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ボケとツッコミは日常的!  作者: サイト
5/17

漫才部のボケは日常的

「今回は少し真面目な話をしようと思う」

「パンツは大事だよな」

「真面目な話をするの!パンツの話とかしないから!!」

「じゃあ、咲ちゃんがどうしてかわいいかとか?」

「お前はどんだけ自分のこと好きなんだよ!」

「このくらい」

「どのくらいかわからない!!」


俺の名前は佐々木十夜。

皆からは十夜と言われている。

毎日同じクラスにいる同級生、また幼なじみである友達、宏平と咲にツッコミを入れているポジションである。

漫才でいうツッコミを入れる人。

漫画のキャラだと第二の主人公ポジションか、主人公。

意外と目立たないか、バトル漫画なら大抵弱いポジション。

まぁ、ツッコミが無ければボケは本来の力を発揮することはできないだろう。逆もまた同じこと。

なぜ、俺がツッコミとしてのポジションについてしまったのかと言うと……とくに理由はない。

強いて言うならば宏平も咲も昔っから、ボケてばかりの性格だったからだ。

小学一年生の頃は「何でだよ!」と言うツッコミしか言えなかった。

小学二年生になり、こいつらと関わったことを後悔した。

小学三年生、クラス替えでこの二人と離れられると考えると解放間を感じた。

数分後、奴等は俺と同じクラスになって絶望した。

それが現在まで続いている。

10年間同じクラスとは珍しいが、とくに嬉しいものでもない。

しかし、宏平たちのボケにツッコミをいれると言う日々は、俺に大きな成長をもたらしていることに気づいたのは高校に入学して直ぐのことだった。



◇部活と先輩


高校に入学して二週間、クラスの雰囲気は入学時より良くなり、その日は部活動紹介の予定が合った。

一年生は体育館に集められ、部活に入っている生徒はそれぞれ入部希望者を集めるために部活動アピールをする。

バスケ部、サッカー部、野球部、その他色々な部活動は迫力があり、中学校とは違うと感じた。

十夜は、中学時代は帰宅部で合ったことから高校では部活をやる気で人一倍、部活動紹介を真剣に見ていた。

そして部活動紹介が終わり、その日の帰り道、事件は起きた。

「十夜ーーーーー!!!!」

十夜は部活見学をしようと教室を出たところで、宏平に声をかけられる。

「何だよ?」

めんどくさそうに十夜は宏平を見た。

「事件だ!」

「知らん。俺は忙しいんだ」

「嘘だ!!!!」

「いや、嘘じゃねぇよ。これから部活見学しに行くの」

「帰宅部の?」

「帰宅部の見学って何!?」

「可愛い人が帰宅するコースを尾行し、家を突き止め、毎日その人を見る……」

「ストーカー!その行動はストーカーだよ!」

「この犯罪者!!!!」

「俺を犯罪者にするな!」

「まぁ、よい……そんなことよりストーカー君。部活見学ならおもしろいところを見つけたんだ」

「誰がストーカーだ。で?おもしろい部活って?」

「ついてきたまえ」




十夜が宏平に連れて来られた場所は学校の一階の奥に位置する教室だった。

ドアの前には、漫才研究部と書かれた張り紙がはられていた。それを見た時点で十夜は嫌な予感がした。

「十夜……入部しよう」

「嫌だよ!!!!こんな部活!俺は青春謳歌するんだ!」

嫌な予感は的中した。

「入部届けは書いといた」

ペッラっと一枚の紙を宏平は鞄の中から取り出す。

確かに入部届けと書いてある。その下に十夜の名前が書かれていた。

「何勝手に書いてるの!?」

「いいって言ったじゃん!!!!」

「いつだよ!」

「夢のなかで」

「夢と現実を一緒にするな!!!!」

そこでガラーとドアが開き、そこから一人の男子生徒が姿を現す。

「何やってるんスか?」

「あぁ、いや…その……」

十夜は目線を下に送り生徒の靴の上履きが赤いことから二年生だと言うことがわかる。

ちなみに黄緑が一年生、赤が二年生、青が三年生で靴の色がそれぞれ違う。

「えっと…一年生スか?」

「そちらも二年生ですか?」

二年の生徒と宏平が向かい合いジッと顔を見詰める。

瞬間、バッと二人はよくわからないポーズをすると、お互いににらみ合い沈黙する。

そして二年の生徒が口を開く。

「パンツの色は何派!?」

「黒派!!!!」

少しの沈黙の後、二人は同時に口を開いた。

「「こいつ、できる!!!!」」

「何が!?」

ついにツッコミを入れてしまった十夜を二年の生徒が見てくる。

「君も、なかなかスね!」

「だから、何が!?」

「わからないんスか?ふっ、まだまだ青いスね」「本当だよ、これだから十夜はモテないんだよ」

「モテない関係ないだろ!」

「これだから、十夜ッチは臭いんスよ」

「初対面なのに失礼だな!おい!」

「本当だよ!まず、あんた誰だよ?」

「人に名乗るときは自分から名乗るもんスよ」

「それもそうだな。俺は孫○空」

「戦闘民族!?」

「なるほど。そんな気はしてたス」

「どうして!?」

「オイラの名前は三橋桂太スッ」

「ここで本名!」

「なるほど、桂ちゃんか……」

「お前、馴れ馴れしいな」

「ふっ、実は顔馴染みでさ」

「えっ…?そうなの?」

「そうッス!」

「あぁ、五分前に出会ってな」

「さっきだよ!!!!」

「えっ?」

「えっ?じゃない!絶対に顔馴染みじゃないだろ!?」

「エスパーッスか!?」

「違わ!」

「じゃあ、一年生スか?」

「そうだよ!!!!」

「男の子スか?」

「見ればわかるだろ!!!!」

「オイラは誰ッスか?」

「三橋桂太だろ!!!!」

「君は?」

「佐々木十夜だ!」

「疲れない?」

「疲れるわ!!!!」

「大変スね」

「誰のせいだーーーーー!!!!」



十夜は膝をつき、その場で手をついた。

完全にやつらのペースにハマってしまったと思いながら十夜はため息をついた。

「いや~宏ちゃんなかなか面白い子連れてきおったな~」

さっきまで語尾にスをつけていた二年生、三橋桂太の喋り方が関西弁のようになっていた。

「十夜よりツッコミにきれがあるのは知らないからな!入部試験はどうだ?」

「おうおう、もちろん合格や!百点満点中の百二十点や!」

「だってさ十夜やったな!」

宏平は十夜の肩に手を置きニッコリと笑う。

「いや、入部しねぇよ?」

その言葉で二人は、体が固まり、十夜の顔を見る。

そして二人は十夜に顔を近づけた。

「近い近い!」

「何で入部しないんや!」

「本当だよ!入部しようぜ!」

十夜は後方に逃げ距離をとった。

「だから、俺は部活はやる気だけどスポーツがしたいの!」桂太と宏平は顔を見合うとコクリとうなずく。

桂太は口を開きこう言った。

「部長ーーーーー!!!!」

すると数分後、漫才研究部の教室のドアが開くと同時に一人の少女が現れる。

ツインテールの長い髪、咲だ。

「お前が部長かよ!」

「ふっ!!!!違うわ!残念だったわね!私は部長の身を守るための影むねよ!!!!」

「影武者じゃないの!?」

「そうとも言うわ」

「そうとしか言わないから」


めんどくさい奴が増えたと思いながら十夜はツッコミを入れる。


「咲ちゃん!部長はどうしたん!?」

「それは…」

「ま、まさか……」

「私は止めたんですけど」

「そんなアイツ……くっ!」

「どうしてもトイレ行きたいって!」

「止めたらダメだろ!!!!って言うかもう勘弁してください!!!!」


息切れをしながら止まることを知らないだろうボケの連鎖を完全に遮り、十夜はガクリ頭を落とす。

ボケが三人いるだけでここまで疲れることを十夜は知らなかった。

だからこそ、ハッキリわかる。

絶対にこの部にだけは入ってはいけないと言うことを。



「何をしてるのですか?」


綺麗な鈴の音。そして、鈴のように透き通った声が十夜の背後から聞こえた。

十夜は思わず後ろを振り返り、その姿を確認すると体が硬直した。

黒髪のロングヘアー、輪郭が整った少女。美少女とはこの人のことを指すのであろうと十夜は思った。

「部長!」

宏平が姿勢を良くして敬礼をする。

その姿をみた少女はクスクスと笑って視線を十夜に移した。


「君が十夜くん?」

「えっ?あ、はい」

初対面の彼女も十夜のことを知っているということは宏平とも知り合いなのだろう。

十夜の緊張した表情を察した彼女は手をポンと叩くと数歩下がり咳払いを一つする。

「初めまして、カーネ○・○ダースです」

「絶対に嘘ですよね!!!!」

油断した。十夜はこの美少女を甘く見ていた。

いくら見た目がかわいかろうと、彼女も漫才部の一人、しかも部長だ。ボケないとは限らない。しかし、まさか彼女もボケ担当なのではないかと恐怖を感じる。ツッコミのいない漫才部なんて、イチゴのショートケーキの上にイチゴが乗っていないショートケーキと同じだ。

例えが悪く、よくわからないがとりあえず漫才にはツッコミが絶対に必要。逆も同じだ。

十夜は額に汗を浮かべ黙り込んでしまう。

その表情を見た少女はプッと口から息を吐くとすぐさま笑い出した。

「いや~、十夜君は面白いですね。大丈夫ですよ。ツッコミのポジションはとりませんから」

「そこじゃない!!」

「あれ?違いました?」

「あの、聞いていいですか?」

「どうぞどうぞ何でも聞いてください。あっ、でも、学校の金庫の番号は教えられませんよ?」

「金庫の番号何で知ってるんですか!」ハッと十夜はその場で言葉を止めた。またしてもペースを持っていかれてしまったとおもいながらも一度、咳払いをして落ち着きを取り戻した後、口を開くいた。

「まず、先輩は?」

「人間ですわ」

「じゃなくて、名前は?」

「佐々木十夜ですわ」

「それは、俺です。先輩の名前は?」

「聞いて、どうするんですか?」

「え?あっ、いや、それは……」

「ラブレターを送る気ですね!?」

「なんでそうなる!?」

「その三分後、深呼吸をして、十五分後帰宅、途中で神社によってお祈り」

「細かいわ!!!!ちょっと待って!本当に待って!」

「その頃私は―」

「話を聞いて!!!」

「どうしました?」十夜はまさかの天然かと思いながら残り少ない体力でどうにか精神を保つ。

「あの……単刀直入に聞きますが、この部にツッコミ担当の人……いますか?」

「いないですわ」

「ですよね!!!!」

そして十夜の体力はゼロになり、くるりと彼女含め四人に背を向けて十夜は走り出した。

「あっ!!!!逃げましたわ!」

「追うんや!!!!」

「「「「おう!!!!」」」」

その日十夜は、知ってはいけない部活を知ってしまったのだった。






◇普通の人は先生かな?


十夜が漫才部の存在を知ってから一週間のことだった。

突然、知らない先生から呼び出しをされた十夜は職員室に向かった。

そこで待っていたのは、髪止めで縛ったポニーテールの若い女の先生だった。

見た目からすると二十代前半に見える。

「ほ~う、君が噂の十夜くんか」

「えっと…その、先生は?」

「もう、何となくは察してるとは思うが私はある奇妙な部活の顧問をしている、朝比奈だ」

「朝比奈先生が顧問しってるっていうのは漫才研究部ことですか?」

「ああ」

「それで、その顧問の先生が何のようですか?入部ならしませんよ」

「まぁとにかく、まずこの映像を見てもらいたい」

朝比奈はそう言うとパソコンの画面を向けある映像を見せられる。

そこには、見覚えのある顔が合った。

桂太と部長である彼女が漫才をしている映像……それは、とてつもなく面白くない漫才が行われていた映像だった。

衝撃的な映像を見せられた十夜はその場で硬直する。

「これは?」

「見てわからないか?漫才だ」

「いや、これは漫才とは……」

「言えないだろ?私もそう思う。ただ、ボケてるだけでツッコミがない。これではアンコのないあんパンだ」

「いや、意味がわからないでもないんですが、なぜあんパンを例えに?」

「さっきまで食べていたんだよ。ダイエットのために」

「それは、ダイエットとは言いませんよ」

「しかし、この前食べてもダイエットできると言う番組がやっていたぞ?」

「それは、ちゃんとしたバランスのとれた食事をしてるからです!」

「私も痩せたいな」

「それを俺にいってどうなるんですか!?」

「ストレス解消に」

「生徒をストレス解消に使うな!!!!」

プッと大きな吹き出す声が聞こえ十夜は、声のした方向に顔を向けた。

知らない先生では、あるが会話を聞いていたのだろう眼鏡を右手に持ち左手で口を押さえているのが見えた。

笑っているのが一目瞭然だ。

「君は素晴らしいな」

朝比奈はニッコリと笑いながらそう言った。

「試したんですか?」

「すまなかった。しかし、予想以上だよ。なかなかキレのあるツッコミだ」

「それは、どーも」

「漫才研究部、入る気ないか?」

「嫌ですよ。スポーツしたいんです。俺は」

「そうか……」

朝比奈は困ったような顔をすると顎に手をあて考え込む。

「なぁ、十夜君はこの部をどう思う?」

「疲れる」

「それは、君しかツッコミ担当がいないからではないからではないか?」

「違います、ただ単純にスポーツがしたいんです。」

「ここで相談なんだが実はこの部にはツッコミ担当がもう一人いるんだ。その子は今、訳あって休部していてね。もし、その子を連れ戻せれば、ツッコミは二人。君の悩みも解決して漫才研究部に入れる。どうだ?」

「話を聞いてましたか?先生?俺はスポーツしたいんです。運動したいんですよ」

「なに、その休部してる生徒についてか?」

「聞いてねぇよ!」

「菊池と言ってね。女の子だ。学年は君のひとつ上、つまり二年生だ」

「先生!!!!聞いてないです!!!!そんな話聞いてないですから!」

「赤い髪をしていてすぐわかると思う。しかも美少女だ」

「美少女とか言えば何とかなると思ってるだろ!!!!」


「男は美少女が大好きだろ」

「いや好きかもしれませんけど」

「とくにエロい子は大好物だろ?」

「男が全員そうだと決めつけないでください」

「胸の大きさとか重要だろ?」

「一理あるけど」

「内面ブスか顔面ブスどちがいい?」

「どちも嫌だわ!」

「じゃあ、内面ブスだが可愛い子と内面きれいだが顔面ブスどちらを選ぶ?」

「それは、内面きれいな方ですよ」

「うわ~でたよ。そう言う人多いわよね~。じゃあ、聞くけどあんた顔面ブスとつき合って、友達にあの子のどこがいいの?って聞かれたら、どう言うの?いい子だよ、くらいしか言えないでしょ」

「あんたは生徒にそれを言って恥ずかしくないのか!?」

「十夜くん、現実はそんなに甘いものじゃないわよ」

「十五歳に現実について語るな!」


バンと机を叩く音がすると十夜は目線をそちらに送る。笑うのを我慢していたのか先ほどの先生が顔を真っ赤に染めていた。


「ハハ、いやー君と話すと面白いな」

漫才研究部にはこんな人しかいないのかと思うほど十夜はため息をつきたくなる。

「それでは、彼女のことを頼むぞ」

「いや、なんでそうなるんですか?」

「君しか彼女を救えない」

「変に大事にしないでください」





こうして物語は新たなステージへと変わっていく。

菊池という少女が十夜を更なる苦労の連続にすることを、彼はまだ、知らないのだった。




そして私たちはまだ知らない。


漫才研究部の部長の名前を……

「十夜くん」

「桂太先輩?何ですか?」

「84円貸してくれへん?」

「細か、えっと…はい、どうぞ」

「いや、助かるわ~。これで100円になったわ」

「何に使うんですか?」

「ガチャガチャや」

「できないよ!?」


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