まさかの誤算(留羽目線)
「留羽に一目惚れしたんだ」
私は、その言葉にフリーズする。
…鳥羽くん、その余計な演出はなんなの?
私から告白したってことにしたのに、これじゃあ話が噛み合わない。
これじゃあ楓に疑われ…ーーーー
私は、横目で隣の楓の様子を窺う。
楓は、なぜか眩しそうに目を細めて鳥羽くんを見つめたままだ。
――――とりあえずは、大丈夫そうだ。
「奏太」
教室を出ていく鳥羽くんを、私は人気のない廊下まで連れていく。
「どうしたの?」
鳥羽くんは目を丸くしている。
「鳥羽くん、勝手な演出されると話が噛み合わなくなるからやめてくれる?」
私は、小声で言う。
「え、なんのこと?」
鳥羽くんはキョトンとしている。
「一目惚れした、とか―――」
私が下を向きながら説明しようとすると、
なぜか鳥羽くんは私の顎に手を当てる。
――――え、何するの…ーーー?
気が付くと、無理やり視線をあわされる。
鳥羽くん…ーーー?なんか雰囲気が違…ーーー。
「あぁ、それ演出とかじゃないから」
鳥羽くんが、悪戯に微笑む。
「…―――え」
なんで…こんな心拍数上がってるんだろう。
「好きだよ、留羽…」
これは…ーーー誤算だった。
鳥羽くんが私のことを、好き…ーーー?
「本当に、付き合って?」
言われ慣れてないと、こう言うときの対処に困る。
「私…鳥羽くんのこと何も知らないしーー―――」
しどろもどろでそう言うと、鳥羽くんがさらに顔を近づける。
――――近い…って…。
「うん。これから知っていって?」
「好きってわけでも…ーー」
私が目を反らそうとしても、彼はそれを許さない。
「うん。これから好きになって?」
どうしよう。
でもお兄ちゃんに彼氏だと紹介してしまった手前、今さら嘘だとも言えない。
このまま鳥羽くんに彼氏のふりをしてもらうしか…ーーー。
「まぁ、いっか」
どうしよう…――――。
混乱している私に、鳥羽くんは笑顔で言った。
「俺は本気でいくから、覚悟しててね」
これ、私が一番苦手なパターンだ…ーーー。




