羞恥心より大事なこと(留羽目線)
何言ってるんだろう…。
恥ずかしげもなく、馬鹿みたいに。
自分が今、なんと発言したのか、思い出すのも恥ずかしい。
「あ、奏太戻ってきたみたい…」
恥ずかしさに悶え苦しんでいると、中谷くんが視線を私の後ろに向けたまま半笑いで言う。
――――まさか、今の聞いてた?
私が焦って振り返ろうとした瞬間、
「留羽、」
奏太が、大きな掌でガシッと私の腕を掴む。
「――――ジョーと何話してた?」
奏太の声が、低く感じた。
「な、にも…話してないよ。」
言えるわけない、奏太を好きだと言っていた、なんて。
ちょっとこっち来て、と呟くと、私の腕を掴んだまま奏太は近くの空いている教室に連れ込んだ。
「…―――話してたじゃん。真剣な顔して、顔赤らめて」
奏太が責めるように私を見つめる。
「…―――奏太…」
――――…ねぇ、怒ってるの?
また私のせいで…ーーー。
「ごめ…―――」
ごめん、と言いかけた私の口を、奏太が手で塞ぐ。
そして、顔を近づけて私に確認する。
「それは、なんの謝罪?」
―――…なんか、今までにないぐらい…怒ってる…。
「朝のこと?それとも今?」
「――――…」
奏太…私、伝えてもいい?
――――…嫌いにならない?
「俺はこんなに好きなのに、留羽は…ーーーー」
私の気持ち、知っても居なくならないでね…?
「ごめん…」
私の口から、今言える精一杯の気持ちがこぼれた。




