可愛い彼女の本音(譲目線)
「鳥羽くん?今居ないけど?」
日直の仕事を頼まれて職員室から戻ると、
俺のクラスの前で、クラスの女子に門前払いを受けている背中を見つけた。
「…―――あれ?留羽ちゃん?」
「あ…中谷くん」
俺が声をかけると、振り返ってホッとした表情で俺を見る彼女、七瀬野留羽。
“あの”、伝説の模範生徒、“七瀬野 然”の妹。
そして今は、俺の親友“鳥羽奏太”の彼女でもある。
腰まで伸びた長く艶やかな栗色の髪。
小柄で華奢な身体。
最近は化粧もしているからか、輝きを増していて…ーーー
入学時の“地味だ”という印象を見事に裏切っている。
「奏太に会いに来たの?」
「うん…朝のこと、謝ろうかと思って」
――――あぁ、あれね。
奏太がキスしようとしたら、頬をビンタして先に教室に行ってしまったって、あれね。
朝、頬を押さえていたから理由を聞いたら、奏太がムスッとして顔で愚痴ってきたから、知っている。
「奏太、トイレかもなー」
教室にはいないようなので、俺はそう応える。
「そう…」
留羽ちゃんは少しホッとしたような、残念のような、複雑な表情だった。
「留羽ちゃんは、奏太が好き?」
そんな彼女が可愛らしくて、俺はつい吹き出してしまった。
「え、どうして…っ?」
留羽ちゃんが動揺する。
一応、確認してもいいかな?
どうして、奏太と付き合うことにしたのか…―――。
「―――奏太が、イケメンだから?」
「イケメン?」
「格好いいでしょ、アイツ。――――モテるし。」
俺が冗談半分でそう言うと、留羽ちゃんが怪訝な表情で俺を見上げていた。
「モテるからとか、イケメンだからとか…」
―――その目、良いね。
「なんでそんな理由で人を好きになれるの?」
―――なんか、わかった気がした。
――――…奏太が彼女を気に入った訳が。
「人を好きになるのに、イケメンとか関係無いよね?」
―――そうだよ、それが正論。
“外面が好き”なんて言うような、中身が見えていない奴らじゃあ、上手くいくわけないんだ。
「こんな私を好きだと言ってくれたから、私は奏太が好き」
真っ直ぐに俺を見上げて、勇ましく言う彼女に、俺は惚れ惚れと見つめ返していた。
――――奏太が聞いてたら、どんな反応するんだろうな。
そう思いながらふと顔を上げると、遠くからすごい勢いで向かってくる奏太とバッチリ目が合った。
あ、やばい。
奏太のやつ、なんか誤解してないか?




