要領を得ない会話劇 1
「怜斗、なんでお前、あんなに物分かりいいんだよ?」
「どういう意味だ?」
「普通さ、『この蝿は津森の精神から作られてて……』なんてデンパな話、そう簡単に信じられるか?」
「現にそうだっただろ。蝿も津森さんもそれを認めた」
「……だけど、それにしたって」
「『お前何か知ってるんじゃないのか』……そう言いたいのか?」
「…………疑ってるわけじゃないんだけどよ」
「分かってるさ。みんなからすれば怪しすぎるほど、俺は物分かりがいいだろうな」
「……怜斗、何か知ってるなら隠さず言ってくれねーか?」
「…………たしかに、『何か』知ってる。だけど、言えない」
「……言わないと、このままお前を疑い続けることになるかもしれない。って言ってもかよ?」
「言わないんじゃない、言えないんだ」
「違うのか?」
「言えるなら、とっくに相談してるさ。……人は誰しも、可哀想な目で見られたくないって思うだろ?」
「それを言ったら、俺がお前を可哀想がるってか?」
「俺をじゃない!あいつのことだから言えないんだよ!」
「……なんとなくは分かった。詳細は教えなくてくれていい」
「このことは忘れてくれ。詳細を知らなくても、あいつに何かがあるって、そういう目で見られたら意味がない」
「そんな目じゃ見ねーよ。お前より俺のが分かってるさ、可哀想な目で見られたくないってコトバの意味は」
「……ああ、悪い」
「とにかく、やけに物分かりのいい理由が知れてよかった。あとひとつ聞いておきたいことがあるんだけどさ」
「この際だ、言えることなら全て、お前には話しておくよ」
「お前は、事件の犯人が誰か、だいたいの見当がついてるのか?」
「………………心当たりなら」