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それ、イケメンに限ります?   作者: 夢呂
プロローグ
4/40

彼氏の妹の親友やってます(楓目線)

留羽(るう)、どうだったの予備校」


朝、留羽が鞄を自分の机に置いているところを見て、

私は二組の教室に入り声をかける。


「うん、はかどったかな」


留羽に声をかけるのは私ぐらいなので、こちらを見ることなく留羽が答える。


「然くんが迎えに来たんでしょ?」

「あぁ…」

私がそう聞くと、留羽が露骨に嫌そうな表情になる。


――――また、然くん暴走(やらか)したのかな?


「彼女はほったらかしのくせに、妹のためにバイトも休むとか…」


昨日連絡したら、『今予備校の前で留羽待ってるから』と即電話を切られたのを思い出す。


「それ、知ってて付き合ってるんでしょ?」

留羽が参考書に視線を落としつつ、言う。


「そうだけどさー」

留羽の兄、然くんは、二年前この高校の生徒会長。


高身長で笑顔が爽やかなイケメン、成績は常に上位、スポーツ全般得意。

その上、誰にでも優しいと、全てを兼ね備えた男。


“天は二物を与えず”?


――――嘘つけ、与えすぎだろ!!

と、突っ込みたくなるくらい、格好良い先輩だった。




然くんが卒業する日、高校1年最後の思い出に、私は勇気を出して告白した。


『ごめんね、俺好きな人いるから』


―――噂通りだった。


どんな女の子も、この一言で片付けられると聞いていたが、

本当だったのか。


元々先輩は憧れの存在でまともに話もしたこと無かったし、

本当にダメ元だったから…まぁ想定内だった。


ここまでは。



なぜか、その告白の場面に偶然現われた、クラスメイト。

彼女がフラッと姿を現すと、先輩は豹変した。


『るう!』

――――え、先輩のこんな満面な笑顔、初めて見た!!


私はこの瞬間、先輩にまた恋をしてしまった。



『お兄ちゃん…。あ、お邪魔しました』

留羽は、私の存在に気付くとすぐに立ち去ろうとした。



『待てよ留羽』

先輩が留羽の腕をとると、そのまま抱き寄せる。


『その花、俺にくれるんだろ?』


―――――え…何これどうなってる…?


目の前にいるのは、兄妹のはず。



『離さないと、お兄ちゃんともう口きかないから』

混乱している私をよそに、冷ややかな表情で留羽が言う。


すると、先輩が青くなってパッと体を離す。



あ、なるほど!

先輩は、重度のシスコンね!



『先輩、やっぱり私…―――先輩と付き合いたいです』

私はもう一度、告白した。


『いや、だから俺は…ーーーー』

『留羽ちゃん。来年から私が見張りますから』


断ろうとした先輩に、私は提案する。


『付き合おうか!』

先輩は私の提案に、今度は即答して受け入れてくれた。


然くんの彼女になれた瞬間だった。




「私としてはいい加減、(かえで)のこと優先して欲しいんだけどね」

留羽が頬杖つきながら、私に苦笑して言う。


「留羽ちゃん、良いやつ!」


もう付き合って一年経つのに、私たち二人でデートすら行ったこと無いんだよね…。


留羽を間に三人で、とかなら何度も…あるけど。


まぁ現実的に考えて、あんなイケメンと二人でデートは、

緊張しすぎるからとりあえず同じ空間にいれればそれでも幸せなんだけど。



「にしても、楓は変わってるよね」


留羽が珍しく、微笑んで言う。


「お兄ちゃんと付き合えるの、楓ぐらいだわ」



―――うん。私もそう思ってる。

重度のシスコンだって知ってるのは、私だけだしね。



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