怒り心頭(然目線)
「留羽…」
昨日帰ってきたときから、ずっと塞ぎ込んでるーーー。
そんな風に笑ってたって、お兄ちゃんの目は誤魔化せないぞ…。
留羽と来るのは久しぶりの、遊園地。
俺は、留羽の後ろを歩きながらじっと見つめる。
「留羽、次はあっちの絶叫に乗ろう?」
鳥羽奏太…こいつ俺が真後ろにいると知っていながらよく“留羽”だなんて気安く…。
あ、手を繋ぎやがった。マジで命知らずなやつだ。
「うん」
でも…留羽の笑顔が本物に変わったのが分かって…何も言えない自分。
―――クソ…。鳥羽奏太め…。
それにしても…ーーーー。
「楓」
俺は、気がかりなことを聞くために隣を歩いていた楓に声をかける。
「はいぃっ?!」
楓が驚いて声を裏返させて返事をする。
コイツ、今俺の手を繋ぎたいなーとか思ってたな。
可愛いやつめ。
でも、敢えて自分からは触れない。
―――――俺はずっと、決めているから。
留羽が幸せになるまでは、俺は絶対に恋愛はしない。
そんな俺と付き合ってる楓は、貴重な存在だ。
わがままも文句も一切言わず、俺と留羽の傍に居てくれる。
言えずにいる過去の話をしても…楓は変わらず傍にいてくれるのだろうか?
あぁ…―――そんな俺の話なんか今どうでもいい。
今は、留羽のことだけを考えなければ…。
「留羽…どうしたんだ?元気ないよな?」
俺が尋ねると、話し掛けられるのを待っていた楓は、困ったように唇をきつく結んだ。
「…―――」
どうやら、俺に話しても良いのかどうか悩んでいるようだ。
楓は俺の彼女ではあるが、留羽の親友でもある。
留羽の気持ちを考えているのだろう。
――――でも、知っているのなら俺も今知りたい。
「楓?」
俺は、もう一度…催促するように楓に問いかける。
すると楓はものすごく言いづらそうに口を開いた。
「――――留羽、昨日…元彼に偶然再会したらしいんです…」
「なっ」
なんだって!!?
俺は、頭に血が上った。
アイツ…ーーーやはり留羽と同じ高校に行くことを辞めさせるだけじゃ制裁が足りなかったか。
あのマヌケ面を二度と留羽の前に見せるなと忠告したはずだ…ーーー!!
許せん!!
「然くん、落ち着いて…。―――――あ、」
俺の怒りを、楓の声はクールダウンさせた。
「み、見失ってしまいましたーーー」
怒りで我を失っていた俺は、楓に言われて、慌てて周囲を探した。
しかし、前を歩いていたはずの二人は完全に姿を消していた。
しまったぁぁぁ…ーーーー
ぐぬぬ…鳥羽奏太め…




