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112.大賢者の思惑、月天使の思惑

 魔王と本気で戦うなら作戦をきちんと立てなければならない。

 クラリスの提案に和哉他一同はうんうん、と頷いた。

 一旦、サーベイヤに戻ることにする。


「魔法陣はこのままでよかろう。使い手を特定する術じゃて、わし以外には使えん」


 ロバートの召喚獣となったヘルロットだが、魔王が怖いので和哉達と一緒に湖を離れる、と言う。


「っても、サーベイヤには連れて行けねえぞ?」


「分かってるよっ。僕は手頃な洞窟にでも身を潜める。そういうとこだったら結界も張り易いし」


 ロバート達は帰りも魔法陣で神殿まで運ばれた。

 ヘルキーニアとヨアヒムは、和哉が召喚の呪文を解くと、現れた時と同様に光の球となって消えた。

 驚いてクラリスに聞くと、


「召喚獣は、呪文で招聘と退去が出来るんじゃ。一瞬で自分達のねぐらへ戻ったのじゃろ」知らなかったのか、と睨まれた。


 ヘルロットはガートルード卿に頼み、オーガストに騎乗させてもらう。心当たりがあるという、王都近くの小さな森で落としてくれと言った。

 ヘルロットが無事に森に潜り込むのを見届けて、和哉達は王都へと飛んだ。


 ******


「本気で離反したと思うか?」


 フィディア神殿で落ち合った和哉に、ロバートが考え込むような顔を向けて来た。


「召喚獣の契約結んどいて言うのもなんだが。俺は、どうも、やっぱりあいつは何か企んでる気がしてならねえんだよな」


「わしも同意見じゃな」


 神殿を出ると、表通りには食べ物屋が通りにずらりと並んでいる。

 ガッツリ食べられる店から軽食を扱う店まで、礼拝者の来店を見越して様々だ。

 和哉達は、軽食の店へ入った。

 蒸し焼きして細かく裂かれたコルルクとケールを挟んだサンドイッチと、季節のベリーのジュースを手に、一行は通りに置かれたテーブルを長々とくっつけて陣取った。

 結構な人数の机周りに、通行人や他の客がちらちらと目線を向けてくる。しかし、気にも止めずにクラリスは話を進めた。


「魔王は狡猾じゃ。配下の裏切りをそう簡単に認めるとは思えぬ。マーナガルラほどの高位魔族が、一回叱責された程度で逃げ出すのも腑に落ちん。……おそらく、こちらの手の内を探る狙いがあるのだろう」


 和哉達の周囲には、クラリスがサラリと『音声変換』の魔法を展開している。通行人には、彼らの会話はただの雑談にしか聞こえない。

 魔法の内側にいる和哉の目には、うっすらと銀の膜がかかったように見えていた。


「俺らの戦力ってことすか?」


 訊いた和哉に、大賢者は大きく頷いた。


「特に、カズヤの力を知りたいのじゃろう。おまえさんは、魔王にとってもかなりな脅威だからの」


「でも、だったら何でカズヤの召喚獣になる話を蹴ったんだ?」


 ルースの疑問に、ロバートが答えた。


「直接カズヤの召喚獣になったら、本気で身動き取れなくなっちまう、と踏んだんだろうよ。それよりも魔力は少ない俺の召喚獣だったら、いざって時には簡単に契約破棄出来る、って思ってんだろう」


「召喚獣の契約も、一種の魔法契約」と、ジン。


「主人の魔力が少なければ、魔力量の多い召喚獣が一方的に契約破棄をする可能性もある。実際には、魔法契約を自分の魔力で上書きする形になるけれど」


「用意周到だな」ルースは鼻を鳴らした。


「だからと言って、カズヤの力が削がれる訳じゃないのに。知ったところで無駄だと思うが」


「増強を、考えているのかも」メルティが不安そうに目を上げた。


「高位魔族だけじゃなくて、中程度の魔族も引き込めば、それなりの戦力になるし。カズヤの戦力が分かればどれ位の数を集めればいいか、見当がつくかもって」


「それもあるだろうが」と、ガートルード卿。


「何より、カズヤにどんな技があるのかも知りたいのだろう。ガルガロンが消滅したことはもう分かっているのだろうから、どうやってあの高位魔族を退治したのか、その術が知りたいのだと思う」


「だとして。こちらはヘルロットをどう扱うのかえ?」


 カタリナの質問に、大賢者はふむ、と顎に手を当てた。

 

「一応、騙されたふりはせねばならんな。あちらの思惑がはっきりするまでは、の。その後じゃが……」


「御使い様が、」ジンが、ふわり、と目を宙に向けて言った。


「……カズヤと、話がしたい、と」


「今っ!?」


 驚く和哉に、ジンがこくり、と頷く。

 途端。

 和哉の眼前が真っ暗になった。


 ******


 気が付くと、いつものナリディアとの面会場所だった。

 暗黒の空間に不似合いな白いギリシャ神殿風の柱が、何本か並んでいる。

 その中央に、ナリディアがいた。


「突然お呼び立てしまして、申し訳ございません」


 銀色フリフリ少女型の宇宙空間管理システムAI〈?〉は、深々と頭を下げた。


「たった今、マーナガルラに関する処遇の決定が決まりましたっ。ので、和哉様にあの魔物の捕獲をお願い致したく、お呼びした次第ですぅ」


「マーナガルラを、捕獲?」


「はいっ。兼ねてより魔王とその配下の高位魔族については、私達も手を焼いておりました。彼らは異常に『ゆらぎ』のエネルギーを消費する存在です。増えすぎると、数多の宇宙空間に支障をきたします。ので、あれらは半減、もしくは消滅させたいと、こちらでも考えていた次第でございます」


「……で、どうやって高位魔族とか魔王を半減させるわけ?」


 話がさっぱり見えない和哉は、少々苛立ちながらキャピリンギャルを睨め付ける。


「まず、和哉様にマーナガルラを吸収していただきます」


「げっ!? それってまた、俺がメンテされるんじゃないのっ」


「そうなのですがぁ、……いえいえっ、そうではなくて、ですね」


「どっちなんだよっ!?」


「メンテはぁ、以前のような長期間ではなく、てですね、もっと短期間で終わると、担当はもうしておりまして。手順といたしましては、吸収して頂いたマーナガルラを一度持ち物倉庫に放り込み……、いえ、格納して頂いて、それを私達で取り出して調整いたします」


 言うなれば『禁じ手』でございます、と、ナリディアはにっこりと笑った。

 では、と頭を下げると、ナリディアはすっ、と闇に溶けていく。


「ちょっ……、『禁じ手』って?」


 もう少し詳しく知りたい和哉は、ナリディアを引き止めようと声を掛ける。が、『悪魔』の異名を持つ御使いはそのまま消えてしまった。


「待てよっ!!」


 自分の大声で和哉は目が覚めた。隣にはジンが、澄ました顔をして座っている。

 他のメンバー、メルティやルース、デュエル達は驚いた表情で和哉を見ていた。


うわあ〜、な感じで空いてしまいました、済みませんm(_ _;;)m

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