壁ドン(楓目線)
「柏木さん“ケイ”って、誰?」
え、なんで私、壁ドンされてるの?
しかも、然くんではなく、留羽の彼氏である鳥羽くんに。
「“ケイ”?――――誰かな?聞いたことないけど」
それより、この至近距離やめませんか?
ドキドキ止まらないですー。
「嘘つかないでよ、知ってるんだよね?君、留羽の親友だろ?」
鳥羽くんの整った顔が私に迫る。
ちょ、思考停止しますから、本当やめて。
私は顔を背け、考える。
――――留羽の知り合いで…ーーー“ケイ”?
「それは、他校の人?」
「うん」
「男子高校生?」
「うん」
「同学年っぽかった?」
「うん」
「イケメン?」
「いや、別にイケメンではない。フツウメン」
――――なるほど、だとしたら“アイツ”だ。
「それ、留羽の元彼じゃないかな?」
「は?」
「何よ、留羽にだって中学時代彼氏ぐらい居たわよ」
―――留羽とは中学違うから、私はよく知らないけど。
でも、然くんから聞いたことがある。少しだけ。
「―――“留羽は、そいつのせいで心に傷を負った”」
「え…ーーー」
鳥羽くんが驚いた表情で壁についていた手をぶらんと下げた。
「“弄ばれて、捨てられた”って」
――――留羽が人との関わりを避けていた理由のひとつ。
立ち尽くしている鳥羽くんに、今度は私が壁ドンする。
「だからもし、鳥羽くんが留羽のこと本気じゃないなら」
――――見張り役、なめんなよ?
「今すぐ留羽の前から消えて」
遊びだったら、絶対に許さないから。




