なさそうじゃない?」
そう言う留羽は、
見たことないぐらい表情が和らいでいて…―――、
あまりにかわいくて…私は何も言えなくなった。




