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転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~

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第060話 英雄としての重圧

称号授与式から三日が過ぎた。


王国医学協会認定医師——その称号を得た私に、多くの人が声をかけてくる。


「リーゼ先生、おめでとうございます」


「史上最年少の認定医師です」


「素晴らしい」


廊下を歩くたびに、学生たちが立ち止まって私を見る。


尊敬の眼差し。憧れの眼差し。


そして少し距離を置いた眼差し。


以前は親しく話しかけてくれた学生たちが、今は少し遠慮している。


「リーゼ先生」と呼ぶ声が増えた。「リーゼさん」ではなく。


距離ができている。


英雄——そう呼ぶ人もいる。


でも、英雄なんて大それたものじゃない。


私はただ、前世の知識を使っているだけ。それは、チートみたいなものだ。


本当の英雄は、何も持たないところから努力して、何かを成し遂げる人だ。私みたいに、最初から知識を持ってる人間じゃない。


自己嫌悪が湧き上がる。


胸が苦しい。





朝、目が覚めた。


頭が重い。昨夜もあまり眠れなかった。


三日連続だ。


ベッドから起き上がる。体がだるい。


鏡を見た。


目の下に隈がある。顔色が悪い。


十二歳の少女——でも疲れ切った顔をしている。


「大丈夫……」


自分に言い聞かせた。


「今日も頑張らないと」


でも心の中では分かっている。


限界が近い。


朝食を食べる。でも味がしない。食欲がない。


無理やり口に入れる。体力をつけないと。


時計を見た。


八時。授業まであと一時間。


机の上には、昨夜読みきれなかった医学書が積まれている。


そして山のような手紙。


「治療法を教えてください」


「患者を診てください」


「講演をお願いします」


「論文を共同執筆しませんか」


全部で三十通以上。


どれも重要な依頼だ。断ることはできない。


でも、時間が足りない。


一日は二十四時間しかない。


授業、実習、指導、研究——それだけで手一杯なのに。


頭が痛くなってきた。


こめかみを押さえる。


「どうすれば……」


答えが見つからない。





授業に向かう。


廊下で何人もの人に声をかけられた。


「リーゼ先生、少しお時間よろしいですか?」


「申し訳ありません、急いでいるので……」


「リーゼ先生、この患者さんを診ていただけませんか?」


「後で資料を見せてください」


「リーゼ先生、王立病院からの依頼ですが……」


「申し訳ありません、今は……」


断りながら歩く。


罪悪感が募る。


みんな真剣に頼んでいるのに。


でも、全てに応えられない。


物理的に無理だ。


教室に着いた時には、すでに疲れていた。





授業が終わり、研究室に戻った。


机の上には、さらに手紙が増えていた。


十通以上。


全部開封して読む。


どれも切実な内容だ。


「娘が原因不明の病気で苦しんでいます。どうかお力を貸してください」


「治療法を教えていただけないでしょうか。何人もの患者が待っています」


「王都以外の地方でも、あなたの知識を広めたいのです。講演をお願いできませんか」


一つ一つが重い。


命がかかっている。


でも、どうすればいい。


一人の私に、何ができる。


頭を抱えた。


「無理だ……」


小さく呟いた。


「私一人じゃ、無理だ……」


涙が溢れそうになった。


でも泣けない。


泣いている時間もない。


次の授業まであと三十分。


その前に、この論文を読まなければならない。


そして実習の準備もしないと。


ページを開く。


でも文字が頭に入ってこない。


集中できない。


頭痛がひどくなってきた。


「リーゼ」


ドアが開いて、エリーゼが入ってきた。


「また一人で抱え込んでるの?」


友人の声が優しい。


「エリーゼ……」


「顔色悪いわよ」


エリーゼが心配そうに私を見る。


「ちゃんと休んでる?」


「休む時間が……」


「ダメよ」


エリーゼは真剣な顔で言った。


「あなたが倒れたら、もっと多くの人が困るのよ」


その言葉に、私は耐えられなくなった。


涙が溢れた。


「エリーゼ……」


声が震える。


「私、もう……」





「私、もう限界かもしれない」


正直に言った。


涙が止まらない。


エリーゼが私を抱きしめてくれた。


「泣いていいのよ」


優しい声。


「あなたは十分頑張ったわ」


「でも、みんな私に期待してる」


私は嗚咽しながら言った。


「王国医学協会認定医師——その称号を受けた以上、期待に応えないと」


「リーゼ」


エリーゼが私の肩を掴んで、まっすぐ見つめた。


「あなたは完璧じゃなくていいのよ」


「でも……」


「聞いて」


エリーゼは強い口調で言った。


「みんなあなたに完璧を求めてるわけじゃないわ。ただ、あなたが一生懸命やってくれること、それを見たいだけ」


「あなたが無理をして倒れるより、健康でいてくれる方がずっと大切なの」


その言葉が心に染みた。


「それに」


エリーゼは優しく微笑んだ。


「英雄だって、人間よ。悩むし、不安になる。疲れるし、泣くこともある。それでいいの」


「完璧な英雄なんて、いないわ。みんな、人間なの」


私はエリーゼの肩で泣き続けた。


どれくらい泣いただろう。


十分後、やっと落ち着いた。


「ごめんなさい……」


「謝らないで」


エリーゼが微笑んだ。


「友達でしょ。こういう時のために、私はここにいるの」


「ありがとう、エリーゼ」


少し心が軽くなった。


友人の言葉は、いつも私を救ってくれる。


「今日の実習、私が代わりに見るわ」


エリーゼが提案した。


「あなたは休んで」


「でも……」


「いいから」


エリーゼは強く言った。


「休むことも、仕事の一部よ。特に医師はね」


「分かった……」


私は素直に頷いた。





その夜、ヴィルヘルム先生に呼ばれた。


院長室に入ると、先生が心配そうな顔で私を見た。


「リーゼ、座りなさい」


私は椅子に座った。


「最近無理をしているようだな」


先生の声が優しい。


「エリーゼから聞いた。今日、研究室で泣いていたそうだ」


「申し訳ありません……」


「謝る必要はない」


先生は首を横に振った。


「むしろ、私が謝るべきだ。お前に称号を受けさせたことで、こんなプレッシャーをかけてしまった」


「いえ、それは……」


「リーゼ」


先生は真剣な顔で私を見た。


「お前は確かに優秀だ。前世の知識があるとはいえ、それを実践する能力も素晴らしい」


「でもな」


先生は続けた。


「お前はまだ十二歳の子供でもある。無理をすれば体を壊す」


「自分の限界を知ること——それも医師として大切な資質だ」


先生の言葉が胸に響いた。


「実は、私もお前と同じ経験をしたことがある」


「え?」


「若い頃、私は優秀な医師として評判だった」


先生が遠い目をした。


「多くの患者を診て、多くの手術をして、多くの論文を書いた」


「休みなく働いた。睡眠時間は三時間。食事もまともに取らなかった」


「そして——」


先生は苦い顔をした。


「倒れた」


「手術中に、意識を失った」


私は息を呑んだ。


「幸い、助手がすぐに対応してくれて患者は無事だった。でも、一歩間違えれば大惨事だった」


「それ以来、私は学んだ」


先生は私をまっすぐ見た。


「休むことの大切さを。自分の限界を認めることの重要性を」


「医師は患者を救う仕事だ。でも、自分が倒れたら誰も救えない」


「だから、休みなさい」


先生が命じた。


「明日は授業も実習も休んで、ゆっくり休息を取りなさい」


「でも、学生たちが……」


「私が見る」


先生は断言した。


「お前の健康の方が大切だ」


「はい……」


私は頷いた。


涙が溢れた。


先生の優しさが、心に染みる。


「ありがとうございます」


「いいんだ」


先生が微笑んだ。


「お前は医学院の宝だ。大切にしなければならない」





翌日、私は久しぶりに休日を取った。


朝、ゆっくり起きた。


十時——いつもなら授業の真っ最中だ。


でも今日は休み。


罪悪感がある。


でも、休まなければならない。先生の命令だ。


窓を開けると、爽やかな風が入ってくる。


いい天気だ。


ノックの音。


「はい」


ドアが開いて、ルーカス先輩が立っていた。


「よ、リーゼ。ヴィルヘルム先生から聞いた。今日は休みだって」


「はい……」


「じゃあ、王都の公園に行こう」


ルーカス先輩が微笑んだ。


「気分転換だ」





王都の中央公園に来た。


広い公園で、木々が並び、花が咲いている。


「久しぶりだな、こうやって二人で出かけるの」


ルーカス先輩が言った。


「はい。最近、忙しすぎました」


公園は静かで、鳥のさえずりだけが聞こえる。


噴水の音が心地よい。


水しぶきが日光を浴びて、虹を作っている。


きれいだ。


ベンチに座った。


風が吹いて、木の葉がそよぐ。


「なあ、リーゼ」


ルーカス先輩が言った。


「お前、称号を受けてから顔色悪かったぞ」


「そうですか……」


「プレッシャー感じてるだろ」


ルーカス先輩は私を見た。


「英雄と呼ばれることの重さ」


「はい」


私は正直に答えた。


「みんなの期待に応えなきゃって思うと……胸が苦しくて」


「夜も眠れないんです。手紙の山を見ると、頭が痛くなって」


「全部に応えたいけど、物理的に無理で……」


「リーゼ」


ルーカス先輩は真剣な顔で言った。


「お前は確かにすごい。史上最年少の認定医師だ。誰も成し遂げたことがないことを成し遂げた」


「でも、完璧である必要はない」


「人間は誰でも限界がある。それを認めることは、弱さじゃない。むしろ強さだ」


「本当に強い人間は、自分の限界を知っている。そして、それを認める勇気がある」


その言葉が心に響いた。


「でも、私は前世の知識を使ってるだけで……」


思わず本音が漏れた。


「それって、ずるいんじゃないかって」


「みんなは私を天才だって言うけど、実際は前世で学んだことを思い出してるだけ」


「それって、チートみたいなもので……」


「ずるい?」


ルーカス先輩は首を横に振った。


「知識を持っていることと、それを使うことは別だ」


「お前は、その知識を人のために使った。それが大切なんだ」


「知識があっても何もしない人は大勢いる。でもお前は違う。困っている人を助けるために、その知識を使った」


「それに」


ルーカス先輩は続けた。


「お前が知識を使えるのは、前世で努力したからだろ? 医学部で必死に勉強して、研修医として徹夜で働いて、医師として経験を積んだ」


「その努力の結果を今使ってる。それは正当なことだ」


確かに。


前世で、私は必死に勉強した。


医学部の試験、国家試験、専門医試験——全部必死だった。


研修医時代は、毎日徹夜だった。


外科医として、何百回と手術をした。


その努力があったからこその知識だ。


「ありがとうございます、ルーカス先輩」


私は微笑んだ。


「少し、楽になりました」


「それに、リーゼ」


ルーカス先輩が優しく言った。


「お前は前世の知識だけじゃない。この世界でも、毎日努力してる」


「授業、実習、研究——全部全力でやってる。それを見てる」


「だから、みんなお前を尊敬してるんだ。知識があるからじゃない。努力してるからだ」


その言葉が嬉しかった。





公園の奥に、小さな池があった。


水面に、空が映っている。


白い雲が流れている。


青い空、緑の木々、色とりどりの花。


「きれいですね」


「ああ」


二人で池を眺めながら、しばらく黙っていた。


静寂。


でも、心地よい静寂。


こういう静かな時間も、必要なんだ。


医師として、研究者として、そして一人の人間として。


バランスを取ること。


それが、長く走り続けるための秘訣だ。


前世で学んだはずなのに、また同じ過ちを繰り返そうとしていた。


働きすぎて、体を壊して……。


今度こそ、気をつけよう。


「なあ、リーゼ」


ルーカス先輩が言った。


「お前、英雄になりたいのか?」


「え?」


「英雄って何だと思う?」


突然の質問に、私は考えた。


「英雄……困難を乗り越えて、多くの人を救う人?」


「それもあるな」


ルーカス先輩は頷いた。


「でも、俺が思う英雄は違う」


「英雄っていうのは、完璧な人間じゃない。むしろ、欠点だらけの人間だ」


「でも、その欠点を認めて、それでも諦めずに前に進む」


「失敗しても立ち上がる。泣いても、また笑う」


「そういう人が、本当の英雄だと思う」


その言葉が深く心に響いた。


「完璧な英雄なんていない。みんな、人間だ」


「でも、人間だからこそ、美しい」


ルーカス先輩が微笑んだ。


「お前も、完璧じゃなくていい。泣いていい。弱音を吐いていい」


「でも、諦めずに前に進む。それがお前の強さだ」


涙が溢れた。


でも、今度は悲しい涙じゃない。


温かい涙。


「ありがとうございます」


私は微笑んだ。


「先輩の言葉、一生忘れません」





公園から戻ると、医学院の前に学生たちが集まっていた。


「何かあったんですか?」


「リーゼ先輩!」


一年生の女子学生が駆け寄ってきた。


「お休みと聞いて、心配していました」


他の学生たちも集まってくる。


一年生、二年生——約二十人。


みんな心配そうな顔をしている。


「先輩、いつも無理をさせてすみません」


一年生の男子学生が言った。


「少しは休んでください。私たちも、先輩が元気でいてくれることが一番大切です」


「そうです」


別の学生が続けた。


「先輩が倒れたら、私たちも困ります」


「これ」


一人の女子学生が花束を差し出した。


きれいな花束——白い百合、赤い薔薇、黄色い向日葵。


「みんなで集めました。先輩への感謝の気持ちです」


その言葉に、私は胸が熱くなった。


「みなさん……ありがとうございます」


涙が溢れそうになった。


英雄と呼ばれるプレッシャー。


でも、それと同時に、こんなにも温かい支援がある。


私は一人じゃない。


多くの人に支えられて、ここまで来れた。


その事実を、改めて実感した。


「私、頑張ります」


私ははっきりと言った。


「でも、無理はしません。みんなの期待に応えるためには、まず私が健康でいないといけないから」


学生たちが微笑んだ。


「はい、それでいいんです」


「先輩、無理しないでください」


「私たちも、先輩を支えます」





トーマスとクラウディアも来てくれた。


「リーゼ、無理するなよ」


トーマスが言った。


「お前は確かにすごい。でも、人間だ。休むことも大切だ」


「そうよ」


クラウディアも頷いた。


「私たちも、あなたを支えたいの。何でも相談してね」


「手紙の返事とか、私たちが手伝えることもあるはずよ」


「本当?」


「もちろん」


クラウディアが微笑んだ。


「友達でしょ」


「ありがとう」


私は心から感謝した。


友人たち、先輩、先生。


そして学生たち。


みんなが私を支えてくれている。


その温かさが、心に染みた。





その夜、部屋で日記を書いた。


『英雄と呼ばれることは、重い』


ペンを走らせる。


『でも、その重さは、人々の期待と信頼の証でもある』


『完璧である必要はない。ただ、誠実に、一生懸命に。それだけでいいんだ』


『そして、一人で抱え込む必要もない』


『多くの人が支えてくれている。エリーゼ、ヴィルヘルム先生、ルーカス先輩、トーマス、クラウディア、そして学生たち』


『その温かさを忘れずに、前に進もう』


『英雄じゃなくていい。完璧な医師じゃなくていい』


『ただ、努力し続ける一人の人間として』


ペンを置き、窓の外を見る。


星が優しく輝いている。


「お父様、お母様、マルタさん」


星に向かって小さく呟いた。


「称号を受けて、プレッシャーを感じていました」


「みんなの期待に応えなきゃって、必死でした」


「でも、分かりました」


「完璧じゃなくていいんだって」


「多くの人が支えてくれています」


「友人、先輩、先生、そして学生たち」


「私は一人じゃありません」


「これからも、みんなと一緒に頑張ります」


「でも、無理はしません」


「長く走り続けるために、休むことも大切にします」


星が優しく瞬いている。


まるで応援してくれているかのように。


微笑みかけてくれているかのように。


窓を閉めて、ベッドに向かった。





ベッドに入り、目を閉じる。


今日は久しぶりにぐっすり眠れそうだ。


心が軽い。


プレッシャーは消えたわけじゃない。


でも、受け止め方が変わった。


一人で背負う必要はない。


みんなと一緒に。


明日からも、医師として前進しよう。


完璧な英雄ではなく、努力する一人の医師として。


そして、支えてくれる人々への感謝を忘れずに。


「おやすみなさい」


小さく呟いて、眠りについた。


深い眠り。


夢を見た。


父様、母様、マルタさんが微笑んでいる夢。


「頑張ってるね、リーゼ」


マルタさんの優しい声。


「でも、無理しちゃだめよ」


「はい」


夢の中で、私は答えた。


「分かってます」


朝、目が覚めた。


久しぶりにすっきりした目覚めだ。


体が軽い。


頭痛もない。


窓を開けると、朝日が差し込んできた。


新しい一日の始まり。


「よし」


小さく呟いた。


「今日から、また頑張ろう」


でも、無理はしない。


バランスを取りながら。





医学院に向かう。


廊下で学生たちに会った。


「リーゼ先輩、おはようございます」


「顔色良くなりましたね」


「休めましたか?」


みんな心配してくれている。


「はい、おかげさまで」


私は微笑んだ。


「しっかり休めました。ありがとうございます」


「よかった」


学生たちが安心した顔をしている。


教室に着いた。


ヴィルヘルム先生が待っていた。


「リーゼ、顔色が良くなったな」


「はい、先生のおかげです」


「よし」


先生が微笑んだ。


「では、今日から無理のない範囲で、また頑張ろう」


「はい」


私は力強く頷いた。



英雄としての重圧——それを乗り越えた。


一人ではなく、みんなと一緒に。


これからも、その姿勢を大切にしていく。


完璧な英雄ではなく、努力し続ける一人の医師として。


少女医師の挑戦は、続いていく。

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― 新着の感想 ―
完全に設定が破綻してしまいましたね。なかなか難しいですねえ。
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