夢の中で
闇の中を、1人歩いていた。
今、自分は何処にいるのか。どうしてここにいるのか。
――私は、全部知っている。
これは、私の、夢――。
何も聞こえない。何も見えない。
私はこの世界に独りぼっち。
出ることすら、不可能だった。
いつからだろう。こうなってしまったのは。
もう、時間の感覚すらない――
ふと、向こうに小さな光が見えた。
ほんの少しの灯りでも、私はその光をとても暖かく感じた。
その光へ手を伸ばしながら、私は必死に追いかける。
「待って…!」
刹那の瞬間、光は眩しい光を放ち、闇の世界を消しさる。私は、その光に、包まれたまま、ふっと意識を手放した。
目が覚めると、そこは深い海の中。
苦しい訳じゃない。息もできる。ゆらゆらと、水の中を漂う感覚も、体全体が感じる。
水面には、太陽の光が海の中まで漏れていた。
キラキラと輝いてさえ見えるその水面に、私はそっと手を伸ばした。
あぁ。いつになったら目覚めるのですか。
暗い世界を、ひたすらにさ迷い、光が見えたと思えば、またそこは暗い世界。
この世界は、私の夢なのに、操る事なんて出来はしない。まるで、別の世界のようだ。
――あの水面の上にはきっと、綺麗な青空が広がっているのだろう。
上に上がろうとも、体は言う事を聞かない。ただ、波に押されて、ゆらゆら漂うだけ。
――あぁ、どのくらい海の中にいるのだろう。
もう何時間?いや、何百年?
このまま、気がおかしくなってしまいそうだ。
――でも、狂ってしまったほうが、楽かもしれない――
そんな事を考えながら、目を瞑る。
その時、耳の奥から、囁くような声が聞こえた。
――この優しい声はきっと、愛しいあなたの声――
声の主は、私の名前を仕切りに呼んでいた。
聞きなれた、優しい、声。
水面から、1つの手が伸びた。
その手は、私を助けてくれる様な、そんな気がした。
――私は、その手をそっと掴んだ。
その瞬間。
私の体はぐっと引き上げられ、あっさりと、外へ飛び出してしまった。
そこには、想像していたような、青空が無数に広がる、美しい世界――
私は、海の上に立ち尽くす。
目の前で微笑む、あなたの姿。
――あぁ、やっと。やっと会えた。
あなたの手に引かれて、海の上を歩き続けた。
もう覚めることのない夢なら、このまま、あなたと一緒に―――。
読んで頂きありがとうございます。
シリアスな感じのが書きたくて、勢いで書きました。