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12.次の村へ、の前に、お化け屋敷

 大占い師の予言は的中し、翌朝には、和哉は神殿の宿を引き払い、最初の村を出発していた。


「南レリーアって、こっからどれくらい掛かるんだ?」


 地図を広げながら方向を確認しているロバートに、和哉は尋ねた。


「偉大なる《モンスターイーター》には、初めての旅さね。はや、胸が騒ぐかえ?」


 カタリナの妙な言い方に、和哉はちょっとムッとなる。


「その、《モンスターイーター》って言うの、止めませんか?」


「そうだなぁ。カズヤが《たべる》アビリティ持ちだって分かると、この先色々と厄介だしな?」


 端から端まで眺め終わって、ロバートが旅の革鎧装束のウエストポーチに地図を畳んで仕舞う。

 カタリナは、例の赤い魔法のショールを肩に巻き付け、ふん、と鼻を持ち上げた。


「バレる時にゃあ、一挙にバレるさね。それは、そんな後の事じゃあない。南レリーアに着く序盤で、カズヤの能力にはみんな気付いてしまうさ」


「そりゃ……、ヤバいなぁ」


 風に靡く金髪をロバートはぽりぽりと掻く。


「南レリーアには、徒歩でも20日。その間に、カズヤの能力がバレちゃあなぁ。街へ入った時には、注目の的だ」


「だが、その能力がみんなを救うさ」


「俺が、みんなを……?」


 占い師の謎の言葉に首を傾げつつ、和哉は少し先を行くジンを見た。

 背の高い、葦のような植物が生い茂る草原に細々と作られた道は、最初の村から次の宿場町へと続く、唯一の街道である。

 頻繁に人通りがあるにも関わらず、植物が伸びる方が早いのか、道は2、3日ですぐに草原に隠れてしまう。

 葦の束に埋もれるような位置に立って、ジンは、いつもの迷彩色の外套を、フードまで被って空を見ている。

 ほんの何分か前まで朝焼けしていた東の空は、みるみる青空に変化していた。


「……風向きが、今日はワイバーン向きだ。西の山から狩りに来るかも」


「うげっ、西の山って、ワイバーンが棲んでたのかっ?」


 和哉がやっていたRPGゲームでも、ワイバーンは序盤の中ボスくらいには現れていた、結構強いモンスターだ。

 そんなのに襲われたら、少々ではなく難儀する。

慌てる和哉に、ロバートは「なんだ、知らなかったのか?」と惚けた。


「教えてくれなかったじゃないかっ、ロバートっ!!」


「ああそっか。一昨日はボスモンスターを倒しに行くんで一杯だったしな。

悪かった。けどな、この辺のワイバーンは、わりと小型だから」


「そう」と、カタリナ。


「よっぽどの下手じゃなけりゃ、噛み付かれたり毒の尻尾で刺されたりはしないよ」


「でも、数が纏まると、厄介」


 ジンの不気味な助言に、和哉は、


「とっ、とにかく急ごうって! 西の山から離れりゃ、ちょっとは回避出来るんでしょ?」


 まあ、そりゃそうだと、とロバートが笑い、皆は急ぎ出した。


******


 ワイバーンの襲撃は無かったが、野盗の襲撃は2、3回受けた。大概は10人前後の団体で、レベルが10~15前後。ロバートとジンの敵では無かった。

 その他には、相変わらず《キラーラビット レベル2》と、《キラードッグ レベル4》。

 あと、1回だけ《ポイズンドッグ レベル14》と遭遇した。

 しかし、いずれも単体だったので、どちらにしてもロバートかジンが片づけた。

 二人の闘いを背後で見ながら、和哉はつくづく思った。


「剣の腕が欲しいよなあ……」


 やはり、闘うなら前衛で、華々しく剣を振り回してみたい。ばったばったとモンスターをなぎ倒すのも、やはり男としてはやってみたい格好よさだ。

 零れた愚痴は、しっかり魔女の耳に収納される。


「なら、ガイコツ剣士を《たべれ》ば、いいんじゃないのさ?」


「じょっ……、冗談でしょう!?」


 思わず声を上げてしまった和哉を、野盗を縛り終えたロバートとジンが振り帰った。


「どうした? なんか、不都合でもあったか?」


「いやその……」言葉を濁した和哉の横から、カタリナがずばり、と言ってしまった。


「《モンスターイーター》としては、剣士の腕前も欲しいんだとさ。とすれば、ことは簡単。元騎士の亡霊モンスターか、ガイコツ騎士を《たべれ》ば」


「ううう~~っ!! それはっ、嫌だって!!」


 和哉は断固として拒否した。が、そこでドS娘のジンが、黙っていない。


「ロッテルハイム邸ならば、結構強い幽霊騎士が出る、ホーンテッドだ。あそこで収集するのが一番」


「じゃあ、なくって!!」和哉は、力一杯否定する。


「俺はっ、教えてもらって強くなりたいんだってばっ。モンスターを《たべて》、その能力を吸収するんじゃあなくって、例えばっ、ロバートに剣を習うとか」


「俺に、か?」ロバートが、意外、という顔をした。


「んなまどろっこしいことやるより、騎士のガイコツを喰っちまった方が、多分何十倍も速く剣は上達出来ると思うぞ? しかも、一足飛びに、俺なんか抜かして行くと思うけどなぁ」


「でも、それじゃあ……」チートじゃんか、と言おうとして、和哉ははたと思い出した。


 ナリディアにチート技を頼んだのは、自分だ。

 そのやり方はナリディアに一任したものの、確かに《たべる》アビリティは、大概の能力を習得出来る。

 無論、モンスターを喰うのは、いつだって大大大抵抗があるが。

 突然黙った和哉の胸の内を見透かしたように、ジンはぐいっ、と腕を引っ張った。


「ロッテルハイム邸では、昔、侵入したドラゴンとの凄絶な闘いがあった。そこで死んだ騎士達は、浮かばれずに怨霊(ゴースト)となって彷徨っている。彼らを浄化するためにも、カズヤの能力は役に立つ」


 にっこり、というより、にやりと凄みのある美少女の笑みに、和哉は気後れするしかなかった。

 かくして、村から北カルバス街道を南下した最初の宿泊地テスク村へは行かず、和哉達はその近くのロッテルハイム邸という廃墟に一泊することとなった。

あーいーかーわーらーずっ 和哉くん、ジンちゃんに押されっぱなしです。

いい加減、自分がドМって気が付けばいいものを・・・

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