反抗期も日常的(下)
「何か、変な笑い声が聞こえるのは気のせいかしら?朝比奈さん」
「上は何してるんだか……」
「それよりはケーキ食べます?」
「いただきます」
十夜ががんばっている中。
朝比奈はくつろいでいた。
そこは、不気味な部屋だった。
謎の置物。謎の紋章。
床には魔方陣が書かれていた。
十夜は半分泣きそうになりながら、立派な椅子に座る少女を見た。
「ククク、よくここまで来たな!愚かな人間よ」
「お前が連れて来たんだろ。ここ自分の部屋か?」
「ここは時空の狭間にある。一つの部屋だ」
「最後に普通に部屋って言っちゃったよ」
「まぁよい。で、貴様は何しに来たのだ?」
「俺が聞きたいわ!何で俺が連れて来られたんだよ!」
「魔王ごっこしたい」
「どんな、ごっこ遊びだよ?前回やりたい、遊びと違うし」
「最近、誰もやってくれないのじゃ」
「最近って、やってくれる人がいたのかよ」
「だから、汝に問う!魔王ごっこしてくれるか?」
「ごめんなさい」
少女は床に手をつき、ガクリと顔を落とした。
「……」
「……」
「……」
(なに?この沈黙)
「ねぇ?」
「なんでしょう?」
「あなた誰?」
「さっき、俺の名前知ってたよね!?」
「わらわは、藍那と言う」
「あっはい。佐々木十夜と言います」
互いに自己紹介した後、再び沈黙した。
「ところで、質問していいか?」
「なぜ、私の下僕に質問されなければならん」
「いつから、俺はお前の下僕になったんだ」
自分の呼び方に統一のない藍那に十夜はツッコミを入れた。
「それで?質問って?」
「校長先生から、聞いたんだけど、藍那さんって笑わないって本当?」
「笑うよ?」
(やっぱり笑うんだ!知ってた!俺、何となく知ってた!)
「ただ……」
「ただ?」
「悪魔神官の前では笑わない」
「誰だよ。ド○ク○にいた気がするぞ」
「パパのこと」
「普通に父さんって言えよ!!面倒臭いわ!って何で父さん前だと笑わないんだ」
「反抗期も必要かなって」
「最近の学生は反抗期の意味わかってないのか!しかも必要かなってどういう意味!?」
「私も尖りたい時期なのだよ」
「いいよ、尖んなくて。お前のよくわからない時期のせいで漫才部がつぶれそうなんだよ」
「そりゃ大変」
「少しも思ってないだろ」
「ククク、仕方ない!明日、お前たちの学校に行って見事私を笑わすことができたら廃部をなしにしてやろう」
「最初からその予定だよ!」
「わらわの考えが読まれた!?」
「一々、自分の呼び方変えるな!休みの日までツッコミさせないでくれ!」
一通りツッコミ終わると、十夜は咳払いで話の切り替えをする。
「お前が父さんの前で笑ってくれさえすれば、漫才部も頑張って漫才作る必要もないんだけど」
「じゃあ、聞くが……何のための漫才部?」
十夜はその日、大事なことに気づかさられた。
藍那が言いたいことは、つまり人を笑わすために作られた部活がなにもしないでダラダラと活動しているのは帰宅部と何が違うのか。部活とは、自分の意思で活動し、努力することではないのか。
十夜は部活の本来の意味を忘れていた。
しかし、そこで十夜はもう一つ大事なことに気づいた。
部活とは生徒が任意で参加するものではないのか?
十夜は、膝から崩れ落ちた感覚を感じた。
(俺……考えたら、無理矢理この部に入れられたじゃん。頑張って何やってるの?本当は、スポーツやりたいんじゃないのか?)
「さぁ、答えよ!漫才部は、何のために存在する!」
藍那は問う。何故だか嬉しそうに。
「……」
十夜は思った。
本当は、漫才部の廃部は賛成だ。
漫才部の廃部で自分のやりたいことができる。
しかし、考えてもみろ。
例えどれ程、漫才部に無理矢理入れられたと言っても自分の意思でやめることはできる。
自分がいる場所は、漫才部がある場所は学校なのだ。
いつでも自分の思うようにすることができる。
自分は、自由なのだから。
それでも、漫才部をやめなかったのはなぜだ?
十夜は不適に笑った。
薄々感じていた。
漫才部に居続けた理由。
簡単なことだった。
「漫才部は、人を笑わすために作られた部活だ」
十夜は藍那にそう言った。
「しかし、それではなぜ今まで、漫才部は今まで、まともな活動していないのか!?ちなみに活動していないことは悪魔神官から聞いた」
活動しないんじゃない。
十夜は息を吸い込みこう言った。
「漫才部は活動してないんじゃない!する気がないんだ!!!!!」
藍那は、キョトンとした表情を作った。
「でも、漫才部を潰すわけにはいかないんだよ」
「……なんで?」
「漫才部は、変人の集まりで、ツッコミさせられて疲れるけど……」
十夜は知っていた。入部してから、ずっと感じていた。
「漫才部は居心地のいいところなんだよ」
満面の笑顔で十夜はそう言った。
藍那はその言葉にクスリと笑った。
「なるほどな……十夜は面白い奴じゃ。よかろう!ならば勝負じゃ!」
「勝負?言っておくが、お前を笑わす勝負なら、もう決まってるからな?」
「いいや、別の勝負じゃ!」
「別の?」
「悪魔神官は実はあまり笑わない!」
十夜は、藍那の言葉の意図がわかった。しかし……
「もし、悪魔神官を笑わせたら褒美に温泉旅行をプレゼントしよう!」
藍那は楽しそうに叫んだ。
いい勝負を持ちかけたと思い興奮している。
しかし、十夜は知っている。
この勝負、確実に負けることがないと言うことを。
「わかった。その勝負受けてたつ」
「後悔するでないぞ!」
「お前こそ約束は守れよ」
「ククク、わかっている」
十夜は心の中で笑っていた。
(藍那。お前は知らない。校長は笑いの壷がものすごい浅いと言うことを)
二人の笑い声が部屋中に響いたのだった。
漫才発表まであと1日!
おまけ
◇宏平の日常
前回までのあらすじ!
妹の鈴音にダメ出しされた宏平は、ツッコミを習得するため、修行を開始したのだった。
宏平は、森の奥底に妹と二人でいた。
柔道着をきた宏平は今までとは何かが違った。
「お、お兄ちゃん!大変!熊!熊が走ってきてる!」
「だから、なんやねん!」
「危機感ないのか!!!!」
「ねぇよ!!!!」
「お兄ちゃんが間違った方にツッコミを習得しちゃった!」
鈴音は半泣きになりながらそう叫んだ。
宏平の前に立ちはだかる熊は、偽物ではない。
目には傷がある人間の二倍ある巨大な熊。
ここら辺の縄張りの主だろう。
「グオオォォォォォォ!!!!」
熊が吠えると同時に宏平は、地面を蹴った。
熊の距離を徐々に縮める。
向かってくる、宏平に熊は右手を振り上げる。
宏平との距離がゼロになった瞬間、右手を強く地面に叩きつけた。
地面は砕け、叩きつけた場所を中心に円弧を描いたように地面は凹む。
しかし、熊は大きく目を見開いていた。
叩きつけたはずの宏平がいない。
刹那。
「あまいぜ。熊ぼー」
真上から声が聞こえた。
宏平は熊の真上に飛んでいた。
熊は、突然のことに反応できない。
「ツッコミ奥義!何でやねんチョップ!!!!!」
熊は地面に叩きつけられ、倒れた。
「安心しろ。峰打ちだ」
鈴音はその光景を見て、思った。
「あぁ……これ、私の夢だ」
そして、鈴音は謎の夢から目を覚ました。
完
「結局。どこまでが夢だったんだろう?」
「おい!!!!!鈴音!ついにツッコミをマスターしたぞ!」
「お兄ちゃん!熊が後ろに!」
「えっ!!!!!」
「後半だね」




