親友の恋を応援したい(楓目線)
鳴ってもいないのに、私はまたスマホを取り出してしまう。
―――然くん、怒ってるよね…。
私がまるで鳥羽くんの肩を持つような言い方しちゃったから…―――。
でも私は…鳥羽くんの気持ちに嘘はないと思う。
根拠はないけど。
それに、留羽には新しい恋をして欲しいと思ってる。
付き合っているか否か真意は別として、
留羽は口には出さないけど、彼に惹かれているようだし。
だからこれが、良い切っ掛けになる気がするんだ…。
「楓、昨日はありがと」
昼休み、珍しく留羽が私のクラスにお弁当を持って来た。
スマホを眺めたまま、ボーッとしていた私は慌てて顔を上げる。
「うん」
私、見張るとは言ったけど恋路を邪魔するとは言ってないから。
留羽が好きになった人なら、きっと大丈夫。
私は然くんの彼女だけど、留羽の親友でもあるからね。
「それにしても、今週末四人でダブルデートなんて…。然くん何考えてるのかなー?」
お弁当を食べながら、私は留羽に考えを聞く。
「きっと見極める気なんだよ…奏太のこと」
留羽が無表情で答える。
「あぁ、やっぱり?」
そして私は、その数合わせ役ね…。
「大丈夫、途中で楓とお兄ちゃん二人にしてあげるから」
私が心の中で言ったことが聞こえてしまったのか、留羽が私を見て、ニコッと微笑んだ。
「や、そんなことしなくて良いからっ」
てか、そんなことされたら心臓爆発するって!
「あ、そうそう!ウチのクラス5時間目体育なんだ、行くね」
「え、ちょっと留羽…!?」
私の反応を面白がるように、留羽はさっさと行ってしまった。
「楓!」
留羽が教室から居なくなるのを待っていたように、
私のクラスメイトが声をかけてきた。
「舞ちゃん、綾ちゃん、どしたの?」
私は笑顔で応える。
「七瀬野さん、鳥羽くんと付き合ってるって本当なの?」
「…――――?」
私は笑顔を貼り付けたまま首をかしげ、彼女達の真意を読み取ろうとする。
迂闊なことは言えない。
然くんの彼女である私は、すでに留羽以外の女子を敵に回していたから。
上部では“友達”を装っているが、彼女たちも私に敵意を持っている。
「二人、名前で呼びあってるし、昨日一緒に帰ってるの見た子が居るんだって」
この私に聞いてくると言うことは、相当気になっている様子。
ずっと答えない私にしびれを切らしたのか、舞ちゃんが机に手を置き、距離をつめてくる。
「ねぇ、鳥羽くんから告白したんだよね?」
「なんで?」
―――ずいぶん、断定的な言い方だな。
「鳥羽くんて自分から好きにならないと絶対付き合わないんだって、有名な話でしょ」
知らねーのかよ、とでも言いたげな顔で私を見下ろす。
「へぇ、知らなかったー」
私は二人に笑顔で応える。
すると、なぜかどや顔で二人は勝手に情報をくれた。
「しかも、最終的に自分の好きより相手の好きが上回ると冷めるんだってー」
「今までこのパターンで何人と別れたことか…」
「へぇ…」
――――それ、留羽はどうなんだ?
正直留羽がデレるところ、想像つかないんだけど…。
私は、その日の放課後、並んで帰っていく二人が校門のところで手を繋ぐ瞬間を目の当たりにした。
――――あ、留羽がデレてる…。




