発表会も日常的(下)
「おい、あれって…」
「あぁ、綺麗な座り方だな」
「そうじゃねぇよ!藍那の顔につけてるのって」
「あぁ、仮面だな」
「あれって有りかよ?」
「別につけちゃダメとは言って無いし」
「お前、どっちの味方だよ!」
「可愛い子だよ!」
「軽く最低なこと言ったな!お前、部活つぶれていいのか!」
「いいよ!」
「いいのかい!あんなに必死だったのに⁉︎」
「十夜、人間変わるもんだ」
「何語ってるんだ、16歳が」
「世界広い」
「何を悟ったんだよ…。まぁ、それは置いといてだ」
十夜は腕組みして考えた、藍那の顔につけた仮面を外さない限り藍那が笑ってるか笑ってないかがわからない。
すると十夜は手をポンと叩いた。
(そうだ、朝比奈先生に仮面を外すようにいってもらえば!)
十夜はそう思い朝比奈にそれを伝えようとして藍那たちがいる部屋のドアを開けた。
瞬間、朝比奈は校長先生に仮面を渡していた。
「仮面渡したのお前かよ!!!!!」
その叫び声に近い思いを朝比奈にぶつけ、朝比奈はビクッと身体が動く。
「どうしたんだ、十夜くん」
「どうしたもクソもないですよ!なにしてんですか!?」
「見てわからないか、お面をうってるんだよ
」
「商売すんな!って、じゃなかった!ちょっと来てください!」
「断る!」
「なんで!?」
ぶはっ!
その吹き出す音とともに、藍那の母美智子椅子から転げ落ち倒れた。
相変わらずだが、本当にツボ浅いな…
「とりあえず、来てください!話があるんで」
「十夜くん…私と君は教師と生徒と言う関係だ」
「だから、なんですか?」
「私でいいのか」
「いいんですよ」
「本当にいいのか?」
「だから、いいですって!」
「でも、心の準備が」
「なんで必要なんですか!」
「恥ずかしい!」
「あんたは、なにを勘違いしてんだ!?」
「仕方ないな!これからよろしくお願いするよ」
「まて!なにを解決したんですか!」
「そうだな、子供は三人欲しいな」
「俺は作れねぇよ!?」
「名前はさちこ、ともこ、ティアラがいいかな」
「1人だけキラキラネーム!?やめましょ!絶対いじめ受けるから!」
「将来はアメリカの大統領だな」
「不可能だよ!」
「そして、私を楽させるんだ」
「考え方がクソ野郎だよ!」
「十夜くん!」
「なんですか?」
「私はなぜ結婚できないだ!」
「高校生にそんな質問すんな!」
「顔か!顔なのか!?」
「いや、先生は十分顔はいいと思いますよ?」
「アイドルになれるか?」
「まず、どうしてそういう考えになった!?」
「さっき、瑞樹たちが顔が良ければなれるって!」
「漫才のネタだよ!信じないで!」
「そうか」
「そうですよ」
「なれるのか」
「俺の話聞いてました?」
「なら、君は私の授業の話を聞いてるのか?」
「何も言えねぇ!!」
クスッ…
かすかだったが、その笑い声は聞こえた。
その笑い声は校長の野太い声でも、美智子さんの声でもなく、もっと子供らしい可愛いらしい声だった。
十夜だけではなく、その場にいる全員が、その声の主の方を観る。
仮面を被り、表情を全く見せないが、その仮面から聞こえてくるのは確かに笑い声だった。
十夜はふっと校長の表情みる。
その表情はきっと喜びに満ち溢れているに違いない。
そう思い、十夜の気持ちは膨れ上がっていた。
しかし校長の表情は、仮面によって隠れていてわからなかった。
見事に期待を裏切られた十夜は苦笑いしながら視線を藍那に戻す。
すると、藍那はその場から立ち上がり、ゆっくりと仮面を外した。
仮面の中からは満面笑みが姿を現した。
「まったく…なんというか…ずるいぞ」
その言葉と十夜に見せる表情はとても可愛いものだった。
まるで、藍那の周りだけが輝いているように。
「藍那…」
校長もその場に立ち上がり藍那の笑った顔を見つめる。
今日まで、笑った顔を見ることがなかった校長にとってはやはり嬉しいことなのだろう。
「校長…ハッキリとお伝えしますが」
「いや、もういい…すべてわかった」
朝比奈の言葉を止め、校長は十夜の方へと向き直る。
この学校に入ってから、校長とこうして対面するのは初めてだった。
十夜はゴクリの生唾を飲み込む。
「娘を頼んだ」
一瞬にして、教室の中が凍りつく。
「へ?」
思わず十夜は声を漏らす。
「今まで、誰にも笑顔を見せなかった藍那がこうして笑えるようになったのは君のおかげだ」
(いや、まって。なにを言っているんだ)
「まだまだ子供だと思ったが…いつの間にか大人になったんだな」
(なんかやばいな、これは。落ち着かせよう)
「あの校長」
「頑張るんだぞ!藍那!」
その言葉と同時に教室のドアが勢いよく開く。
「ちょっとお待ちください!ハッキリ言いますが!十夜くんは私のですわ!」
(いや違うよ)と十夜は瑞樹に思う。
「いいや!十夜は私のだ!」
(お前もか)。今度は秋穂だ。
ってことは…
「ちょっと!十夜は私の下僕なんです!」
(誰が下僕だ!)
咲にそう伝えたいが声には出さない。
「死ね!」
(ただの悪口だよ!)
「チャー!!!」
(もう少しなかったのか⁉︎)
宏平、桂太と2人も続く。
すると、校長は十夜を見つめる。
「どういうことかな?」
(いや、そもそも今の状況がどういうことなんですか?)
頭がこんがらがる。
わけがわからない。
いつの間にか始まる、口論。
十夜の頭の中はボーとし始める。
そして…
「ああ、今日も空は青い」
この後の話は長くなるのでまた今度にしよう。
というか、いつも通り、誤解が誤解を招くというか、いつも通りみんながアホやって、はちゃめちゃになって気づけば終わっているみたいなパターンだ。
まぁ、結論を言うと漫才部は潰れずにすんだのだった。
そしてまた、いつものように明日がやってくるのであった
「なんか数年振りな気が済んだけど?」
「まぁ、作者にも色々とあるんだよ十夜!」
「そうなんだ」
「俺らから言えるのはこれだけや!」
「そうだな」
「「これからも頑張ります!」」




