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それ、イケメンに限ります?   作者: 夢呂
初詣【番外編】
38/40

キマらない俺(奏太目線)

「―――誰?知り合い?」


留羽の口から“拓ちゃん”という人名らしき単語が出てきて

俺はそこで初めて失態に気付いた。


「お兄ちゃんの友達…」

留羽が、無表情で“拓ちゃん”の背中を見送りながら答える。


「そっか」

素っ気なくそう言ってみたけれど、“ナンパだ”と決め付けて排除してしまった自分が気まず過ぎた。

(は、恥ずかしすぎる…ーーーー)


「―――なんか奏太、お兄ちゃんに似てきたね…」


心の中で頭を抱えて狼狽えていた俺に、留羽がとどめを刺した。


「…そ、そんなことないし」


(俺は心配なだけで…留羽が可愛いから―――)

と考えて、それ、お兄さんと全く同じ考えじゃん!ともう一人の自分がツッコむ。








「合格祈願の御守り買ってきても良い?」

参拝後、留羽が言った。


「もちろん」

(いよいよ受験か…ーーーー)

「留羽は東京の…K大学だったよな?」


御守りを買う列に並びながら、俺は留羽に言う。


「うん、K大狙ってるけど…どうかな」

留羽の声が徐々に小さくなる。


K大学は私立の大学で、かなり偏差値が高い。

今の留羽の成績からすると、少し偏差値高めの大学だ。


「大丈夫、お兄さんの行ってる地元のA大は、A判定だったし。そっちでも良いじゃん」


留羽がK大学に入れる可能性は御世辞にも楽勝とは言えなかった。

だから俺は、あえてA大の話をする。

K大学程ではなくても、A大も偏差値の高く人気のある大学だ。


「…――――」


「どした?」

留羽が黙りこむから、俺は留羽の顔を覗き込む。


「私は、K大学が良いんだってば」


「それって、俺がO大学行くから?」


O大学は、K大学の近くの、東京の私立大学だ。

俺はすでに推薦で行くことが決まっていた。


「違う」

即答で、留羽が言う。


(“違う”?)

俺はあまりの衝撃で、若干足元がぐらついた。


(え、違うんだ…?)

――――信じられない、そこは素直に『うん』って言うとこだよ、留羽ちゃん?



「私が、K大学に行きたいのは…ケリをつけたいからなのーーーー」


留羽の視線は真っ直ぐ前を向いていて、

何故だか分からなかったが、俺は出会った日の事を思い出していた。


―――予備校で一生懸命勉強をしていた留羽の姿。


そして今日まで毎日一緒に勉強してきた、留羽の受験勉強への姿勢。


(俺は隣で…今まで何を見てきたんだ?)


二人で勉強してるときは、一生懸命留羽の邪魔しないように、ムラムラする気持ちを抑えて…ーーーー。


考えてたことは、抱きたいとかキスしたいとか…そんなことばっかりで…ー―――。


「奏太?」


俺が心から反省していると、留羽が心配そうに俺を見つめていた。


おそらく俺が黙り込んだから心配したんだろう。


「…―――頑張って、一緒に東京の大学行こうな」


(あと俺が出来るのは“応援すること”ぐらいだから…ーーー)



「うん、頑張る…」

ふわりと笑う留羽の笑顔に、胸が熱くなる。


「かわいい…」


思わず声に出ていた、俺の心の声に留羽が困ったようにうつ向く。


「奏太、それやめてってば…」


(――――だって、可愛いから。)


うつ向く留羽の頬に手を添えて、かがみ込みながら素早くキスをする。


「今すぐキスしたいぐらい、可愛い」


「ばっ…」


(キスしてから言っても、意味ないか)


照れて口元を押さえ、わなわなと震えている留羽はもっと可愛いかった。


「…あの、次の方?」

気まずそうに声をかける巫女さんの姿に、いつの間にか御守りを買う列の最前列に立っていたことに気付く。


「奏太のばかっ」


留羽は、あまりの恥ずかしかったのか御守りを買わずに走って行ってしまった。


(あぁ…ーーーまたやってしまった…)

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