プロローグ
「その猫を捕らえろ!」
薄暗い暗闇の中で突如響き渡る声。
黒い鎧を武装した騎士達が一匹の白い猫を追いかけている。
とてもすばしっこく、騎士と猫の間隔はみるみる広がっていく。
「そこまでだ!」
だが猫は、前方から来た人間―――他の騎士達とは違って、漆黒のマントを身に着けている―――を確認すると、小さく身震いした。
後ろからは他の騎士達も追いついてきて、八方塞だった。
「全く、てこずらせやがって・・・だが、もう逃がさないぞ」
もうどこにも逃げ場はない状況であった。
マントの騎士の手が猫にどんどん近づいていく。
そのとき、猫の首にかかっていた紫色の宝石が光りだした。
「――――っ!」
マントの騎士は思わず目を瞬いた。
暗闇の中で輝いた光は、その場の人間の目を眩ませるには十分過ぎるほど明るかった。
やがて光が消え、辺りが再び暗闇に包まれると、猫は既にその場にいなかった。
猫が目の前から消えたことを理解したマントの騎士は、悔しがるかのように靴の底を地面に叩きつけると、怒りの表情を浮かべた。
「くそっ!あの猫がっ!」
マントの騎士の声が空をむなしくよぎって、そして消えた。
猫は何もない空間を、ただ風の流れのように身をまかせることしかできず、わずかな意識の中で何かを見た。
それは、一つの学校だった。
猫はそれを見ると激しい頭痛を起こし始め、辛うじて保っていた意識がやがて飛んだ。




