他人とはちょっと違う恋の悩み(奏太目線)
また悪い癖が出てしまった。
俺はなぜか好きな子を目の前にすると、何かの拍子に“理性ぶっ飛びスイッチ”が入る…―――。
七瀬野さん…ーーすっかり身構えてたよな…。
昨日はおまけにお兄さんからまさかのデートのお誘い。
デートというか、果たし状?
――――問題山積みだ…。
「奏太、さっきからため息つきすぎ」
ジョーが、少し不機嫌そうに言う。
確かに目の前でため息ばかりされたら、気分悪いよなー。
「ご…」
「女子達、“憂いのある奏太くんもステキー”とかって、さっきからうざいんだけど」
謝ろうとした俺は、ピタッと口を閉じる。
――――なんだ、ただの僻みかよ。謝ろうとした俺の気持ちを返せ…。
「どうでもいいし」
クラスの女子とか、興味ないし。
そんなことより七瀬野さんと自分のことで頭がいっぱいだし。
「おい、奏太」
「何だよ」
ジョー、しつこいぞさっきから…!
と言うおうとして、ジョーを睨む。
「折角教えてやったのに…」
ジョーが廊下を指差して、また不機嫌そうに言う。
――――ごめん、ジョー。しつこいとか思って!
心の中で謝ると同時に、俺はすでに廊下にいた。
「な…」
じゃなかった、
「留羽…」
皆の前では名前で呼ぶの、まだ慣れないな…ーーー。
「奏太、話したいことがあるんだけど」
「――うん?」
うつ向いた顔も、可愛いな…ーーー。
使用されていない教室で、二人きり。
これ俺、大丈夫か…?
またへんなスイッチ入らないといいけど…ーー。
「あの、昨日のことなんだけど…ーー」
すごく言いにくそうに、七瀬野さんが口を開く。
昨日…ーーー?
あぁ、お兄さんに言われたこと?
「ダブルデートの話?」
俺が言うと、少し間があってから七瀬野さんが頷く。
「…うん」
あれ?なんか違った?
「お兄ちゃんのことだから、色々お互いをどれだけ知っているのか聞いてくると思うんだ、だから」
「対策立てないとね!」
俺がそう言うと、七瀬野さんが少しだけホッとしたように頷く。
「じゃ早速、今日の放課後空いてる?」
―――なんか、デートに誘ってるみたいで照れるな…。
「…うん」
なぜか七瀬野さんも照れたように目線を下げたまま頷いた。
あ、やばい。押し倒したい。




