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転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~

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第062話 難しい手術への挑戦

 ハルトムート先生との厳しい実習を終えた翌週、私は再び医師としての日々に戻った。


 授業、実習、研究——全てに新たな決意で臨む。


 完璧である必要はない。


 ただ、誠実に、一生懸命に。


 そして、謙虚に学び続ける。


 厳しい試練で学んだことを、胸に刻んで。





 病院実習の日だった。


 王都中央病院へ向かうと、フリードリヒ医師が真剣な顔で待っていた。


「リーゼさん、今日は少し難しい症例があります」


「はい」


 私は頷いた。


「患者は五十代の男性。胃に大きな腫瘍があります」


 医師が説明を続けた。


「良性か悪性かはまだ分かりません。でも摘出が必要です」


「胃腫瘍の摘出……」


 私は少し緊張した。


 前世では何度も経験した手術だが、この世界では初めてだ。


「今日は見学だけですが」


 フリードリヒ医師が言った。


「もしよければ、助手として参加してもらえませんか?」


「はい」


 私は即答した。


「やらせていただきます」





 手術室へ向かう途中、ベルンハルト医師に会った。


「リーゼさん、今日の手術に参加するそうですね」


「はい」


「胃腫瘍の摘出は難しい手術です」


 ベルンハルト医師は真剣な顔で言った。


「出血のリスクが高く、周囲の臓器を傷つける危険もあります」


「分かっています」


 私は頷いた。


「でも、だからこそ学びたいんです」


「その意欲は素晴らしい」


 医師は微笑んだ。


「頑張ってください」





 手術室に入ると、すでに準備が整っていた。


 清潔な空間、整然と並べられた器具、そして緊張した空気。


 患者が運ばれてきた。


 五十代の農夫らしい男性で、顔色は悪く、痩せている。


 腫瘍のせいで食事が取れず、体力が落ちているのだろう。


「大丈夫です」


 フリードリヒ医師が患者に声をかけた。


「必ず治します」


「お願いします……」


 患者の声は弱々しい。


 でもその目には、希望の光がある。


 私たちを信じてくれている。


 その信頼に応えなければ。





 麻酔が投与され、患者の意識が朦朧としてきた。


「では、始めます」


 フリードリヒ医師が宣言した。


 私は助手として、すぐ横に立つ。


 メスが皮膚に触れ、切開が始まった。


 上腹部、正中線に沿って約十五センチの切開。


 血が滲み出てくる。


「ガーゼ」


 医師が言い、看護師が渡す。


 私は鉗子で組織を広げる。


 視野を確保しながら、出血を最小限に抑える。


 皮下組織、筋層を一層ずつ剥離していく。


 慎重に、でも迅速に。


 腹膜を開くと、内臓が見えてきた。


 肝臓、胃、腸管——全てが整然と配置されている。


 そして胃の表面に——腫瘍があった。





 約五センチの塊。


 白っぽく、周囲の組織とは明らかに異なる。


「これですね」


 フリードリヒ医師が確認する。


「かなり大きい。胃壁に深く入り込んでいる可能性があります」


 医師が慎重に腫瘍の周囲を観察する。


「リーゼさん、鉗子で胃を固定してください」


「はい」


 私は鉗子で胃を優しく掴む。


 しっかりと、でも組織を傷つけないように。


 医師がメスで腫瘍の周囲を切開し始めた。


 胃壁を慎重に切り開いていく。


 一層ずつ、丁寧に。


 突然、出血が始まった。


 小さな血管が切れたのだ。


「ガーゼ、圧迫」


 医師が冷静に指示する。


 看護師がすぐにガーゼを渡し、医師が圧迫する。


 でも出血は止まらない。


「結紮が必要です」


 医師が言った。


「リーゼさん、血管を鉗子で掴んでください」





 私は血管を探す。


 出血している箇所——そこだ。


 鉗子で血管を掴む。


 確実に、でも優しく。


「掴みました」


「よし」


 フリードリヒ医師が糸で血管を結紮する。


 二重結紮——確実に止血する。


 出血が止まった。


「ナイスアシストです」


 医師が言った。


 私はほっとした。


 手術は続いた。


 腫瘍の剥離が進む。


 医師の手が正確に動く——一つ一つの動作が慎重で、確実だ。


 私は助手として、器具を渡し、組織を保持し、視野を確保する。


 全ての動作を正確に、タイミング良く。





 やがて腫瘍が完全に剥離された。


「摘出完了」


 フリードリヒ医師が言った。


 約五センチの腫瘍が取り出された——白い塊。


「後で詳しく調べます」


 医師が看護師に渡した。


「良性か悪性か、判定する必要があります」


 次に胃壁の縫合。


 開いた胃壁を閉じなければならない。


「リーゼさん、縫合してみますか?」


 フリードリヒ医師が突然言った。


「え……私がですか?」


「ああ。あなたの縫合技術は素晴らしいと聞いています」


 医師は微笑んだ。


「この機会に、胃壁縫合を経験してほしい」


 私は少し躊躇した。


 でも、これもチャンスだ。


「分かりました。やらせていただきます」





 針と糸を手に取った。


 深呼吸——落ち着け。


 胃壁縫合は難しい。


 張力が強すぎると組織が裂ける。


 弱すぎると漏れる。


 適切なバランスが必要だ。


 針を胃壁に刺す。


 九十度の角度で——組織への侵襲を最小限に。


 針を通す。


 反対側に出す。


 糸を引く——適度な張力で。


 強すぎず、弱すぎず。


 組織の断端が軽く接触する程度。


 結ぶ。


 外科結び——確実に、でも優しく。


 一針目、完了。


 二針目、三針目——リズムよく縫合を進める。


 手が自然に動く。


 前世の経験と、この世界での練習。


 全てが一つになっている。





 胃壁の縫合が完了。


「素晴らしい」


 フリードリヒ医師が感嘆した。


「これは……完璧な縫合です」


 看護師たちも驚いた顔をしている。


「十二歳でこの技術……」


 でも、まだ終わりではない。


 腹腔内を洗浄する。


 薬草を煎じた液体で——抗菌作用がある。


 そして閉腹。


 腹膜を縫合、筋層を縫合、皮下組織を縫合、最後に皮膚を縫合。


 一層ずつ、丁寧に。


 最後の糸を結ぶ。


「手術、完了です」


 フリードリヒ医師が宣言した。


 会場から小さな拍手が起こった。


 見学していた医師たちが拍手している。


 私もほっとした。


 難しい手術——成功だった。





 手術が終わり、患者が回復室に運ばれていく。


 私は手術着を脱いだ。


 疲れたが、充実感がある。


 初めての胃腫瘍摘出手術——成功だった。


「リーゼさん、本当に素晴らしかった」


 フリードリヒ医師が言った。


「特に胃壁縫合。あれは完璧でした」


「ありがとうございます」


 私は深く頭を下げた。


「でも、先生の指導があったからこそです」


「謙虚ですね」


 医師は微笑んだ。


「その姿勢を忘れないでください」


 ベルンハルト医師も近づいてきた。


「リーゼさん、見事でした」


「ありがとうございます」


「あなたは本物の外科医です」


 医師は真剣な顔で言った。


「これからも期待しています」





 夕方、医学院に戻った。


 エリーゼとルーカス先輩が待っていた。


「リーゼ、どうだった?」


 エリーゼが興味津々で聞いてきた。


「うまくいったよ」


 私は微笑んだ。


「胃腫瘍の摘出手術——初めての経験だったけど、成功した」


「すごいわ!」


 エリーゼが抱きしめてくれた。


「さすがだな」


 ルーカスも満足そうに頷いた。


「お前の成長は止まらないな」


「でも、まだまだ学ぶことがたくさんあります」


 私は謙遜した。


「今日の手術で、また新しいことを学びました」





 その夜、部屋で今日のことを振り返った。


 胃腫瘍摘出手術——難しい手術だった。


 でも、準備をしっかりしていたから落ち着いて対応できた。


 そして、フリードリヒ医師の指導があったから。


 一人では成し遂げられなかった。


 多くの人の支えがあってこそだ。


 窓を開けると夜風が入ってくる。


 星が美しく輝いている。


「お父様、お母様、マルタさん」


 星に向かって小さく呟いた。


「今日、難しい手術に挑戦しました」


「胃腫瘍の摘出——成功しました」


「患者さんも無事です」


「これからも、もっと難しい手術にも挑戦していきます」


 星が優しく瞬いている。


 まるで祝福してくれているかのように。


 机の上には、明日の予定表があった。


 授業、実習、研究、そして一年生への指導。


 全てが大切な仕事だ。


 一つ一つ、丁寧にこなしていく。





 ベッドに入り、目を閉じる。


 明日からまた新しい日々が始まる。


 でも怖くはない。


 準備はできている。


 仲間がいる。


 そして目標がある——多くの患者を救うこと。


「おやすみなさい」


 小さく呟いて、眠りについた。


 難しい手術への挑戦——それは成功だった。


 そして私はまた一歩、外科医として成長した。


 これからも挑戦は続く。


 もっと難しい手術。


 もっと複雑な症例。


 その全てに立ち向かっていく。


 それが、医師としての道だから。


 少女医師の挑戦は、続いていく。


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