廃部の危機も日常的
「最近ね~娘がさぁ~」
「校長、もうその話聞きあきましたよ」
「そう言わんずに~」
「わかりましたよ。いくらでも言ってください」
「娘が笑わないんだよ」
「皆、聞くんや!!!」
「断る!」
「いや、断らせん!」
「朝から二人とも元気だな」
土曜日、学校の休みに漫才研究部の部員は集められていた。十夜はいつも通りテンションが低かった。なぜ、ここに来てしまったのだろうかと十夜は昨日のことを思い出す。
昨日の夜の話だ。
突然知らないメールアドレスからメールが十夜に届いた。内容を見て、漫才部の先輩だと言うことはわかった。たぶん、桂太だ。
漫才研究部の全員が来るように書いてあったが、休みの日まで漫才、というよりはボケをツッコミさせるのは精神的にきついと判断した十夜はメールを無視……したのだが、返事を返さなかったからか、今度は電話がかかってきた。
なぜ、メアドだけではなく電話番号まで知ってるんだと思いながら十夜は電話にでた。
「もしもし?」
『あっ、俺!俺だよ俺!』
「どこのおれおれ詐欺ですか?」
『佐々木十夜だや!』
「俺の名前を使うな!ツッコミずらかったわ!あと、変なキャラになってますよ?桂太先輩」
『だれが桂太やねん』
「お前だよ!!お・ま・え!」
『ハハハ、明日暇か?部活これるんか?』
「……いや、用事があるから行けません」
『秋穂と瑞希の水着写真』
「すいません。用事が無くなりました。明日行けます」
『じゃあ、9時に学校集合や』
ということで、十夜は美少女の写真に釣られ部活に来てしまった。
ため息をつきながら、懐にある美少女2人の写真に手を当てながら仕方ないと覚悟きめる。
「今日はみんなに聞いてほしいことがあるんや」
「なんですか?」
桂太の話に興味を持ちながら金髪のツインテール少女、咲が質問する。
「じつは、漫才部が……」
「漫才部が?」
「廃部になりそうなんや」
「……」
皆、目を点にしていた。
「す、すみません。桂太。もう一度言ってもらえませんか?」
部長である、瑞希が桂太に問う。
「漫才研究部が廃部になりそうなんや」
あまりの衝撃に皆、黙り込んでしまった。
廃部。
つまり、部活がなくなると言うこと。
十夜は疑問で仕方がなかった。なぜ漫才研究部が廃部の危機にさらされているのか。
部員の人数もたりている。顧問もいる。何か事件を起こした訳でもない。
では、なぜ?
その答えはすぐにわかることになった。
突然、部室のドアが開くとそこには朝比奈がいた。
「君たちは今、なぜ…この部が廃部になろうとしてるのか知りたいはずだ。……私が説明しよう」
スタスタと部室に入って来た朝比奈は椅子に腰掛け、息をはく。
「じつは、この間校長と飲みにいったんだ」
皆は黙って聞いていた。
なぜ急に飲みにいった話になるんだと思いながらも皆は黙って聞いていた。
「校長と一緒に飲んでたらな、彼の娘がなぜか笑えないらしいんだよ」
だから、何の話だ。
そう思いながら皆、黙って聞いていた。
「そこで私がこう言ったんだ。私がその子を笑わせてみせましょうと」
誰だよお前。
と思いながら皆、黙って話を聞いた。
「校長は、もし笑わせられなかったら君はどうする?と言ってきたんだ。そして私はこう言った。私のもつ部活を廃部にしますと」
『おい!!!』
黙って聞いていた皆は一声に突っ込んだ。
「なにやってるわけ!?朝比奈!」
「そうですわ!なぜそんな話になってるんですか!」
「そうだ!このまま廃部になったら、どうやって生きていけばいいんだよ」
「そこまで、深刻な問題じゃないだろ」
「そんなことないわよ!明日の生活費どうするの?」
「この部で金稼いだことないだろ」
「十夜くん!廃部になったら私は誰にボケればいいんですか!」
「いくらでもいるよね」
「十夜、私のボケを聞きたく無いわけ!」
「うん」
気づけば十夜は黒焦げになり髪型がアフロになっていた。
「まぁ、落ち着けお前たち」
「何を悠長な!!!!」
宏平はダンッと机を叩いた。
「校長と話した内容では、漫才部の全員が漫才を行い、一度でも校長の娘が笑ったら廃部はなし。しかも、焼肉をおごってくれるらしい」
瞬時に十夜以外のメンバーはエンジンを作り、会議を始める。
会議が終わりと、皆よだれをたらしながら朝比奈に顔を向ける。
「了解した」
「秋穂先輩って今回、どうするんですか?」
「決まってるわよ!ボケてボケてボケまくるの!」
「ツッコミ担当俺しかいないんですけど」
「十夜、男はいつも女にツッコムでしょ」
「下ネタやめろ!」