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ボケとツッコミは日常的!  作者: サイト
6/17

更なるボケは絶望的

「あの~幻のプリンって売ってますか?」

「あぁ、あるよ」

「じゃあ、それください」

「千円です」

(高い!!)

朝比奈から依頼を頼まれた十夜は、情報収集のために漫才研究部に訪れていた。

「待っていましたわ。十夜くん」

漫才部の部長の顔を見たとたん早くも帰りたくなる。

「あの、今日は……」

「みなまで言わないでください。わかっていますわ」

「いや、絶対わかってないですよね?」

「私にツッコミをいれたかったのでしょ?」

「まったく違うわ!」

「じゃあ、私の名前を聞きに?」

「気になるけど、違う!」

「では、何しに?ま、まさか私に告―」

「違うって言ってるでしょ!」

この人たちツッコミ担当がいないわりには、ボケを極めすぎている気がしてしかたがない。

十夜は一旦落ち着くため深呼吸をする。

「なに妄想してるのですか?」

「妄想してるように見えました!?」

「では、想像?」

「ほとんど変わってない!!」

「では、妄想?」

「戻ったわ!!」

落ち着くこともできず十夜は泣きたくなる。

「あのですね。今日は菊池と言う人のことについて聞きに来たんです」

「私のことですか?」

「菊池お前かよ!!」

「嘘ですよ(笑)」

「張り倒すぞお前!!」

「そのまま、どうする気ですか!?」

「どうもしないわ!」

「そのくらいで漫才はやめろ北条。十夜くんがもたないぞ」

十夜と部長である北条の会話を止めたのはこの部の顧問である朝比奈だった。

今日は昨日と違いポニーテールではなかったがすぐにわかった。

「北条、十夜くんは菊地について話を聞きに来たんだ。お前のボケに付き合ってる暇は十夜くんにはないんだよ」

北条はムッと口を膨らませると不機嫌そうな顔をする。

十夜はその顔を見て少しかわいいと思ってしまう。

「先生!!そんなこと言って、私から十夜君を奪おうとしてもそうはいきませんよ!」

「今度お前は女子トイレの掃除だ」

「許してください先生!!!!何でも言いますから!!先生がふられた回数も全部隠さず言いますから」

その言葉を最後に北条は先生に制服の襟元を捕まれてどこかへ行ってしまった。

一人残された十夜は部室の前で立ち尽くす。






◇菊地の正体

―次の日

十夜はお昼休みにも関わらず一人学校の屋上にいた。

理由は単純だった、朝から宏平と咲のボケをひたすらツッコミ続けて疲れたからだ。

これでは帰りまでもたないと思った十夜は屋上に避難した。

宏平と咲は二人でいるときはボケの反省会みたいなことをしているところを何度か見たことがある。今頃、またボケを考えていると思うと十夜は気が重くなる。

昼御飯である、パンをかじりながら天気のいい空を見上げる。

「君……友達いないの?」

急に頭上から声が聞こえ十夜は反射的に顔を真上に向けた。

肩まである赤い髪の少女。

「えっ?だ―」

その言葉を発する瞬間、頭のなかに朝比奈の言葉が蘇った。

赤い髪の美少女。

確かに目の前にいる彼女は普通の女子よりかわいいし、漫才部の部長、北条。そして咲とも、差はない。

まさかと思いながら十夜は口を開いた。

「菊池?」

瞬間、少女は目を細めてにらんでくる。

どおやらビンゴのようだった。「あっれ~なんで私のこと知ってるの?」

「えっと……それは」

「小鳥にでも聞いたの?」

「俺の頭の中はメルヘンじゃねぇ!!」

「じゃあ、ググったの?」

「ネットはそこまで万能じゃない!!」

「今の技術をなめたらダメよ」

「別になめてないよ」

「そう?私は君が文化を馬鹿にしてるようにしか見えないけど」

「今の会話で文化を馬鹿にしたところがあったか!?」

「とくにこの作品を書いてる作者よ。頭悪いし、文章力ないし」

「作者ディスルな!!」

「とにかく君はツッコミとして何もかも足りないわ」

「さっきから内容をコロコロ変えるな!!統一しろ!!」

「何でもかんでも思い通りになるとは思わないことね」

「朝比奈先生と似たこと言うな!」

そこで、ピタリと菊地は会話をやめた。

会話とは言えないかもしれないがさっきまで気楽にボケを連発していた人のようには見えないほど、表情が怒っている。

十夜は突然のことでわけもわからず慌て始めた。

すると、菊地はため息を吐くと同時に視線を十夜に向けた。

「君……漫才部の部員?」「えっ?いや……違うけど」

「じゃあ、朝比奈とはどういう関わり?」

「その……菊池を漫才部に連れ戻して欲しいって頼まれて」

「なんで?」

「いや、よくわかんないんだけど」

「ふ~ん」

十夜は何も言えなかった。

言葉がまったくと言っていいほど出てこなかった。

なぜ彼女が怒っているのかを十夜はわからなかった。

気がついたときには菊池の姿はなかった。

昼休みの終わりの鐘がなり、十夜はゆっくりと重くなった足を動かし教室に戻った。







◇過去

その日の放課後、十夜は朝比奈のもとに訪れていた。

そして、今日の出来事を説明すると朝比奈はコップに入ったコーヒーを啜すると十夜の顔を見た。

「少し前の話だ」

「えっ?」

「菊池が来なくなった理由だよ」

その言葉に十夜はゴクリと唾を飲んだ。

やっとわかる。菊池が来なくなった理由。そして何が起きたのかを。

「漫才研究部には冷蔵庫がある」

(何の話だ)

十夜は目を点にした。

なぜ、冷蔵庫の話するのだ。関係ないだろ、そう思った。

「冷蔵庫は各自自由に使用していい決まりで、何を入れても良いことにしていたんだ」

(なぜだろう……嫌な予感がしてきた)

「それが問題だった」

(問題そこで起きたの!?)

「ある日私が冷蔵庫を開けると、そこには……」

(そこには?)

「一日、十個しか売らないという幻のプリンがあったんだ」

「ちょっと待って先生」

「何だ?十夜くん」

「それ先生が全部悪いでしょ」

「こら、話を最後まで聞ききたまえ」

「いいよ!聞かなくて!どうせそのプリン食べたんだろ!」

「……」

「図星かよ!?」

思った以上にくだらなかった。きっとわかったはずだった。漫才研究部に関わりをもつ者に重い過去があるはずがない。

そう思った時にはもう手遅れだった。

「菊池も食べられたくらいで怒りすぎなんだよ」

「開き直るなおるな!」

「十夜くんなら丸く納めてくれると思った」

「自分で何とかしろよ!えっ?じゃあ俺、そんなくだらないことで利用されたの?」

「そうだ」

「教師失格だ!!」

「それで、何とか菊池を連れ戻して欲しい」

「自分で何とかしろって言ってんだろ!」

「私は暇じゃない!これから合コンだ」

「クソヤロウか!!」

「君しか彼女を救えない」

「それ、前にも言ってた!!」

「頼む!」

「嫌だよ!!」

「君は断れない」

「何で?」

「君は漫才研究部の部員だからだ」

「違うわ!」

「これを見たまえ」

ピラッ一枚の紙を見せられた十夜は目を見開いた。



漫才研究部

佐藤宏平

宮本咲

佐々木十夜


入部希望



と書かれていた。

「ようこそ、漫才研究部へ」

「宏平ーーーーー!!!!」

宏平を呼ぶ声は学校に響き渡った。






◇プリン


朝比奈から話を聞いた数日後。

再び十夜は菊池に合っていた。

「何かよう?」

不機嫌そうな顔をする菊池に戸惑いながらも十夜は口を開く。

「漫才部に戻ってきてもらえませんか?」

「なんで?」

「それは……」

十夜は少し黙り込むと昨日のことを思い出していた。

漫才部の部員になった十夜を呼び出した朝比奈はあることを条件に入部の取り消しを認めると言ってきた。

普通は退部届けを出せば終わりなはずなのだが、受け取ってもらうことができず、十夜は渋々その条件をのむことにした。

条件は二つ、一つは菊池を部活に来るよう説得すること。

二つ目は……

「それは……朝比奈先生が謝りたいと言っていたからです」

「別に私は謝ってほしいわけじゃない」

「わかってます。理由は他にもあります」

「どういうこと?」

「先輩は、一日十個しか売らないという店で作った幻のプリンを食べられたから怒っているんですよね?だから、そのプリンを買ってきました。部活に戻ってきてくれるならプリンは返します!だから、部活に戻ってきてください!」

幻のプリン。

朝比奈の条件の二つ目は幻のプリンを買ってくることだった。

菊池が来なくなった理由はプリンを食べられたからだ。

それなら、その問題を解決する一番の方法はプリンを買ってくること。

十夜は朝比奈にプリンの売っている店の情報を聞き、その店に買いに行った。幻のプリンと言うだけ合って朝四時から並びギリギリ買えた。

しかし、漫才部との関わりをこれで、切れるのであれば十夜には安いものだった。

「君に一つ言いたいことがある」

「何ですか」

「別にプリン食べられたことはどうでもいいの」

「……」

聞き間違いだろうか、十夜は思った。

今、菊池はなんと言ったのだろう。思考をぐるぐると回し、菊池の言葉を頭の中で復唱した。

十夜には確かにプリンは関係ないと聞こえた。

つまり……どういうことだ。

「ねぇ?聞いてる?」

「すみません。もう一度言ってもらえますか?」

「だから、プリンはどうでもいいの」

なるほど。プリンは関係ない。

つまり……予想外だ。

「えっ……じゃあ、先輩は何で部活に来ないんですか?」

「私はツッコミ担当をやめたいって言ってんのに、聞き入れてくれないから」

ツッコミ担当をやめる?

漫才部から、ツッコミが消えたら。ただの変人の集まりではないか。

十夜は予想外の返答に戸惑った。

プリンではなく、ツッコミをやめたいから部活に来なくなった?

朝比奈の予想はまったく違う。

これでは、菊地が部活に来るよう説得できない。

思考を巡らせるがいい案が浮かばない。

「そうだよ!きみ、漫才部なんでしょ?」

菊池がそう言うと危うく十夜はコクりとうなずきそうになるがそこで動きを止める。

確かに十夜は漫才部に入部させられ、部員である。

ここで部員と認めてしまうとダメだ、十夜の本能が自分自身の動きを言葉を止めた。

「前にも言いましたが、俺は部員じゃない」

「でも、瑞希に聞いたよ。佐々木十夜って言う一年が部員になったって」

「瑞希?」

「北条よ」

「……」

部長ーーーーー!!!!

ばれていた。隠せない。

「部員なんでしょ?」

「はい」

「じゃあ、きみにツッコミ担当を譲る」

「結構です!!いらないです」

「副部長権限で断らせないよ」

「お前、副部長かよ」

「今なら幻のプリンをつけるよ」

「そのプリンは俺が買ってきたやつだ!!」

「今ならあんなことやそんなことしてあげてもいいよ」

「えっ…あんなことやそんなこと?」

「そう。プリンを食べてあげたり、ぱしりにしてあげたり」

「俺の得するところがないわ!」

「じゃあ、突っ込ませてあげる」

「今やってる!」

「じゃあ、意味深で」

「黙れ!変態!」

「私、実はEカップ」

「嘘つくな!どう見ても、Cだろ!」

「変態!どうせ触りたいと思ってるんでしょ!」

「思ってないわ!」

「本当は?」

「思ってないわ!」

「キスしたい?」

「いきなり何言ってんの!?」

「つき合ってあげようか?」

「マジで!?」

「コンビニに~」

「そんなことだと思ったわ!!」


漫才が終わったかのように十夜は疲れ、ツッコミをやめる。

菊池は十夜の肩に手を置きこう言った。

「これからもよろしく、十夜。私のことは秋穂って呼んで」

「……」

十夜はその時ハッキリわかった。

どう足掻いても、漫才部から退部することはできないのだろう。

ツッコミがない日々はなくならない。

その日から、十夜は漫才部の部員として認めた。








―あの日から現在

十夜は今、漫才部の部員として活動している。

部員は、佐藤宏平(ボケ担当)宮本咲(ボケ担当)北条瑞希(部長、天然ボケ担当)桂太(偽関西弁、ボケ担当)菊池秋穂(変態、ボケ担当)。ついでに朝比奈たぶんボケ

そして、佐々木十夜(ツッコミ担当)。


このグダグダのボケとツッコミの日常は更なる物語がまだ、続くのだ。これからが大変だ。

「秋穂先輩」

「どうしたの、十夜?」

「結局プリンどうしたんですか?」

「食べたよ」

「じゃあ、千円ください」

「今度デートしてあげるから許して」

「嫌ですよ」

「じゃあ、バットあげるから、瑞希脅して……」

「俺はヤンキーじゃねぇーーー!!!!

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