学校
「城野くん、おはよ」
「......おはよ、岩見さん」
「えっと......城野くん、だよね?」
隣の席の岩見さんが、僕のいまの状態を見て戸惑ったような表情を見せてる。
無理もない。
まだ登校したばかりだというのに、精魂つき果てたような様子で机に突っ伏してたら誰でも心配になるだろう。
最近はノマちゃんに毎日のように絡まれるせいで一人の時間が取れてない。ああ。安らげる時間が足りない。このままでは疲労で干からびて消滅してしまいそうだ......
「大丈夫? 疲れてそうだけど......」
岩見さんは心配そうに僕の顔を覗き込む。
「......大丈夫だよ。ちょっと、寝不足なだけ」
「そう?」
——岩見 音遠。
隣の席の人で、面倒見がよくて優しい人という印象だ。
人当たりも良くて優しい人、なんだけど、クラスの中ではあまり目立つ方ではない。
見た目が黒髪でメガネという少し地味な装いで、大人しい性格というのが目立たない要因だろう。
ま、目立たない地味なタイプは僕からしたら完全にプラス要素だ。いくら話したところで面倒ごとにつながるリスクが少ないからだ。......ほんと、ノマちゃんとは大違いだ。
——ブブブッ......
スマホが振動したのを感じて、見ると案の定ノマちゃんからのLIMEだった。
『いま、私のこと考えてた?』
......なんで分かるんだ。
時々、いやむしろ毎日、ノマちゃんのことが無性に怖く感じる時がある。
『考えてないよ』
『え〜〜~』
即既読からの即返信か......というか、なんだこのだる絡み。
「はぁ............」
あまりの面倒さに、ため息がもれ出してしまった。
「城野くん? 大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
そう岩見さんに伝えると、岩見さんの視線が僕のスマホに向いたことに気づいた。
「......! 『ノマ』さん? って、もしかして......彼女さん?」
岩見さんは驚いた様子で目を見開くと、確かめるようにそう訪ねた。そう訪ねた岩見さんの手は、自分のスカートをキュッと握りしめていた。
「え? ああ......ただの知り合いだよ」
本当は彼女ということらしいけど、少なくとも僕の中では面倒事を具現化した知り合いといった認識だ。
「そ、そうなんだ......」
岩見さんはそう呟くように言った。その表情は、さきほどより柔らかくなったように感じる。
「............私はてっきり......」
「......何か言った?」
「え?! あ、なんでも、ない」
「そ、そう?」
何かボソッと聞こえた気がするが、気のせいだったか。
『ねぇ〜、無視しないでぇ』
『お〜い』
あ、返信すんの忘れてた。ま、いいか。
僕は机に突っ伏して、ホームルームが始まるまで時間を潰すことにした。




