24.ワータイガーの事情
街の正門から真っ直ぐに北へ向かう道の突き当たりに、外壁が一部切れた場所があった。
切れた、と言っても、そこには途轍もない大岩が嵌まり込んでいる。
地面から突出しているらしい赤褐色の大岩の、まさにどてっ腹という辺りに、細長い亀裂が走っていた。
「ここが、マランバルの洞窟だ」
アルベルト卿が指差した洞窟の入り口、その細長い亀裂は、下へ行くほど大きくなっていて、人一人が通れるくらいの広さがある。
人が立って歩ける高さまで、鉄格子が厳重に嵌っていた。
「管理組合が、冒険者気取りの子供や、盗賊などを入れさせないために作った柵だ。魔法措置を施されているため、管理組合の担当者に頼まなければ、中へは入れぬ、筈だ」
アルベルト卿が自信なさそうに付け加えたのには、彼の記憶が50年以上前のものだからだ。
「管理組合の建物は、あそこだ」指差した先には、大岩の右に、小さなレンガ造りの建物があった。
和哉は頷くと、「じゃ、俺、中へ入る許可を管理組合に掛け合って来ます」と、建物へと向かい掛ける。
和哉の背を、だがアルベルト卿が呼び止めた。
「まて少年。ひとつ、提案がある。この洞窟には、少年とデュエルの二人で行け」
「え……? それは、どうして……?」
「この洞窟は、少年の実力ならばさして難しくはない。一人でも大丈夫な程だとは思うが、デュエルは、万が一だ」
「……卿は、一緒に行かないんすか?」
アルベルト卿は、チッチッチッ、と、気障ったらしく人差し指を立てて片目を瞑った。
「先程も申した通りだ。それと、私はちと、別な用事で動きたいと思っている。あまり――そう、あまり優しい相手ではないので、出来れば、ロバートとジン嬢の手を借りたい」
「ってことは、コハルの兄貴探しは、カタリナとコハルの二人でってことか?」とロバート。
アルベルト卿は「さよう」と頷いた。
「カタリナ嬢が一緒であれば、コハル嬢も兄上探しに難儀はせぬであろう」
******
ジンが一緒に行かない、ということに、和哉は少なからず不満と不安を覚えた。
しかし、何時までもジンに頼ってる訳には行かないということも、理解している。
洞窟の管理組合で入場の許可を取り、『ラーンの槍亭』で合流した和哉は、ジンに率直にその気持ちを告げた。
そうしたところ。
「良い心掛け。和哉はもう、私の導きが無くても、十分に自分のアビリティを心得ている」
ちょっと連れない言い方で、「行って来い」と肩を叩かれた。
洞窟に同行するデュエルには、和哉の《特殊技》について、ジンがいつもの無表情で「他言無用」をくっつけて説明し、デュエルはジンの《迫力》に圧されて、高速で頷いた。
翌日。
和哉達は昨夜再度話し合った組み合わせで、それぞれ出掛けた。
ひとつだけ、コハルが、皆がばらばらに行動することに懸念して、《知らせの鈴》という、オオミジマの忍者の間で使われている、緊急連絡用のアイテムを配った。
「私が持っている数が三つしかないので、カズヤさんと、アルベルト様に持って頂ければ」
和哉は、受け取った鈴を腰のベルトに下げた。
「鈴の音で、逆にモンスターが寄って来ちまうんじゃねえの?」
洞窟の入り口で。
デュエルは和哉の腰に下がった、不思議な形の鈴をつついた。
鈴は、土で作られた焼き物で、中に同じく土で作った玉が入っている。振ると、ポコポコ、という鈍い音がする。
「こういう変わった音は、結構モンスターに聞かれ易いぜ。何なら、ポケットとかにしまっといたほうがいいんじゃねえか?」
「そんなもんかな……?」和哉は少し不安になって、鈴を手に取る。
が、コハルは鈴を渡す時に、「なるべく仕舞わずに、身に着けて下さい。万が一、取り出せない状況になった時にも、身体の回りについていたら、こちらに音が伝わります」と言われた。
「いや」和哉は、渡したコハルの指示を尊重することにした。
「オオミジマの優秀な忍者の秘具なんだから、絶対、大丈夫だよ。コハルちゃんの言う通り、ここに着けとく」
それ以上はデュエルも言わず、二人は洞窟の奥へと入った。
管理組合からは、洞窟内の簡単な地図を渡されていた。羊皮紙らしい厚紙を、和哉は、昨夜宿屋の売店で手に入れた、小さめのランプに照らして読む。
「……この先は二股になってるのか。どっちへ行ったらいいかな?」
覗き込んだデュエルが、ふんふん、と、道の先へ鼻を上げる。
「どっちもどっちにモンスターが居るな。それも、しこたま」
「あー……」多分、自分のアビリティ《エンカウント100%》のせいだ、と和哉は思った。
どっちへ行っても戦わなければならないなら、比較的足場の良さそうな右の道がいい。
そう考えて、デュエルに告げる。
二人は、ゆっくりと右の洞窟へと入っていった。
足場が良さそうに見えた右の道だったが、一歩踏み込んでみると、下はびっしりと苔で覆われていた。
壁からは、ちょろちょろと湧き水が滴っている。
「やべえっ。水と苔で下が滑るっ」
デュエルがぼやいた時。上空に鋭い翼音がした。
「吸血コウモリだっ!!」
デュエルの声に、和哉は天井の方向を見る。
と、1mはあろうかという、いかにもコウモリです、といった風体のモンスターが舞っていた。
《キラー・バット レベル200 特殊技 吸血》
レベルを確認して、和哉は咄嗟にアマノハバキリを抜いた。が、デュエルがその手を止める。
「こいつら結構素早い。剣で追っかけても殺せねえ。魔法が使えるんなら、そっちのほうがいいぜ」
「分かった」
和哉は頷くと、アマノハバキリを収めた。
頭上を飛びつつこちらを窺っている4、5匹のキラー・バット目掛けて、口から炎を噴射する。
一回では落ちなかったが、飛び込んでくる奴らを交わし、二回目を噴射すると、5匹全部が落ちた。
「すっげえ。2ターンで全滅だぜっ」
やったあ、と、デュエルは子供のようにはしゃぐ。
こんなもんかな? と、和哉はいささか拍子抜けした。
《たべる》アビリティのお陰で、自分がせっせと戦って貯めずとも力がいきなり上がってしまっているため、和哉としては、どうしても自分の現在の実力がぴんと来ない。
首を傾げる和哉に、デュエルは、「まあまあ、堅いことは考えんなって」と、景気よくぽんぽんっ、と肩を叩いた。
その後も、二人の前にはキラー・バットの他に飛翔系のモンスター2種類が、入れ替わり立ち代り現れた。
その数の多さに、さすがのデュエルも少々うんざりし始めた頃。
「その角を曲がった先が、地下二階へ続く階段だって。階段を降りてすぐに、モンスター避けのスポットがあるらしい」
「ありがてぇっ!! そこまで行けば一息つけるっ」
エンカウント100パーに付き合せてしまって申し訳ないな、と思いつつ、和哉は、これ以上一階でモンスターに出会わぬよう、急いで角を曲がって階段を下りた。
「そっれにしてもよ。この洞窟は飛ぶヤツばっかだな」モンスター避けスポットへ入ると、デュエルがぼやいた。
確かに、と頷きつつ、和哉はデュエルに頼まれていた飲み物と昼食を、持ち物倉庫から取り出した。
面白いことに、スープや焼き立ての魚といった料理は、持ち物倉庫に入れておくとそのまま保温が出来た。
「これって……、時間を止めちゃうって、ことなのか?」独り言ちた和哉に、昼食の魚料理を頬張りつつ、デュエルが「そうなんじゃねえの?」と、返して来た。
「どっちにしたって、便利なんだからいいんじゃねえ? 少年……、じゃ、なかった、カズヤは、色々細かく考える性質なんだな」
俺なんか考えたって分からんものは、考えない、と、デュエルは胸を張って言った。
確かに、そのほうが気が楽かもしれない、と、和哉も思った。この世界は、和哉が住んでいた地球は元より、やって来たゲームの世界観とも違う、不思議なルールがまかり通っている。
というか、ルールが完全に違っていた。
そのひとつが、デュエルの存在だった。
「ねえ、デュエルはさ、何時頃から傭兵をやってるの?」
和哉の知っているRPGゲームでは、人語が解せるモンスターはいたが、傭兵をやっている者はいなかった。
「何時って……。いくつから、って意味か?」デュエルは、スープを一口飲み、和哉を見た。
「16くらいからかな。――あ、そうか。あんたらもしかして、噂の異世界人か?」
和哉は、一瞬ギクッとする。
別にナリディアに口止めされている訳ではない。が、ロバートとカタリナとも話したのだが、やはりこの世界にはこの世界の決め事がある。
それをある程度《チート技》というもので無視する存在である和哉達は、あまり、自分達を『異世界人』であると周囲に宣伝しないほうがいい。
にも関わらず。
デュエルの今の口振りでは、和哉達のような人間の噂が、結構この世界の住人の中に広まりつつあるようだ。
「どうして……、俺らが異世界人だって?」和哉は、恐るおそるデュエルに尋ねた。
「ニオイがな。俺ら亜人種は、モンスターと人間の、言ってみれば混血なんだ。で、モンスターの嗅覚が強いヤツ――俺もそうなんだけどよ――は、あんたら『異世界人』と、こっちの人間のニオイの違いが分かるっつーか。そんなんで、俺ら亜人種の間で、ちょっと前から『異世界人』が大量にこっちに来てるって話になっててよ」
「えっ……。じゃ、じゃあ、冒険者や傭兵の人達は、俺らが紛れ込んでるのを、わりとみんな知ってる?」少なからず驚いて、和哉はどもりながら訊いた。
デュエルは、だが、「いんや」と、首を振った。
「噂、にはなってる。けど、信用してるヤツは少ない、ってとこかな。何でかってえと、あんたらは結構上手く、こっちに溶け込んじゃってるからな。俺ら亜人も、別に自分達に利害がなけりゃ、わざわざこっちの人間達にあんたたちの情報を教えたりしねえし」
そういうことなのか。
デュエル達亜人種は、人間の社会で生きていくため、傭兵や冒険者の資格を得る。が、それは別段、人間と親しくなるためでないのだ。
訊かれなければ、だから和哉達『異世界人』のことは、人間側に敢えて伝えない。
それが、デュエル達の姿勢なのだ。
それは、ある意味、和哉達には助かる。
「……そっか」半ば安心して、和哉は胸を撫で下ろす。
本題に話を戻そうと和哉が口を開くより先に、デュエルが、今度は質問をして来た。
「滅多に俺らは人間に興味は持たねえんだけどよ……。カズヤの居た世界って、どんなとこなんだ?」
唐突に地球について訊かれて、どう答えようか、和哉は迷った。
というのも、この世界の人間――デュエルはワータイガーで、聞く通りなら半獣、ということになるが――が、どこまで科学について理解出来るのか。
というより、ナリディアが言っていた、『地球人は、他の星の人間に比べ文明が進んでいた』という言葉が引っ掛かる。
困ったな、と、腕組みした和哉に、デュエルが、
「ああ、面倒ならいいぜ? ……でも、家族とか、親戚とか、町とか村とかは、あったんだろ?」
「町や村は……、あった。学校っていうのもあって、俺はそこで、学生だった。勉強してたんだ。家は、学校からそんなに遠くない場所にあっ……。でも、家族は、忘れた」
ナリディアとの契約だ。
『ご家族を、忘れることです』
どうして、それが契約条件だったのか、未だに分からない。ただ、家族を思い出せないせいか、不思議と地球に里心は沸かない。
そういうメンタル的な部分がナリディアの狙いだったのなら、和哉に限っては、非常に効果が出ている。
「家族のことは、全く覚えていないんだ。それが、この世界へ来る条件だったから」
和哉の言葉に、デュエルは「へえ」と、金の目を丸くした。
「忘れちまって、寂しくねえの?」問われた和哉は、昼食の魚料理を一口食べて、
「別に。思い出せないものに寂しい気持ちなんて沸かないよ」と、肩を竦めてみせた。
釈然としない、という顔のデュエルだったが、それは和哉の本音だった。
「逆にデュエルはどうなのさ?」と、和哉は自分達の話を切り上げる積りで、デュエルに振った。
「両親とか兄弟とか、育った村とか町とか?」
「あー……」訊かれた途端。
でかいワータイガーが、小さな子供のように照れて赤くなった。
「こんなこと言うと、ぜってーみんな「ウソだっ」って言うんだけど……。実は、俺、南レリーアの冒険者協会会長が、親父なんだ」
「――へ?」
思わず、和哉は間抜けな声を出してしまった。
モンスターが傭兵を職業にしているのは、まだ納得出来た。が、冒険者協会の会長が亜人というのは、アリなのか?
「えーと。デュエルのお父さんって、やっぱモンスター?」
「いんや。親父は人間」
「……ええと?」人間の父親から、どうして、ワータイガーの息子が生まれるのか?
「あー、俺と親父は血は繋がってない。俺は捨て子だったんだ」
結構クる一言に、和哉は呆然とデュエルを見てしまった。
この、コソ泥をやらかしても悪びれない、根っから明るい男が、捨て子だったとは。
和哉が、何ともいえない顔をしているのがおかしかったのか、デュエルはブブッ、と失笑した。
「そおんなに深刻な話じゃねえよ。亜人の子供は、大体が母親に嫌われるからな。しょーがねえんだよ、オーグみたいなモンスターや、モンスター化した亜人に犯されて、無理矢理産まされた子供だから。それにどの村や町だって、亜人の子を産んだ女なんて住まわせたがらねえし。――俺の親父は、まあ、変わりもんでさ。そんな亜人の子供を何人も拾って育ててる。親父の連れ合い、俺らの育てのお袋も、聞いたら、昔、亜人の子を産んだんだって。でも、その子は生まれてすぐに死んじまったらしい」
人の嫌がる人を助ける。デュエルの育ての両親は、聖人君子といっていい人格者だ。
そんな立派な育ての親がいるのに。
「なんでコソ泥……」ぼそり、と心の声を漏らした和哉に、デュエルは口を尖らせながら、ぼりぼりと後ろ頭を掻いた。
「わぁかってるけどよっ。でも、俺らを認めてくれるのは親父みたいな人間だけだ。……俺とディスノは、小さい時から決めてたんだ。絶対、早く独り立ちしようって。早く親父の元を離れていっぱしになれば、親父も少しは世間から変人扱いされなくなるし。……って、思ってたんだけど、かっこわりいことに、窃盗なんぞやっちまって……」
デュエルは、頭を掻いていた手で顔を覆った。
自分のやってしまったこと、そのために、兄弟として育ったディスノを失ったことを、思い返して反省しているのだろう、肩が震えている。
「俺は……、南レリーアには、帰れねえ……。ディスノを死なしちまったし、自分も、こんなこっ恥ずかしいことしでかしちまったし……。親父に、どんな顔して会えってんだ……」
「それでも、親父さんには、ちゃんと報告しなきゃいけないんじゃないの?」
言った直後。和哉自信がびっくりした。
物凄くまともな言葉が、どうして自分の口から出たのか?
もしかして、ナリディアの仕業か? と疑ってみたが、確証は無い。
それより、言われたデュエルのびっくり顔に、また驚いてしまった。
金色の毛が、3倍くらいに膨れ上がり、金の目もまん丸になっている。
何処かでみたことのあるような――と、和哉は記憶を手繰り、それが、子供部屋に置いてあったぬいぐるみのライオンの顔にそっくりなことに思い至った。
茶と金の違いはあるが、鬣のボサボサ具合や、子供を笑わそうというのか、どんぐり眼できょとんとした顔付きのところなどが、よく似通っている。もちろん、今のデュエルは和哉を笑わそうとしてこんな顔をしているわけではないが。
唐突な地球の思い出に和哉が暫し戸惑っていると、デュエルが、金縛りから解けたように苦笑いをした。
「きっついこと言うな、カズヤ。――でも、それが筋ってもんだよなぁ……」
よし、と、デュエルは気合を入れた。
「分かった。俺、親父に会いに帰るわ。あ、もちろん、ちゃんと北レリーアの警備隊にも行くぜ? 一応、俺犯罪者だからな」
「あー……。それは、いいんじゃないかな」和哉は、思い出に迷っていた自分を隠すように、言った。
「多分、アルベルト卿は、あんたを突き出す気は無いよ。それより、これから先も、仲間として旅に付き合わせる気じゃないかな」
デュエルが、本日二度目の涙を目に浮かべたので、和哉は思わずぎょっとしてしまった。
「もし……、もし、ほんとにそうならっ。俺は、絶対、あんた達を裏切らねえっ!! ぜってえ、あんた達に付いて行くっ!! おうっ、そうだっ!! カズヤ。何処にでも俺を連れてってくれっ!!」
プロポーズとも取れなくもないデュエルの台詞に、和哉は本能的に後ずさった。
その時。
これから向かおうとしていた方向から、岩を崩すような大きな破壊音が聞こえた。
「何だ?」和哉とデュエルは、モンスター避けスポットに座ったまま、首だけそちらへと向けた。
「なんかまた、ヤバいのが居そうな気配だな……」ふんふん、と、鼻を上げたデュエルは、金色の目を細める。
「音がしたのは、これから入ろうって言ってた、地下二階の第2の部屋じゃ……、ないよね?」
「……行って、みるか?」
デュエルに顔を覗かれて、和哉は恐々頷いた。
二人は立ち上がり、モンスター避けスポットを出る。
すぐにエンカウントになるかと身構えていた和哉だったが、不思議というか不気味というか、目的の部屋の前まで、ただの一匹もモンスターが現れない。
「……大物が、居る」ニオイで敵がなにか分かるワータイガーのデュエルが、第2の部屋の前で顔色を変えた。
「カズヤ。わりぃことは言わねえ。ここは避けよう。この中のヤツは、俺らじゃ手に負えないかもしれねえ」
「そんなに……?」
デュエルの《嗅覚》は本物だろう。ならば、ここは避けるべきだ。
助言に従い第2の部屋を素通りしようとした和哉だったが。
扉のほうが勝手に開いてくれてしまった。
意外な展開に二人が驚愕している暇もなく、中から伸びてきた細長い何かが、二人を絡め取ると部屋の中へと強引に引き入れた。
「どっ、どーなってんだっ!?」足掻けども逃れられず、ずるずると引っ張られる恐怖にデュエルが叫ぶ。
暗くて中が分からない。和哉は、相棒同様恐怖はあったが、ここは落ち着こうと、引っ張られながら火の魔法で明かりを作った。
と。
「いきなり明かりを灯すとは。女の閨に無粋な客じゃ」
低めの、やや掠れた、それでいてセクシーな女の声がした。
和哉は声のほうへと、不自由な体制で何とか顔を向けた。
作り出した火の玉の、ぼんやりした明かりの下で見えたのは、白い鱗を纏った蛇だった。いや、蛇の部分は下半身だけ、上半身は、白い肌をした、全裸の女だ。
腹の辺りまで伸びた赤茶の髪で、たわわな胸の膨らみは恨めしいほど見事に隠されている。
首は細く、顔はすっきりと整っている。大層な美人だ。
どんな男だろうと、彼女には絶対惑うだろう。
例え――ラミアでなくとも。
当初の予定より話が大きく蛇行してしまいました(汗)
でも、なんとか中ボスが次には出そうです。
また《たべる》のか? 和哉・・・




