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放課後ロルプライズ!  作者: 場違い
4章・完全平等の電脳世界
54/73

メリーさんの電脳電話

 目を覚ます。

 無事に目を覚まし、体を起こすことができた。ひとまず、俺は危害を加えられていないということだけは確定した。一番どうでもいいことが確定した。


 不確定なことは2つ。


 1つは、盟音に危害が加えられているか否か。

 もう1つは、そもそも犯人やそれに準ずる何かが、この家に忍び込んだかどうか。

 後者が否である場合、前者はそもそも起こり得ない。


 ……ええい、こんな時に理屈っぽいことを考えている場合か。そんなクソ慎重になっているべきでもない、もっと急げ。、急げ!

 寝たふりをするために被っていたタオルケットを蹴り飛ばして、部屋を出ようとドアノブを引っつかんだ瞬間。


「うぁああああああぁぁぁぁあああああああああああぁぁっ!?」


 心臓が握りつぶされた。


 この声……盟音の声。

 ……ただの声じゃないだろ、現実を見ろよ。


 これは、悲鳴。


 ……………………遅かったのか!?


「おい!?盟音、どこだ!?どこにいる!?」


 ドアを蹴破るように開けて、廊下に出る。今の声は、下から聞こえたはずだ。


 半ば尻から転げ落ちるように、ズタズタと階段を駆け下りる。手が無意識に、履いていたズボンをきつく固く、皺が何十にも渡ってできるぐらいバカみたいに握り締めていた。

 1階に着いたところで、最後の段差から変な着地をしてしまい、足首を挫いた。


「くぁぁッ…………!」


 だが、止まるわけにいかない。


 盟音が危ない。


 自分のせいで、自分が事件を調べ始めたせいで、こんなことになってしまっている。

 俺のせいで、盟音に危害が加わる。

 そんなことにはさせない。


「盟音!大丈夫なのか、どこだ、どこにいる!?」


 足でまといになった片足を引きずるように走る。


「お兄ちゃん!?ちょ、ちょっと待って、来ちゃダメって!?」


 来ちゃダメ……!?

 くそ、自分が危ない目に遭っているというのに、俺の心配をしてくれてるってのか……!畜生、なんでこんなことに……!立場を逆にしろ、俺がお前を保護する立場だろうが!

 今の声はこっちか…風呂場。

 廊下から急角度で曲がって、脱衣所に入る。入口の壁に思い切り肩をぶつけながら、洗濯機にタックルをかましてしまいながら、1発撃たれて傷ついた猪のように、不器用に直線的に走る。

 風呂場に影が見えた。


 ……中にいる!


 安心もできない。むしろ心臓の高鳴りはさっきまで以上だ。

 盟音、無事でいてくれ……!


「おいっ、大丈夫か!?」


 風呂のドアを開けると、そこには。



「あ……………かぁ………………………………………………」



 咄嗟に手で大事な部分を隠した素っ裸の盟音と、4方向くらいにビャービャーと水を出し続ける、バグった水道。


 一瞬で理解した。


 さっきの悲鳴は、この水道が壊れて、爆発したように水が出てきたことに対する驚きだったのだと。


 …………………………………………………。

 はぁー。


 全身から力が抜けた。

 こんなに心の底から『やれやれ』と思ったこともない。


「やれやれ、ビックリさせんなよ……」


 裸体の盟音の前に、お風呂場の縁を隔ててへたり込む。

 苦笑いしながら、盟音の体を改めてよく眺める。

 ……ふむ、この間Bカップとかなんとか言っていたが、もしかすると、それより大きいかも……Cまでいってるかもしれんな。あの頃の夏矢ちゃんってそれぐらいだったっけ……?

 どんどん赤面していく盟音に微笑みかけて、サムズアップ。


「まだまだ成長の余地があるな、肉とか食って頑張れよ」

「だ………か………………ら………………………………………………っ」

「何なら明日からでも牛肉多めのメニューにしてやろう。あと牛乳とかもいいって聞くよな。ほどよく揉まれるのもいいって聞くし、何なら俺が――」

「来ちゃダメって言ったでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 鼻を折らんとする勢いで顔面を蹴り伏せられました。



 深夜のリビング。


 テーブルも椅子もちゃんと備え付けられているというのに、俺は床の上に、もとい湯上りパジャマ姿の従妹の前に正座していた。

 顔が真っ赤になっているのは怒りによるものなのか恥ずかしさからくるものなのか。盟音は俺をまっすぐ睨み下しながらも、もごもごともどかしそうに口を動かしている。起こったことが起こったことなだけに、なんと切り出していいか分からないのだろう。

 俺が正座させられてから、リビングの壁掛時計の秒針は、すでに120回カチコチ言っている。


「……来ちゃダメ、って言ったよね、私」


 そんな正論を言われたら返す言葉もない。


 いくら動揺していたとはいえ、風呂場から声が聞こえてきてるという時点で、その可能性に思い至るべきだった。

 盟音は恥ずかしそうに俯いて、怒るというよりは、これから告白でもするんじゃないかというくらいモジモジと、せわしなく指と指を絡めている。口調も、風邪を引いてる時や動揺してる時限定の、可愛いものになっている。

 この間、いつものキチガイハイテンションモードの盟音はどこへ行っているのだろうか。従兄が連れてきた女子にいきなりヒャッハー女だァ!とか言って飛びかかる最終兵器世紀末従妹は、もはや別人格なんだろうか。

 というか正直なところ、従兄に向かってBカップだなんだと、テンション高く誇らしげに自慢していたようなヤツに、事故で裸を見てしまったからって怒られる筋合いはないと思うわけだが。いかがでしょうか妹持ちの皆様。


 ……逆ギレしてどうするんだ俺は。


 とりあえず謝っておくべきだろう。わざと見たわけではないのでそのへんの釈明は必要だろうが、『ゲームの世界で俺のスマホがどうのこうの』なんてデンパな説明をするわけにもいかないな。

 適当に濁すしかないか。


「ちょっと悪い夢見ちゃってさ。それで起きたらお前が悲鳴上げたのが聞こえて、心配になって……」

「…………そ、そんなこと言われたら怒りにくいな……」


 盟音は頬を赤らめて、前髪を指でくりくりいじった。何故か、ちょっと笑っているような気がする。


 可愛い。


 よし。この調子でご機嫌を取り続けて、今日のうちに機嫌を直してもらうぞ。


「……でもそのあと、私の体ジロジロ見て『成長の余地がある』とか言ってなかった?」


 そんな正論を言われたら返す言葉どころか合わせる顔がない。あさっての方向を向いた。

 言い訳も何もない。

 弁解も何もない。

 全て事実なので、船越〇一郎に犯行を暴かれた犯人のごとく、黄昏てみる。


「…………覗きたかったわけじゃないけどさ。いざ見れるチャンスになったら、やっぱり見ちゃうよね」

「変態」

「ヴェェッ」


 盟音に心底蔑んだような目で見下されて、悲しいような悦ばしいような。男は状況次第でMにでもSにでもなれるといういつの日か斗月が語った持論は案外間違っていないのかもしれん。

 吐血しながら、正座の体勢から土下座するように前へと倒れ込んだ。

 ふんっ、と、半ば溜息を吐くように吐き捨てて、盟音はいつものテンションに戻った。


「ま、私のセクスィィーバァリィィーを見たいって気持ちも分からなくはないけど!全世界が欲しがるわがままバァリィィーだからね!しょうがないね!今回だけは許してあげちゃう!ィヤーグマイ!」


 おお、なんと寛容なんだ。

 ありがとう盟音様。なんで琉球語で『ひきこもり』って言ったのか分からないけどありがとう。

 俺に拝まれて機嫌を良くしたと見える盟音は、ふふーんっと得意げに頷くと、俺に下がってよしと勅令を出して、隣接する台所の冷蔵庫にスキップしていった。

 やれやれ、どうにか機嫌を直してくれたみたいだな。

 さて、急いでいてゲームの世界にアイツらを残して出てきてしまったこともあるし、俺も自分の部屋に戻るか。


 と、足を浮かした時だった。


「……お兄ちゃん」


 盟音が呼んだ。

 まだ何かあるってのか?


「なんだ?」

「……………牛乳の横に置いてた、『プリンの〇まご』は?」


 ギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクギクゥゥーーッ!!


 足がしびれていたわけでもないのに、立ち上がる動作がキャンセルされ、その場に座り込む。


 ……え、プリ〇のたまご?

 モロ〇フのやつ?


 結論だけ、言う。


 食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた俺は食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた食べた俺は食べたッ……!

 冷蔵庫を開けるべきじゃなかった!プリンがあったからといってなんとなくで食うべきじゃなかった!タイムトラベルはうまくいかなかった何が原因なの!IBN5100は手に入れられなかった!!


 全身から汗が噴き出した。

 返す言葉がないどころか合わせる顔がないどころか、もう色々とどうしようもない。

 あのプリンはおいしかった。口に運んだ瞬間、下の上でふわっととろけて、上から下から中から、まろやかな甘さが溢れ出してくるような、天使の食感だった。


 掠れた声が出る。

 せめて。言い訳はできないにしても、すっとぼけておこう。


「え………あ、あれって……オカンが買ってきたヤツじゃあ…………?」

「…………」


 裸を見られても泣かなかった盟音が、初めて俺の前で泣いた。



「ぐぐぐ………やはり……モ〇ゾフまで行って買ってあげるしかないか……」


 あのあと、涙を零しながらダッシュで自分の部屋まで戻り鍵をかけてしまった盟音に、ドア越しに何度も語りかけたが、何の返答も得られなかった。

 この件に関しては、たしかに完全に俺が悪いが、盟音、お前にとってプリンを食われることは裸を見られることより辛いことなのか。お兄ちゃんはお前の貞操観念が心配です。

 ひどく疲れた気分になって、部屋に戻る。

 ちなみに盟音の部屋も俺の部屋も、家の2階だ。盟音がうちに居候に来るまでは完全にいらない子扱いだった奥の子供部屋は、今では華やかな女子中学生のプライベートルームとなっている。

 自分の部屋のドアノブを回し、押して、中に入る。そこで、異変に気がついた。

 開きっぱなしになっているノートパソコンのキーボード面の上に、何か見覚えのないモノが乗っている。

 近づいて手に取ってみると、それはガラケーだった。いや、ガラケーというか、昔の友達が持ってたトレジャーガウ〇トみたいな、本物っぽくない、おもちゃみたいな携帯。

 だが、犯人が俺の家を特定している疑念がある以上、この携帯が犯人の仕掛けた罠である可能性も否定できない。一度その身を脅かされた気になると、全てが疑わしく見えてくる。


「…………そうだ、スマホは!?」


 ゲームの世界に突然現れた、俺のものと全く同じスマートフォンは、『通話履歴』というアプリ以外全て消されたものだった。2つのものを同じ、もしくはコピーしたとするならば、もともと現実世界にある俺のスマートフォンからもデータが消え失せている可能性がある。

 目を走らせるとすぐに見つけた。机の上に広げたまま置かれた携帯ゲーム機ポーチの下敷きになってしまっている。

 血眼になって確認したが、ざっと見たところ、アプリやデータは何も消えていなかった。


 ひとまずホッとした。


 ブルルルルルルルッ!!ブルルルルルルルッ!!


「うぉわっ!?」


 ホッとさせてくれよ!今日だけで何回心臓を潰させれば気が済むんだよ!


 どうやらバイブしているのは俺のスマホではなく、パソコンの上に置いてあったガラケーのようだ。

 ……これに着信機能があったことにも驚く。

 犯人の罠かもしれないが……出て大丈夫なんだろうか?

 しかしそんな懸念は、現実世界でもゲームの世界でもなんやかんや色々とあった今日1日の疲労感から、『まあいいか』で済まされてしまった。

 昔懐かしい着信キーを押下して、耳に当てる。


「……誰だ?」

『あ、やっと出てくれた……。はろー、ジェイペグだよ』

「はぁ…………?」


 ジェイペグ?ジェイペグって、あいつ?あの虎?

 いくら頼りになるパートナーとはいえ、いくら何でもできる虎だとはいえ、アイツはゲームの世界の住人だ。現実世界にいる俺に電話を寄越してくるようなことできるのか?


『そのリアクション、色々と分からないことがあるみたいだね』

「…………そりゃあもう」

『今、怜斗が使ってるその電話のことも、なんでゲーム世界にいるボクが現実世界の怜斗に電話をかけることができてるかっていうことも、全部説明するからさ。とりあえず、もう一回ログインしてきてよ』

「夏矢ちゃんたちはまだいるのか?」

『うん。怜斗が一目散に帰っていっちゃうから、困ってたよ』

「……了解、じゃあとっととそっちに行くよ」


 通話終了。人類初の『虎と電話で会話した男』、俺。

 さて、この携帯電話モドキにどんな秘密が隠されているのか……。


 ベッドに腰掛けて、鍵を脳に差し込んだ。



「やっと戻ってきたわね……クソが」

「…………」


 家の中大爆走、従妹からのお説教、従妹大激怒&大号泣という試練を乗り越えてゲームの世界に戻ってきた俺を待ち受けていたのは、夏矢ちゃんからの罵声だった。

 今日はもう言い返す気力が残っていないと言っとろーが。


「ホンマ素直じゃないなぁ夏矢ちゃん」

「怜斗と電話が繋がるまではめちゃくちゃ心配してたくせにな」

「そこ2人黙れ」

『ウィッス』


 …………それはたしかに嬉しいけれども。どうにも、しんどさやだるさが感情の変化を上回って、リアクションしづらい。今日はもう早いとこ寝かせてくれ……。

 頭を掻きながら、ジェイペグたちに向き直る。


「それで?俺のスマホのこととか、説明してくれるんだよな?」

「うん。でもその前に、もう一度スマホを出してくれるかな?」


 一度現実世界に戻ったが、ポケットの中のスマートフォンは変わらずあった。

 出して起動させると、現実世界に戻ってくる前には『着信履歴』しかアプリの無かったホーム画面には、もうひとつアプリが追加されていた。


「…………『電話』か」


 着信履歴機能があるのに電話機能がないのはおかしな話だとは思っていたが。


「そう。だけど、ただの電話じゃないんだ」

「ジェイペグがお主に電話をかけたことに驚いたじゃろ?」


 まさか、この電話は……。


 『ゲームの世界に行ける鍵』である意識の鍵と並ぶ不思議アイテム……?


「現実世界からゲームの世界へ、ゲームの世界から現実世界へ、電話をかけることができる……ただし、かけられる相手は限定されているがな」

「俺の部屋に置かれていた、あのおもちゃみたいなガラケーだな?」


 ナウドはこくりと頷いた。


「まぁ、あのガラケーだけが唯一の対応機種ってワケじゃないけどね。さっき怜斗にかかってきた、誰かさんからの電話みたいにね」


 データ現実化実験とか意識の鍵とか、わけの分からんことばっかり言ってたアレか。

 たしかに、ゲーム世界のスマホへと電話をかけられるのがあのガラケーだけなのだとしたら、犯人は俺に電話をかけたあと、俺の部屋に侵入してガラケーを置いたことになる。

 ……あまり考えたくないことではあった。


「そういえば、なんかやたら焦ってたけど、結局何話してたん?」


 そういや、こいつらには電話の内容を伝えていなかったな。このタイミングで話しておいたほうがいいだろう。

 けっこううろ覚えではあるが、相手からは一方的にいくつかの言葉を言われただけで、ほとんど沈黙していただけだった。相手が喋ったそれらのワードと、通話している時に感じたことを、手短に話した。


「俺たちが使っている鍵のことを、『意識の鍵』って言ったのか」

「意識の鍵って名称は、たしか、最初にキーピーたちから教えてもらったものよね」

「それにしても、データ現実化実験、って何なんやろな?」

「……語感からしてヤバそうではあるわな」


 どちらも意味深なワードで、考察しようと思えば科学的思考からポエム的思考から厨二的思考まで妄想は止まらないが、それは今考えても仕方のないことだろう。


「それは置いといて……ジェイペグ、お前4足歩行のくせに、俺にどうやって電話かけたんだ?ていうかそもそも、スマホは俺のポケットに入ってたのに、どうやって電話かけたんだ?」

「それはボク自身がスマホだからだよ」


 ………………。


「……それはアレか?俺がガン〇ムだ!みたいな理論か?」

「ちがうよ!……そもそも、キミが持ってるスマホもボクも、ゲームの中にある『物体』という意味では同質のものだろ?」

「じゃあ何か?オークオブザデッドにこのスマホと同じプログラムを書き込めば、現実世界からオークオブザデッドに電話をかけられると?」

「もちろん」

『マジで!?』


 右脳最大のトラウマが疼き、4人全員が膝をついて頭を抱えた。

 おそるべし現代文明。

 スティーブジョ〇ズさん、聞こえますか。あなたが世に送り出したスマートフォンは、とうとうゾンビ豚とも通話できるようになりましたよ。


「まぁつまり、その2台の電話を使えば、現実世界・ゲーム世界間の通話ができるようになるって感じ」

「へぇ…………。なぁなぁフーロ、どんな使い道があると思う?」

「正直ないっしょ」

「ちょ!?」

「ワシらもこれについてはよう知らんし、ついさっき管理人……マスターから説明をダウンロードしたばっかりじゃしのう。まぁ、適当に使いなんし」


 管理人がジェイペグやキーピーたちにこれの説明をした……?


 やはり、その管理人が犯人、あるいは黒幕のような人間だったりするのだろうか。そして管理人というからにはもちろん、カラット本社と何らかの関わりがある。下手したら、重要な役職についている可能性だってある。

 もしそうならば、一介の高校生である俺たちが真実を暴こうとしたところで、全ての面で勝てるわけがない、ってことになってしまうのだが……。


 やれやれ、今日は悪いニュースが多すぎる気がする。


「じゃあさ、意識の鍵だけ名前があるのにこっちの携帯だけ『スマホ』呼びじゃアレだしさ。せっかくだからこの携帯にも名前つけようぜ!」


 名前……名前、か。


「ワク〇クメールフォンとかいいんじゃね!?」

「思いっきりあの出会い系だろうが!却下だ却下、帰れこの出会い厨メガネ!」

「コ〇ゾラ携帯」

「どうも、さっきからないてばかりです、ウワーン。帰れスイーツ(笑)」

「河底撈魚スマホ」

「河底撈魚ってルールが一番嫌いなので却下」

「なにそれ!?完全に私怨やんな!?」


 ったくコイツら、ここぞとばかりにいらん個性を出してきやがって……。

 それに俺の中で、この電話をこう呼びたいというのは決定してしまっていたわけであり。


「じゃあ怜斗はなんかアイデアあるのかよ?」


 あのとき感じた寒気が蘇る。


 もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろにいるの。


 初めてこのスマホに電話がかかってきたときのあの恐怖感から、俺のなかでもうこれは、そういう呪いアイテムな括りに入ってしまっているのだ。

 だからこれは。


「『メリー電話』だ」


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