津森論子失踪事件 その5
触れれば即死の血の海、その上にいる斗月を助け出す方法。
真っ先に考えついたが「さすがにこれはないだろ」と保留していたこのアイデアだが、他に何も思いつかない以上、これに挑戦するしかあるまい……。
俺はメニューからアイテムを開くと、アイテムとアイテムを組み合わせて新しいアイテムを生み出すことができる『合成』に取り掛かった。
材料その1、散華の騎士からドロップした『クローバーの大盾』。
材料その2、ここに来る道中で拾っていたらしい『脱出ロープ』。
それらを組み合わせ、出来上がったモノは……。
ジェイペグが首を傾げた。
「…………ソリ?」
「そう。ソリすぎてソリになった!」
盾が乗る部分、そして紐が手綱。
足場が安定しないという部分に目を瞑れば、立派なソリの完成だ。
「ジェイペグ、前に読んだマニュアルに書いてあったが……パートナーは攻撃ダメージを受けないんだな?」
「……なんだかものすごく嫌な予感が」
「キミに是非とも引いてもらいたいソリがあるんだ」
「やっぱり……」
「すまん、これぐらいしか思いつかなかったんだよ。悪いけど頼むぜ」
「はいはい、しっかり乗っててよ!」
俺が盾の上に乗り、手綱を持つと、ジェイペグはソリの紐をくわえて走り出した。
触れるだけで即死というえげつない効果を持つ絶望の血潮の上を、虎の引くソリが疾走する。真っ赤な飛沫をあげて、まるで水上スキーみたいに。
「はぁ!?何やってんの怜斗!?」
《小賢しい!吹き飛ばしてくれるッ!!》
「やべっ……夏矢ちゃん、蝿を足止めしといて!」
「どうやって!?」
「どうにかして!」
「死ね!!」
「あとで何回殺してもいいから、とりあえず今は俺の命を守ってください!」
「……あら。そういうことなら、やってあげるわ」
「え?」
《フン、おもちゃの銃でなにができる!》
蝿は夏矢ちゃんの言葉などまるで無視し、血の海を渡る俺に向かって飛んできた。
夏矢ちゃんはその『おもちゃの銃』を構えると、不敵に笑う。
「怜斗なんかよりこっちを気にしたほうがいいんじゃない?おもちゃの銃だけど、当たったらあんた、一発で死ぬわよ?」
《なに?》
そう言って蝿は、一瞬。顔を夏矢ちゃんの方へ向けた。
「ふふっ、バーカ!」
《なにッ……!?》
蝿の目に止まったのは、さっきと全く変わらない、ただのおもちゃの銃。
もちろん弾に即死効果が付与されているとかそんなことは一切なく、さっきまでとなんにも変わらない、何の変哲もない、たいした殺傷力もない、おもちゃの銃。
子供のBB弾と同じで、化物に当てたところで大したダメージにはならない。
子供のBB弾と同じで、目に入ると危ない。
夏矢ちゃんの口車にまんまと乗ってしまった蝿は、夏矢ちゃんの方を向いた瞬間にその複眼を弾丸に打ち抜かれてしまった。
蝿が、吐きそうなほどに甲高い声……というか、音で、叫ぶ。
複眼から黒色の液体が、涙の代わりに溢れてきている。
《ウゥアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァアアアアアアアアアッ!?》
「怜斗!いまのうちに!」
「ああ、ジェイペグ急げ!走る姿美しいぞ!」
「じゅうぶん全力で自慢の快足で飛ばしてるよ!」
戦闘不能状態の斗月が倒れているところを通過する瞬間に、斗月のブレザーの首部分に木刀を引っ掛け、血が広がっている地帯の外側へ向けて思い切り投げた。
人間の重さ的にそんなの無理だろとも思うが、それはそこ。ゲームの世界は、自分ができるだろと思ったことはだいたいできます。作品によってマ〇オのジャンプ力が違ったりする、ゲーム特有のご都合主義のアレです。
蝿の目から出てきた黒いヘドロのようなものが血さえも上から覆い尽くしたとき、やっとソリは絶望の血潮地帯を脱した。ちらりと後方確認すると、蝿はまだ自らの目を抑えて呻いていた。このぶんだとすぐには回復しないだろう。
俺はすぐに、さっき投げ飛ばした斗月のもとに駆け寄り、HP半分で戦闘不能状態から復活することができるアイテム・『半月の十字架』を使ってやった。
「んぐぐぐぐ……やめろぉぉ……そんな目で俺を見るなぁぁ……」
「斗月、おい!なに寝ぼけてんだよ!」
「ん、え、おっ!?……あれ、怜斗。俺なにしてたんだっけ。つか、ここどこ?」
「しっかりしろよ!津森さんを助けに来たんだろーが!」
「あー、それで変な血にやられて……おっけおっけ、思い出した」
「大丈夫かよ……?」
「おう。なんか戦闘不能になってる間、変なユメ見てたみたいで……」
変なユメ…………?
その変なユメも含めて、蝿の能力なんだろうか?
《フフ…………》
背筋が凍った。
今まで取り乱していたのが嘘のような、蝿の笑い声。
このダンジョンで、下階にいた俺たちに向かって語りかけていたときのような、気味の悪い余裕ぶった声。
振り返ると、蝿の体は、眼球から溢れ出てくる液体で真っ黒に染まっていた。
《ククッ……全ては無駄であり、無意味であり、感動も希望も無に帰す……》
「うわぁぁぁ!?何だよアレ!?」
「真っ黒……ていうか、黒光りしてる虫とかもう、ゴキ……」
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
「……アクションゲームのボスにありがちな、『第二形態』ってワケか」
それにしても、落ち着いたり取り乱したり、情緒不安定なボスだな……。なんていうか、敵のスタンスがブレすぎてて、こっちの感情までもが揺さぶられる。
この蝿は津森さんの一部と言っていたが、この蝿の姿が変わったということは津森さんの身にもなにか変化があったのだろうか?
絶望の血潮を挟んだ対岸にいる津森さんの姿を確認するが、特に変わった様子はない。さっきまでと同じように、自分の身を守る術がないので、ビクビクと震えてうずくまっているだけだ。
「第二形態にパワーアップしたボスって大概厄介だからな……2人とも、速攻で決めるぞ!」
「了解!『ボイルリング』!」
《無駄だ》
斗月のボイルリングが蝿に炸裂するが、ダメージは『0無駄』。
「なっ…………!?」
《お前らの言葉で言う『チート』だ。さっきまでも使っていたがそれとは格が違う、最大限の不正チート。……『無敵』》
「………………………………………………………………は?」
《お前らの攻撃は一切通らない。どんな策を講じようが、どんな強力なスキルを使おうが、無駄。無駄無駄無駄、無駄》
「は…………?」
「そんなの……って…………アリ?」
「………………」
アリかナシかで言うなら、断然ナシ。
絶望的すぎる。
俺の脳内で可能な限りのポジティブ思考をして考えついた、唯一の蝿に勝つ方法はといえば、『こちらもチートを使う』。
しかしそれはさっき、キーピーにハッキリ無理だと言われた。
『無敵』という言葉が、自分の中の足掻く希望を、全て『無駄』に塗り替える。
戦うのが無理なら、津森さんを連れて現実世界に戻る方法を探せば……いや、今やっと気付いた。
俺たちは完全に『詰んでいる』。
現に、さっきから俺たちは一歩も動けていない。どこかで、『少しでも妙な動きを見せれば蝿に叩きのめされる』ことが分かってしまっているからだ。
戦うコマンドも、逃げるコマンドも、アイテムコマンドも、そこにはない。ただただ傍観と待機、そして防御コマンド。
戦闘不能になるまで終わらない敵の一方的な攻撃ターンに対し、備えることと待つことだけしか許されていないのだ。
……こればっかりはいくら考えても無駄だ。思考停止的に、俺は静かにジェイペグを呼び出した。
「ジェイペグ……ちょっと頼みがある」
「こ、こんなときに何!?なにあのスキル、意味分かんないよ!」
「静かに。お前らにしかできない反則があるはずだろ?」
「………………!分かった、それまで場を繋いでて!」
この戦闘で全滅したとき、果たして俺たちはどうなるのか……?通常は全滅しても、自動的に現実世界に戻らされるだけだとジェイペグは言っていたけど……津森さんが肉体ごとゲームの中に入っている以上、全滅したら俺たちまで……ということが、ないとは限らない。
そして、今度は、そうしてゲームの世界に引きずり込まれた俺たちを助けるすべを持っている人間は、誰もいない。
そんな絶望的な結末はまっぴらごめんだ。
そんな結末を避けるため、最後に、唯一作り出した新たな選択肢は……。
《無駄だったのだ、無意味だったのだ。ここまでの善戦も、危険を冒して仲間を助けたことも、屁理屈を津森論子に押し付けたのも、何もかもが無駄だったのだ。何もかもが無意味だったのだ》
「……頼むから見逃してくれ」
『媚びる』だった。
「俺たちには何も、お前と戦う必要なんてない。降伏に応じて攻撃をやめてくれるってんなら武器も捨てる」
「怜斗!お前何言ってんだよ!?」
「俺らは元々、津森さんを助けにここに来たんだ。津森さんを無事に現実世界へ戻せるなら、それ以上望むことは何もない。俺らは連続失踪事件なんて知らなかったし、チートして好き放題やる蝿もいなかったし、津森さんは何か知らんが神隠しにあっててすぐに戻ってきた。……それでいい」
《…………それで?》
「じゃあアレだ。お前の言う『世界の全部が無駄』ってのも認める。認めます」
《ほう》
蝿は機嫌よさげに笑った。
「俺は自分の無力さに……人の無力さに気付きました。いくら頑張っても、いくら努力しても無駄。天才チートには勝てないと。
世の中には才能という概念があり、そんなのを努力で越えようなんて甚だ無理な話であると。全て、認めます」
《やっと気付いたか。よかったな、無駄の塊だったお前にひとつ、価値が芽生えた》
「『無知の知』……いえ、この場合は『無力の知』といったところでしょうか」
ギリシアの哲学者ソクラテスが人間で一番神に近い存在である根拠、それが『無知の知』である。
結局人間は何も知らず、何事に対しても本質を説明できない。
ソクラテスはそのことを知り、自覚し、なおかつそれを克服するための努力を欠かさなかった。その点こそが他の哲学者、ひいては他の人間全てよりも優れており、その1点だけの差こそ、彼が神に最も近いと言われた所以である。
無力の知。
全ては無駄であり、それを認め、世間への望みを捨てる。
……とまあ、なんかよく分からないけど、とりあえず蝿にヘコヘコしておこう。
プライドなんかより命が大事。
《全ては無駄である、それを認め、これからの人生を『才能を持たない負け組の道』として、常に絶望して生きると誓え》
「誓いましょう」
津森さんの一部、『絶望の蝿』。
努力などといったものに望みを抱くのをやめるべきだ、才能がなければ無駄で無意味で無価値なんだ、という気持ち。
その気持ちは津森さんの中でどれだけ強く燻り、彼女の心を惑わせてきたのだろうか。そんな気持ちに支配された状態で、それでも努力を続けようとして、彼女は何かスイッチが切れてしまわなかっただろうか。
自分自身で無駄だ無意味だと感じながらも、それでも努力を続ける津森さんは。
この蝿を克服しなくても満足なのだろうか?
この蝿をそのまま引きずりながら生きていくことは、それは――
「津森さん」
「………………!?」
まだ膝を抱えてうずくまっている津森さんが、俺に名前を呼ばれて、肩をビクンと震わせた。
「この蝿は元々津森さんの一部だ。そして今から俺は、この蝿の考え方を全面的に肯定して、さっきお前に言ったことを全部否定する」
「門衛くんが……さっき言ったこと?」
「そうだ」
「それって……」
「努力なんて無意味だ。お前が麻雀のためにしたことなんて全部無意味だった」
「っ…………!!」
「怜斗、お前いい加減にしろよ!!」
「待って斗月」
「世葉お前……このままにしといていいってのか!?」
「怜斗はそんな素直なヤツじゃない。そんな簡単に『逃げる』を選ぶようなゲーマーじゃない」
「…………様子見てろ、ってか」
「そ」
一歩一歩、津森さんに近づいていく。
道化じみた笑みで演説していた時の蝿みたく、大仰に、憎たらしく、両腕を広げたりなんかして、人とか世間とか色々甘く見てそうな笑い声で。
「ぜーんぶ無駄。ネットで対戦して腕を磨いてたんだかなんだか知らねぇけど、ぜんぶ無駄。才能って伸びしろがないのに、何やったって無駄。経験値0をいくら重ねても0。無駄」
「………………!!」
「大人しく麻雀なんか諦めて、ピアノやればいいじゃん。その方がみんなから尊敬されるぜ?麻雀なんて、ギャンブル扱いして禁止する高校もいっぱいあるくらいだ。どんだけ上手くなろうが、しょせん偏見で見られてけなされて嫌な思いして終わり。無駄、無駄、無駄」
「…………何言ってんの………………?」
「怒ってるか?だけどそれも全部無駄なわけ」
「………………………………………………」
「そして当然……お前のお友達も、お前のことを心配してるなんて大嘘。友情も全部大嘘。全部、無駄なんだよ」
「……………ッ!!」
津森さんは確実に怒っている。
あまりの怒りに……蝿への恐怖心すらも忘れて、うずくまるのをやめて立ち上がってくるほどに。
「悔しいんなら……何故、蝿が同じようなことを言った時にも怒らなかった?」
「…………………………それは、混乱してたからで」
「言い訳だな」
「……は?」
「正直に言えよ。友情だかなんだか言っといて、全部、自分の『麻雀』が上手くいかない不満を、群れてごまかしてるだけだろ?」
「………………っ!?」
なんで会って数日の男にこんな偉そうなことを言われなくちゃいけないんだろうとか思ってるんだろうな。
津森さんの怒りは、かなり溜まってきていた。
握った拳がプルプル震えてる。
蝿も、そんな津森さんの様子を満足げに見ている。
……もう少しか。
「ほら、自分の口で言ってみろよ。『チー子もポン子も無駄だ』ってな」
「うるさい!!」
首がぐりんと、90度回転して横を向く。
津森さんはしばらく自分の手のひらと俺を交互に見つめ、怒りの煮えたぎった真っ赤な顔から一転、もはや死人というレベルの青い顔をして頭を下げた。
「あっ……ご、ごめん!」
「……へぇ、意外と強いビンタ」
「……門衛くん……?」
「お前の話ばっかりしてもアレだし、俺の話でもしようか」
なんか、こういう話は中途半端に恥ずかしがったら、そっちのがダサい。
道化のテンションは継続したまま、俺は『俺の話』を語り始めた。
「俺はIQ150だ」
「……あの、門衛くん、もしかしてさっき殴ったりしたせいで頭が……」
「おかしくなってねーよ!」
「あはは……」
「まぁ自慢でもなんでもなく、マジで150あるそうだ。その気になってちゃんと勉強すりゃあ、ハーバーなんちゃら大とかにだって入れるらしい。大手塾の偉いさんが言ってたことだから、お世辞使われてるかもしれないけど。なんだったら書類まである。……俺はテスト受けただけで、手続きとか一切関わってないから、それが正式なものなのかはよく分からんけど」
「そ、それであんな難しい数学の問題解けたんや。……あれ?でも、そんなに頭いいのに、なんでこんな……中の上くらいのランクでしかない、輪通学園に……?」
「お前らみたいな向上心ってもんがないからだ」
「…………!」
そうだ。
俺は、蝿の一部の言葉に対して、本気で共感していた。
「やりたいこととか夢がない。すごい大学やキャリアを取得できたとしても、それを活用して得るべき目標や夢、成し遂げたいこと、熱中できることがない。だからなにもかも中途半端でうまくいかないし、なんていうか……がんばれない」
「………それは」
「分かってるよ。言い訳だ。やりたいことを探そうともしないナマケモノの言い訳だよ。……だけど、いったいどのくらいの人間が一生のうちに『本当にやりたいこと』なんて漠然としたモノを見つけられるんだ?」
「………………」
さらに言い訳を重ねる。
言い訳を連ねる『自分』に嫌気が差している『ジブン』も、少なからず俺の中にいるのだが、じゃあそれの何がいけないのか、と問われれば、答えることができない。
……自分をコントロールすることは、何よりも難しい。これもただの言い訳に過ぎないのかもしれないんだろうけど。
「津森さんは、ピアノが上手くて、かつ麻雀にも出会えたから、『2つの道』で迷っている。だけど、俺みたいな奴は、夢も目標も見つけられない奴は、『最後まで歩ききれるかすら分からない不特定多数の道』で迷わなくちゃいけないんだ」
「…………」
「そんな俺みたいなクズたちは、常に、夢が無い、目標がないって、日々絶望してるんだよ。……だけど、お前みたいに、夢を見つけても絶望してるなんて、本当にこの世って救いようがないよな」
「そんな……でも…………」
「そうだ。お前は俺みたいなクズを見下して生きないといけない。俺が嫉妬に駆られてお前を罵倒しても、それを無視して靴底で踏みつけて高笑いするような、屈強でふてぶてしい信念を持って夢を実現させなければならない」
高校球児が憎かった。
オリンピックが憎かった。
宇宙飛行士が憎かった。
ユーチューバーが憎かった。
笑って、泣いて、青春してる奴なんて全員死ねばいいと思ってた。
いや、今だって思ってる。
なにが麻雀だ、なにがピアノだ。
充実してる人間はみんな死ね。
「お前の立派な夢をひがんで、俺たちクズは『無駄』『無駄』って言う。そんな声を無視して歩かなければ、いつかそのネガティブな心に染められて、足を止めてしまうだろう。そしたらお前も晴れて夢を持たないクズの仲間入りだ」
「……クズって、何もそこまで」
「情けをかけるな。夢を持ってない奴はどんなに外面よくしてても、心の内面ではお前をひどく憎んでる。トロフィーやメダルを持ってニコニコしてる奴を見ただけで軽い殺意が湧いてくるほど、理不尽に憎んでる」
「…………門衛くんも?」
「津森さんに対してはそういう感情はない。悩んでることを知ってまで憎むほど畜生じゃないさ。……だけど、お前が悩んでることなんか知らない人間は、みんな、お前を妬んで憎んでいる。
成功者のアラをさがしてここぞとばかりに叩き上げるのは、俺みたいなクズにはめちゃくちゃよく効く麻薬なんだよ。だけど叩かれた側が反抗すると、今度は被害者ぶって逃げ隠れる。たまに匿名という防空壕から顔を出して石を投げてくる。成功者とか芸能人とかは、ストレスをぶつける『的』なんだよ。
将来的には、お前もな」
「………………………………」
「だから」
俺は津森さんの背を押した。
さっきから何故だか、妨害もせずに俺の話を聞いてわなわなと震えている蝿に向かって押した。
「せめて、『自分の中のクズ』ぐらいには反論してやろうぜ」