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それ、イケメンに限ります?   作者: 夢呂
プロローグ
5/40

身に覚えがないのに呼び出された(留羽目線)

「にしても、楓は変わってるよね」


何度思い出しても笑える。

まさか、あの超絶シスコンなお兄ちゃんと付き合いたいなんて。


というか、

あの本性を知って、なお告白するなんて…ーーー。


「お兄ちゃんと付き合えるの、楓ぐらいだわ」





お兄ちゃんの彼女、柏木(かしわぎ)(かえで)


高校1年では同じクラスだったが、去年も今年も隣のクラス。


しかも高校1年の時は、話したことすらなかった。


元々人と話すのが苦手な私は、友達と呼べる人も居なかった。


有名すぎる兄を持つ妹として、地味な私でも、どうしても周りから好奇の目で見られていた。



『留羽ちゃん。来年から私が見張りますから』


付き合う条件に、妹の私に“変な虫”がつかないように見張ると提案した、変わり者。


『付き合おうか』

兄もすっかり心を許して、がっちり握手を交わしていた。


告白後に、オッケー出して握手するカップルなんて、初めて見たわ。


というか、そもそも付き合う主旨がずれている気がする。



「ちょっと留羽ちゃん?さっきから何笑ってるの?」


「あぁ、ごめん」


楓が兄の話を出すと、ついこの告白のくだりを思い出してしまう。


私が笑うのを止めると、クラスの女子が話し掛けづらそうに私の席にやって来た。


「あの…七瀬野(なせの)さん」


「はい」

私はクラスメイトの方に顔を向ける。


「5組の鳥羽(とば)くんが呼んでるんだけど…?」


「え!?」

なぜ楓がそんなに驚いたのか、よく分からずに楓の方を向く。


「ちょっと留羽!いつの間にあのイケメンと知り合いに?」


楓が興奮して言う。


「知り合いになった覚えはないし。てか知らないんだけど誰?」


そもそも知り合いなんて、楓以外どこにも居ない。

私の態度に、楓がやれやれというようにため息をつく。



「鳥羽奏太くんだよ…この学校で然くんの次にイケメンだと認定されてるの!え、マジで知らないの?」


何で知らないの?本当にこの学校の生徒?とでも言いたげな表情(かお)をしている。



「いやなんかごめん…」

とりあえず楓の迫力に謝ってみた。

でも、知らないんだから仕方ない。


「ちょっと押さないでよっ」

楓が無言で私の背中をグイグイ押して、ドアのところまで無理矢理連れていく。



「あ、留羽ちゃん…」


「…―――」

あ、やばい。自然に眉間に皺が…。


でも、私がイラッとしたのも無理ないよね?


だって、なぜに初対面の私の名前を“ちゃん付”で呼ぶわけ?



「昨日はありがとう」

鳥羽くんが、突然お礼を言う。


「何の事ですか?」


―――というか、人違いじゃないですか?


私が真顔で言ったので、鳥羽くんは焦ったように補足する。


「ほら、予備校で消しゴムを拾ってくれたよね?」



「―――そうでしたか?」


そう言われても、さっぱりピンと来ない。


「ちょっとすみません、柏木楓って言います。」


私と鳥羽くんの間に割って入るように、楓が立ってくれる。



「この子に話しても無駄です。私が変わりに話を聞きますよ?」


笑顔でなんてこと言うんだ、と思ったけどあながち間違ってもいないか…とすぐに思い直して、私は楓に後を任せた。


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