発表会の前も刺激的!
「なぁ十夜……」
「なんだよ?宏平」
「パンツってエロいよな」
「宏平……」
「どうした、パンツ」
「俺をパンツにするな!じゃなくてな?」
「うん……」
「パンツの話……これで40回目」
「記念すべき日だな」
「そんなこと言ってんじゃねぇよ!!!!!」
「ついに、きたで……この日が」
桂太は嬉しそうにそう言った。
今日は、漫才部の廃部を賭けた一世一代の大勝負。
勝てば焼肉。プラス、旅行。
負ければ、部活は廃部。
校長の娘である、藍那を笑わすために始まった戦い。
藍那が笑わないと勘違いしている校長先生。
最早勝負は見えている。
しかも、藍那は藍那で、父親である校長が笑わないと勘違いし、十夜と賭けをした。
旅行費を手にするのも時間の問題だ。
しかし、それでも十夜は緊張していた。
否、漫才部全員が緊張感を募らせていた。
「みんなさん。今日は部長として一言。……今日まで長く険しい道のりでした」
瑞希の言葉にツッコミたいところはあるが十夜は、口には出さなかった。
「毎日が、苦労の連続。私も、毎日が辛かったですわ」
(何かしてた?)
「毎日、徹夜でアニメを見る日々。どれ程疲れたことか」
(疲れるなら見るなよ)
瑞希は手を胸に当てた。
すっと、目を閉じ。一分間の沈黙の後、瑞希は目を見開いていた。
「秋穂、桂太、宏平くん、咲ちゃん……今日は頑張りましょう」
「俺は!?」
「ふう~やっとツッコミしてくれました。よかった」
「よかったじゃねぇよ!大事な場面なんだから真面目に行きましょ!」
「真面目だったではないですか!」
「あれのどこが真面目だったの!?」
「一番最初とか」
「苦労してないでしょ!この部!」
「しかし、私は毎日アニメを徹夜で見てましたわ」
「それで、なにを得たんだよ!!!!」
「夢と希望ですわ!!!!!」
「お前の頭の中はお花畑か!!!!!」
「十夜も瑞希もそのくらいにしなさい。どうやら来たみたいよ」
秋穂のその言葉に全員がドア見た。
窓ガラスから見える人影。
ついに始まる。
十夜は拳を強く握った。
扉が開くと同時にその姿を現した。
朝比奈の後ろにいるのは、紛れもない―
紛れもない……藍那の母だった。
「なんで!?」
そこにいたのは藍那の母、美智子さんだった。
「今回は家族そろって、見てもらうことにしたんだ。別に構わないだろ?」
「そうですわ。お客さんは多いほうがいいですわ」
「いや、みんながいいなら俺は―って」
十夜は絶句した。
自分でいいと言っていた、瑞希は「嫌だな~」と言った表情。桂太は、自分の世界に入り込む。
秋穂は、視線を床に落としていた。
咲は、ガクガクと震えている。
宏平は、目の運動をしていた。
「嫌なのかい!!!!!」
「そんなことないわよ。嬉しいよ……ものすごい嬉しい」
「嬉しさが伝わってこねぇよ!!」
「世界は丸い……世界は丸いんやで?」
「こっちの世界に戻ってきて!!」
「そ、そそそ、ううよ。おおおお、客さんんんん、ばばばんざざざい」
「お前は緊張しすぎだよ。何言ってんのかわかんねぇよ」
「ト、イレ行きたい」
「行けばいいだろ!?」
咲はその場から離脱した。
「で、宏平はなにしてんの?」
「見ればわかるだろ?」
「目の運動するのは後にしろよ」
「緊張をほぐしてるんだよ」
「そんな解し方初めて聞いたよ!?」
「こら、十夜くん落ち着け」
朝比奈は、部員のボケとツッコミの嵐を止めた。
「美智子さんが死にそうだ」
床に膝を落とし、手で笑いをこらえている美智子を見て、十夜は苦笑いする。
「さぁ、みんな。準備はいいか?」
朝比奈は顧問として珍しく真面目に部をまとめていた。
部員たちは同時に深呼吸で気持を落ち着かせ、コクリ頷いた。
「美智子の笑ったことで、自信がついたのか……な?」
十夜は聞こえないくらいの声で呟いた。
十夜はふっとポケットに入った携帯が振動していることに気がついた。
相手は非通知なため誰かはわからないが、十夜は電話にでた。
「ククク、久しいな。愚民よ」
そっと、十夜は電話を止めた。
そして、再度電話がかかってきた。
相手は非通知。
十夜は渋々、電話に出ると声の主が泣いているのに気がついた。
「……迷子になった」
「この学校迷子になるほど大きくないんだけど」
「迎えにきて~…」
十夜はため息を吐くと頭を掻きながら質問した。
「今、どこにいるかわかる?」
「教室がある」
「たくさんあるよ!学校だから!他にはないのか?」
「グランドが見える」
「どの教室からでも見えるわ!」
「ここどこ?」
「俺が聞いてんだよ!そうだ。教室って、何年のだ?」
「五年八組」
「そんなとこないわ!三年までしかねぇよ!?お前本当にうちの学校にきてんの!?」
「うん!!!!!」
「元気なへんじ!!!!!じゃあ、今いるとこ何階かわかるか?」
「聞いてどうするの?」
「お前を探すんだよ!!!!!」
「ありがとう!」
「お礼はいいから質問に答えて!!!!!」
「好きな食べ物はクレープだよ」
「そんなこと聞いてねぇよ!」
「と言いつつ、メロンが好き!」
「だから、聞いてねぇって!」
「と言いつつ、実は猫が好き!」
「食べ物じゃないよ!!!!!そうじゃなくて、いい加減に質問に答えろ!」
「不可視境界線は実在する」
「誰がそんな境界線があるかなんて聞いたよ!!!!!何階にいるか聞いてんの!」
「三階」
「最初から言って!?疲れるんだよ!」
「女子とトイレの中で待ってる」
「いや、外で待ってて」
電話を終えると十夜は藍那を迎えに行くことを皆に説明しようと振り返った。
すると、回りの全員がなぜか十夜を睨んでいた。
「十夜くん?わたくしにはあれほどツッコミは入れてくれませんでしたよね?」
「えっ……」
十夜の頬を一筋の汗が流れた。
「そうやで、わいにもあんなにツッコまへんかったやん」
「自分の世界に入り込んでたじゃん!」
「そうよ。私が最近、咲ちゃんとキャラ被ってるって言うのに」
「知らんよ!俺に言わないで作者に言って!」
「俺の名前何で宏平なんだよ」
「知らんって!作者に聞けよ!って言うかお前らは何を俺に言いたいの!?」
「なぜ私にはツッコミしてくれないんだ?十夜くん」
「あんたは今日一度もボケてないだろ!」
「何でトイレにいったのよ!」
「行ったのはお前だよ!って、いつかえって来たんだよ」
「さっき。ついでに迷子になった藍那ちゃん連れてきた」
ひょこっと藍那が顔を出して、十夜に手を降る。
「……」
十夜は黙り込んだ。
足を動かし、教室の窓側まで歩みよる。
みんなが見つめるなか、十夜は空を眺めて口を開いた。
「なぁ……みんな」
部室にいる全員は、黙って聞いていた。
「漫才始めるまで、ツッコミ休ませて」
そう、十夜は心のそこから伝えた。
みんなはコクリと小さく頷いた。
漫才開始まで、約10分。
つづく
後書き編
◇キャラクターの名前について
「作者に聞きたいんだけど?」
「なに~?十夜くん」
「俺たちの名前って、どうやって考えてるです?」
「てきとう」
「うん。そんな気はしてた」




