自己はおこるさ
「今日から英語の先生変わるんだったっけ?」
昼休み明け、いつもより早めに教室に戻ったのでしばし机で微睡んでいると、サジが空気も読まずに話の広がらなさそうな話題を振ってきた。
先週末あたりの全校集会で言ってたっけな、そういや。こんなテスト前の時期に教師交代って、いろいろと大丈夫なんだろうか。また斗月や夏矢ちゃんたちに勉強を教える量が増えるんじゃなかろうか。
「全校集会には、引き継ぎで忙しかったせいで体調を崩して出席できなかったらしいけれど。生徒との初顔合わせにして最初の授業は、僕たちらしいね」
「ふぅん……誰か顔とか見てないのか?」
そのとき、予鈴が鳴ったタイミングで、昼休み一緒にどこかで遊んでいたらしい日々と瀬戸さんが帰ってきた。
「なに話してんの?」
「次の時間の英語、先生変わるだろ? どんな人かなって」
スムーズに話に入ってきた女子2人が、くすくすと笑う。
「なんだよ?」
「さっき会ったところなのよ」
「アラサーで、けっこう男前の先生だよ。優しそう」
優しそうな先生なら、まぁ面倒臭くなさそうでいいな。新橋先生みたいなのがもう1人来たら怖いなと内心恐れていたので安心した。
教室の友達を巻き込んで男前だとかタイプだとか、イケてるアラサー男性はJKから見てアリだとかナシだとか、下世話な噂話に花を咲かせているうちに、教室の戸が開かれる。
穏やかな笑みを浮かべて入室してきたのは、たしかに30代前半っぽい優しそうな顔に、年齢に似合わない白髪多めの灰色髪を後ろだけ撫でつけた、背の高い男性だった。
教室に2歩ほど入って、ゆっくり教室中を物珍しそうに見回す。5秒ほど色々観察して満足したのか、また歩き始め、教壇に教科書等を置いて立ち止まった。
「きりーつ」
「気を付け」
「礼」
「着席」
某サブカル委員長系Vtuberのように「座らせてー!」とはならない。
俺たちの礼に軽く会釈をして、男性はチョークを手に取りながら、自己紹介を始める。
「えーと……諸事情によって辞められた……辞めさせられたんでしたっけ? まぁいいや、前任の川西先生に代わって英語を担当します、後田創です。よろしく」
カツカツ、と黒板に控えめなサイズで書かれた名前を指差して、後田先生は照れくさそうに名乗った。
しかし、何やら自分のミスに気付いたようで、額を叩く。
「あー、英語で挨拶した方がいいんですかね? 川西先生ってどんな感じで授業してらしたんですか?」
「全部日本語でーす」
「教科書写して覚えるだけでーす」
「……うーん、昔ながらの教え方をされていたんですね」
川西の手抜き授業を、後田先生は精一杯オブラートに包んでフォローした。
「テストのために教科書を丸暗記することも、人生経験としては大事です。しかし英語能力の向上に結びつくかと言われれば、疑問ですね。
一番手早く英語を覚える手段は、英語圏に住み、ネイティブスピーカーたちとコミュニケーションを取ることだと言われています。今では日本でも多くの高校が、授業中の言語を英語に統一し、英語圏のような環境で授業を行うという取り組みをしています」
みなさん電子辞書を出してください、という後田先生の指示に従い、全員電子辞書を出す。この学年のほとんどの生徒は、川西の授業で当てられた時にカンニングするため、電子辞書を常に机の中に入れているのだ。
「分からない単語があれば電子辞書を使って調べても構わないので、今日は自己紹介を英語で行ってみたいと思います」
えぇー……と、あからさまにクラス全員がダルそうにする。
「いやいや、やってみたらけっこう面白いですから! こういうのって英語ができなければできないほど面白いですから!」
「それ趣旨変わってないですか……?」
「バラエティ感覚?」
「じゃあとりあえず先生が見本やってみます」
有無を言わさず、後田先生が自分の自己紹介を英語で始める。
「Hello, everyone. My Name is Ushiroda Hajime.」
と、出だしこそ流暢な英語で我々生徒を「おぉー」と言わしめたのだが。
「I like PACHINKO.」
『いやいやいやいやいやいやいやいや』
カスだった。
英語が流暢なパチカスだった。
「え? ここまでで何か分からなかったですか?」
「新任教師が初っ端の自己紹介でパチンコ好きとか言わないでくださいよ」
「アラサーのイケおじが来たと思ってテンション上がってたのに台無しですよ。一瞬で好感度が川西以下になりましたよ」
生徒全員が口々にパチカス後田を非難し始める。学級崩壊早くない? RTA?
「好きな台は緋弾の○リア2です」
「聞いてねぇし、しかも英語で言うのやめてんじゃねーか」
「あの台クッソうるさいから嫌いなんだけど。当たる度『風穴っ! かざっ、かざっ、かざっ、風穴っ!』ってうっせーんだよ。眩しいし」
「なんで知ってる奴がいるんだよ」
「高2だろ俺ら」
「大丈夫かこの学年」
ギャーギャーやかましくなりだしたクラスを、数回パンパンと手を叩いて穏やかに宥めて、パチカス後田は溜め息を吐く。俺の中でもうこの教師の呼び方はパチカス後田で決まった。
溜め息を吐きたいのはこっちなのだが、パチカス後田はなおも呆れ顔でやれやれとかぶりを振る。
「はぁ、落ち着きのないクラスですねー。じゃあもう先生の自己紹介は終わりでいいですから、皆さん出席番号順に英語で自己紹介していってください。
番号順に呼ぶので、名前を呼ばれたら元気よく返事をして、フルネームと好きな台を言ってください」
「なんで好きな台があるの前提なんだよ」
「私ら高校生なんですけど」
「名前呼ばれて元気よく返事してから言うことが好きなパチスロ機の名前ってどんな集まり?」
辛辣な発言が目立つ。
姿を見せてから嫌われるまでがここまで早い教師もまぁいないんじゃないだろうか。
しかしパチカス後田はめげずに、いやむしろ全く批判を意に介さずに、出席番号1番から順に生徒を呼び始めた。
「えー、じゃあ1番、足立くん」
指名された足立くんが、「は、はい」と戸惑いながらもいい返事をして立ち上がる。
「……My name is Adachi Kotarou.
えーと……好きな台……?
My……favorite PACHINKO is……
『UMIM○N○GATARI』……?」
よく頑張ったと褒め讃えたい。
よく海物語を捻り出したと褒め讃えたい。
よく『マイ・フェイバリット・パチンコ』などというクソみたいな文字列をちゃんと口に出したと褒め讃えたい。
「どの海?」
しかし、パチカス後田はまだ足立くんの着席を許さない。
「え?」
「いや、どの海○語? 海○語っていっぱいあるじゃないですか。沖縄とかBLACKとかドラムとか」
「知らねーよ! 知ってるパチンコがこれしかないから言っただけだよ! オレンジの髪の子が出てくるのと緑のムキムキの奴が出てくることしか知らねーよ!!」
「緑のムキムキの奴が出てきたらアツいんですよ」
「聞いてねーし、アツいって何だよ!」
「じゃあ出席番号2番……」
「聞けよ! 生徒の話を!」
足立くん……レギュラー昇格が望まれるくらいのツッコミの逸材だ……。
出席番号2番の女子が、自分のフルネームを言って、しぶしぶ好きな台を絞り出す。
「え、えーと……うーん……」
「パチンコで思いつかなかったらスロットでもいいですよ」
そういう話じゃねーんだよ。
「My favorite PACHINKO is……
『じゃぐ○ー』……?」
「おお! ジャ○ラーが好きな女子高生がいるなんて! いい時代になったものです!」
「世も末だよ」
「ち、違うんです! めったに働かないお父さんが、久しぶりにお金を持って帰ってきて……その時に、『5スロの○ゃぐらーで大勝ちした』とか言ってたから……」
クラスに静寂が降りた。
「……あ、あれ? みんな?」
「えー、複雑な家庭環境を垣間見てしまったところで、次の出席番号は……」
「お前みたいな奴のせいだぞパチカス」
パチンコ・パチスロは適度に楽しむ遊技です。のめり込みには注意しましょう。
と、各々四苦八苦しながらも、無事に一通り自己紹介を終えることが出来た(ちなみに俺は好きな台について『ミ○クルカーペット』と答えた)。
全員が自己紹介を終える頃にはすでに生徒達からパチカス後田への信頼度はマイナスを天元突破していたが、後田はしれっとその暗い眼差しを受け流した。
「さて、自己紹介も済んだところで、軽くレクリエーションをしましょうか」
「流れ的に『レクリエーション』って言葉ですら胡散臭く聞こえるんですけど」
「金かける遊びさせようとしたらこの場で教育委員会に電話するからな」
パチカス後田は俺たちに背を向け、黒板に向かってカツカツと白チョークを走らせる。
まだ授業慣れしていないのか、字は綺麗だが、横に長く書くと文が曲がってしまうみたいだ。
最終的に黒板には、『英語伝言ゲーム』の文字が。
「今からクラスの代表5名を選出して、英語で伝言ゲームに挑戦してもらいます」
「……なんか意外とマトモなレクリエーションだな」
「伝言してもらう内容は、簡単な算数の問題になっています。最後の5人目の生徒には、その計算の答えを言ってもらいます。
もし完璧に正解出来たら……そうですね。夏期課題を大幅に減らしてあげましょう」
後田から与えられた条件に、クラスじゅうがおおっと興奮の声を上げる。それと同時に、何人かの目がぼーっとして座っていた俺の方に向く。
「一人目は門衛で決まりだな」
「万年成績トップだしね。頼むよ」
「……まぁ、宿題が減るなら頑張るよ」
俺の他には、俺と並んで成績がいいからという理由で瀬戸さん、前の学校で英語の成績だけは学年上位だったらしい日々、今年の春休みハワイ旅行に行ってきたばかりの麻鳥くんという男子、リ○ル・チャロ全シリーズ2周している中田さんという女子が選出された。
俺、瀬戸さん、日々、麻鳥くん、中田さんという順番で伝えていき、最後の中田さんが問題の答えを言う。
英文を伝えている間、瀬戸さん以下の順番を待つ生徒たちは教室から出て耳栓をし、自分の番が回ってきたら後田に呼ばれる……というのが大まかなルールだ。
けっこうキッチリしている。
「では、瀬戸さんたちが廊下に出たところで。門衛くんにだけ、伝言メッセージの内容をお教えします」
後田は俺を黒板の隅に誘い、俺にだけ、自分のスマートフォンの画面を見せた。
そこに書かれていたのは……。
『Tom went to the store with 2000 yen. He bought two 200 yen juice and four 400 yen carrots. How much is the rest?』
意味は……。
『トムは2000円を持って店に行きました。彼は200円のジュース2本と400円のにんじん4本を買いました。残りはいくらですか?』
となる。
「……にんじん高すぎないですか?」
「まぁ、今テキトーに考えましたからね」
現実的でない問題設定はともかく、内容は至ってシンプルだ。
ようは算数の文章問題。
2000-200×2-400×4=0。
アンカーの日々に、ゼロを答えさせればいいだけだ。割と簡単な気がする。
「言っておきますが……自分で答えを計算して、その答えだけを伝えるのはナシですからね?」
「わ、わかってるよ」
「不正に出玉を得るゴト行為はれっきとした犯罪なんですよ」
「わかっ……いや知らねーよ! 何でもかんでもパチンコかスロットで例えようとすんなや! 作者がまだキャラ掴みきれてないからって変なボケさせられる連載初期のギャグ漫画のキャラかアンタは!」
「門衛くん、ツッコミ分かりにくい……」
まぁいい。とにかく、この英文を次の瀬戸さんに正しく伝えりゃ俺の仕事は終了だ。
「じゃあ瀬戸さん、入ってきて」
「はい」
瀬戸さんが入室し、教室のドアが閉められる。
あぁそうそう、この先俺や他の生徒がどんなバカでかい声でツッコンだりしたとしても、教室の外で待機してる生徒にはイヤホンをつけてるから聞こえないので。予防線予防線。
教卓の前で瀬戸さんと向き合う形になり、俺は問題の英文を、ゆっくりと瀬戸さんに聞かせる。
「Tom went to the store with 2000 yen. He bought two 200 yen juice and four 400 yen carrots. How much is the rest?」
「……な、長くないですか?」
「……ぶっちゃけ、それは俺も思った」
これ、英語が伝わるか伝わらないか以前に、一回二回聞いた程度で内容を覚えきれるか?
見かねたパチカス後田が、うーんと腕を組んで考え、追加ルールを提示する。
「じゃあ、自分にだけ見えるようにノートを持って、そこに聞き取った内容をメモしていいですよ。いわゆるディクテーションですね」
「よし、じゃあもっかい言うぞ」
「お願いします」
「Tom went to the store with 2000 yen. He bought two 200 yen juice and four 400 yen carrots. How much is the rest?」
瀬戸さんは俺の口の動きなどもじっくり観察しつつ、さらさらとペンを走らせてノートに英文を書き記した。
「……よし、出来ました」
「え、一回で大丈夫なのか?」
「あまり見くびらないでくださいよ門衛くん。私の英語力は3200です」
「どういう計算で出した数値!?」
「はいはい。じゃあ次の冬目さん入ってきてー」
パチカス後田が日々を教室に呼び込み、軽く追加説明を行う。
ちなみに日々が答えた好きなパチンコ台はル○ン三世のルミナスタワーのやつだった。
実を言うと、俺の言った『ミ○クルカーペット』もそれも、今じゃどこにも置いてないようなとても古い台だ。俺も日々も、昔近くのデパートのメダルゲームコーナーに置いてあったのを思い出して言っただけだったりする。
そんな日々は瀬戸さんの前に立ち、イヤホンを外し、ディクテーション用のノートとペンを構えた。
俺はというと、自分の席に戻って高みの見物だ。あとは頑張ってくれ。
「Tom went to the store with 2000 yen. He bought two 200 yen juice and four 400 yen carrots. How much is the rest?」
おお……完璧じゃないか!
普通の日本人相手に伝えるにしてはちょっと流暢というか速すぎやしないかとも思ったが、内容が完璧だ。
あともう一度、今度はゆっくり言ってやれば確実に伝わるんじゃないか?
「よし! わかった!」
「えぇ!?」
思わず声が出てしまう。
「ひ、日々。お前ホントに分かったのか?」
「こらこら、もう出番が終わった人は口出し禁止ですよ」
「安心してよ怜斗くん。私の英語力は53万です」
「だから英語力は何を元に算出されるんだよ!」
「ですがもちろんフルパワーでこの問題とやり合う気はありませんからご心配なく」
「いやフルパワーでやれや! 何ちょっとマージン持たせようとしてんだ!」
自信満々な日々が、次の麻鳥くんを教室に呼び込む。
大丈夫かなぁ……。
「よし、準備できた?」
「おう。さっさと言ってくれ」
「おっけー」
日々はすぅっと大きく息を吸い、ディクテーションした伝言内容を麻鳥くんに伝えた。
「Tom went to the 《《SLOT》》 with 2000 yen. He 《《BET to》》 200 yen juice and four 400 yen carrots. How much is the rest?」
引っ張られてる!!
さっきまでの後田のパチスロトークに完全に引っ張られてる! 『ストア』を『スロット』、『ボート』を『ベット』と聞き間違えてる!
ていうかトム何やってんだよ! 2000円だけ握りしめてスロット打ちに行くやつ怖すぎるだろ!
その後の文章も、『200円のジュースと400円のにんじんに賭けました』って意味不明すぎるんだよ! どういう博打なんだよ、ルールがまるで見えてこねぇよ!
これじゃあ、さすがに麻鳥くんも困惑するんじゃ……。
「バッチリ」
「嘘つけェ!!」
すげぇいい顔で親指立てていた。
「おかしいだろどう考えても! なんで今の内容でイッパツで『バッチリ』ってコメントが出るんだよ!」
「だ、だから、もう出番が終わった人は口出し禁止ですよ」
「まぁ安心しろって門衛。俺の英語力は62だ」
「ここにきて爆下がりじゃねぇか! ていうかお前らの中で英語力って単位は共通認識なの!? 常識の類なの!?」
「ですがもちろんフルパワーでこの問題とやり合う気はありませんからご心配なく」
「だからフルパワーでやれや! 英語力62のザコがどうやって手ぇ抜くんだよ!」
も……もうダメだ、おしまいだぁ……。逃げるんだ……。
崩れ落ちる俺を尻目に、麻鳥くんは自信満々に、次の中田さんを呼び込む。
「準備できてるか?」
「オッケー、任せといて。もうこれ、パチンコ演出で言うなら全回転虹カットインだからマジで」
「この短時間でどんだけパチンコの知識付けてんだよ」
麻鳥くんは一旦目を閉じて深呼吸し、中田さんに、自分に伝わってきた誤った伝言内容を伝えた。
「Tom went to the SLOT with 2000 yen. He BET to 《《20》》 yen 《《JU〇GLER》》 and four 《《4》》 yen 《《GAR〇》》. How much is the rest?」
パチスロで意味通っちゃった!?
『ジュース』が『ジャ〇ラー』に、『キャロット』が『G〇RO』に変わっちゃってる! すげぇ! なんかもう逆に感動すら覚える!
でもトムやっぱ頭おかしいだろ! 2000円握りしめて20円スロットと4円パチンコ打ってんじゃねぇよ! 2000円じゃ1円パチンコでもワンチャンねぇよ多分! いやよく知らねーけど!
で、もうなんか予想つくんだけど。
これを聞いての、中田さんの反応は……。
「完璧」
「言うと思ったわ!」
なんでこいつら自信と英語力にだけは満ち溢れてるんだよ!
「安心してよ怜斗くん。私の英語力は#VALUE!よ」
「エラー起こしてんじゃねぇか! せめて明確な数値を出せ!」
「そこそこエクセル使う人間しか分からないネタやめようよ……」
「ですがもちろんフルパ繝ッ繝シ縺ァ縺薙?蝠城。後→繧?j蜷医≧豌励?縺ゅj縺セ縺帙s縺九i縺泌ソ??縺ェ縺」
「なんて!? どうやって発音してんのそれ!? 定義できない値入れてるせいで滅茶苦茶なエラー起きてるじゃねぇか!」
ダメだ終わった! 完全に詰んだ!
誰が悪いとかじゃない、あえて誰か一人を悪いとするなら間違いなくパチカス後田だ! コイツが事前にめちゃくちゃパチやらスロやらの話をしまくったせいで、認識にバイアスがかかったんだ!
瀬戸さんまでは順調だったのに……日々から後は、突如として脳に植え付けられたパチスロ知識に完全に脳ミソが支配されてたんだ。
『トムは2000円を持って店に行きました。彼は200円のジュース2本と400円のにんじん4本を買いました。残りはいくらですか?』
が、最終的に
『トムは2000円を持ってスロットに行きました。彼は20円のジャ〇ラーと4円の〇AROに賭けました。残りはいくらですか?』
になってしまうなんて、誰が想像できただろうか。
ていうか本当になんなんだよトム。勝てる算段ないだろトム。
2000円持って20円スロットと4円パチンコ打つなんて、普通に考えて勝てるワケねーだろ。30分もしないうちに0円に……。
……ん?
「では中田さん、答えをどうぞ」
「えーっと、2000円じゃ勝てるワケないから、答えは『0 yen』!」
………………。
『当たったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
脳内にキュインキュインキュイーーーーンという音が鳴り響いたのと同時にその日の英語の授業は終わり、無事に俺たちの夏休みの宿題が大幅に減った。