表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/112

第47話 初めての講習会

王宮での医学会から一週間が過ぎた。


今日は、講習会の第一回目だ。


朝から緊張で落ち着かなかった。何度も資料を確認する——説明する内容、デモンストレーションの手順、予想される質問とその答え。全てをノートに書き出してある。


でも不安が消えない。ちゃんと教えられるだろうか、医師たちに理解してもらえるだろうか。


「リーゼ、大丈夫?」


エリーゼが、心配そうに声をかけてきた。


「はい……なんとか」


「緊張してるのね」


「はい……すごく」


正直に答えた。


「でも、リーゼなら大丈夫よ」


エリーゼは、励ましてくれた。


「あなたの技術は、本物なんだから」


「自信を持って」


「ありがとうございます」



講習会の会場は医学院の大講義室だった。階段状の座席、百人以上が入れる広い部屋——中央にはデモンストレーション用の台が準備されている。


私は早めに会場に到着した。最終確認をする——器具は揃っているか、豚の皮膚は準備されているか。全てをチェックする。


やがて医師たちが入ってき始めた——若い医師、中年の医師、老齢の医師。様々な年齢層だ。


みんな真剣な顔をしているが、中には懐疑的な目で私を見る人もいる。十二歳の子供から何を学べるのか——そんな視線が感じられる。


でも負けない。実力で認めてもらう。



定刻になった。会場はほぼ満席で、約八十人の医師たちが座っている。


ヴィルヘルム先生が演台に上がった。


「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」


先生の声が、会場に響いた。


「第一回縫合技術講習会を、開催いたします」


「講師は、リーゼ・フォン・ハイムダル先生です」


先生が、私を紹介してくれた。


「彼女は、十二歳にして医学院の実技試験で満点を取りました」


「そして、王宮での医学会でも、素晴らしいデモンストレーションをされました」


「本日は、彼女の縫合技術を学んでいただきます」


拍手が起こった。


でも一部の医師はまだ懐疑的な顔をしている。


私は深呼吸した。落ち着け——大丈夫。


演台に上がる。数十人の視線が私に注がれている。


「初めまして、リーゼ・フォン・ハイムダルです」


私は、はっきりと言った。


「本日は、基本的な縫合技術について、お教えいたします」



「縫合は、外科手術の基本中の基本です」


私は、説明を始めた。


「しかし、正確な縫合ができる医師は、意外と少ないのが現状です」


会場が、少しざわついた。


おそらく、自分の技術に自信がある医師たちが、反発を感じているのだろう。


「私が言う『正確な縫合』とは」


私は続けた。


「組織へのダメージを最小限にし、傷の治癒を最速にし、そして傷跡を最小限にする縫合です」


台の上の豚の皮膚を指差した。


「これから、その技術をお見せします」


針と糸を手に取る。


「まず、針の持ち方から」


針を指で挟む——親指と人差し指で。


「針はこのように持ちます。しっかりと、でも力を入れすぎず、針の三分の一くらいの位置を持つのが理想的です」


医師たちが、真剣にメモを取っている。


「次に、針を刺す角度です」


豚の皮膚に針を近づける。


「組織に対して、九十度の角度で刺します」


「これにより、組織への侵襲が最小限になります」


針を刺す——慎重に、でも確実に。反対側に通す。


「針を通す時は、手首を使います」


私は手の動きをゆっくりと見せた。


「腕全体で動かすのではなく、手首の回転で針を通します。こうすることで、より精密なコントロールができます」


医師たちが、身を乗り出して見ている。



「次に、糸の張力です」


私は糸を引いた——適度な力で。


「強すぎると組織が壊死します。弱すぎると傷が開きます。では、どのくらいが適切か」


私は組織の断端を見せた。


「組織の断端がこのように軽く接触する程度——隙間がないように、でも圧迫しすぎないように。この感覚を体で覚えることが重要です」


結ぶ。


一針目、完了。


「結び目も重要です」


私は、結び目を見せた。


「外科結びを使います」


「一回目は右から、二回目は左から」


「こうすることで、結び目が緩みにくくなります」


さらに縫合を続けた——二針目、三針目、四針目。


一針ごとに丁寧に説明する。針の角度、糸の張力、結び目の作り方——全てを詳しく説明する。


医師たちは、真剣に聞いている。


メモを取る音が、会場中に響いている。


七針目、八針目。


ほぼ完了。


最後の糸を結ぶ。


「完了です」


私は完成した縫合を見せた——綺麗な一直線、均等な間隔、適度な張力。


「これが基本的な縫合です」


私は言った。


「簡単に見えるかもしれません。でも、一つ一つの動作を正確に行うことで、このような美しい縫合ができます」



「では、実習の時間です」


私は、会場を見渡した。


「皆さんも、実際に縫合してみてください」


助手たちが、各席に豚の皮膚と器具を配った。


医師たちが、それぞれ縫合を始める。


私は、会場を回って一人一人を見た。


ある中年の医師が、苦戦していた。


針の角度が、浅い。


「先生、少し角度が浅いですね」


私は、優しく指摘した。


「もう少し、垂直に近い角度で刺してみてください」


「こう……ですか?」


医師が、やり直す。


「そうです。その角度が良いです」


「なるほど……こうすると、確かに通しやすい」


医師は、納得したようだった。


別の若い医師は、糸の張力が強すぎた。


「先生、少し張力が強すぎます」


私は、指摘した。


「組織が白くなっているのが見えますか?」


「あ、本当だ……」


「これは、血流が悪くなっている証拠です」


「もう少し緩めに引いてみてください」


「こうですか?」


「はい。その張力が適切です」


若い医師は、メモを取った。


一人一人にアドバイスをする——針の持ち方、刺す角度、糸の張力、結び目の作り方。全てを丁寧に教える。


医師たちは真剣に聞いている。最初の懐疑的な目はもうない——みんな学ぼうという姿勢だ。



二時間後。


講習会が終わった。


「本日は、ありがとうございました」


私は、深く頭を下げた。


「次回は、より高度な縫合技術について教えます」


「皮下縫合、連続縫合など」


「楽しみにしていてください」


拍手が起こった。


大きな拍手。


会場中が、拍手している。


医師たちが、次々と近づいてきた。


「リーゼ先生、素晴らしい講習でした」


ある医師が、言った。


「正直、最初は半信半疑でした」


「でも、実際に見て、やってみて、分かりました」


「あなたの技術は、本物です」


「ありがとうございます」


私は、謙遜した。


「でも、まだまだ学ぶことがたくさんあります」


「その謙虚さも、素晴らしい」


別の医師が、言った。


「私も、もっと学びたいです」


「次回も、必ず参加します」


次々と感謝の言葉を言われた。


私は少しほっとした——初めての講習会、成功だった。



講習会の後、ヴィルヘルム先生が声をかけてきた。


「リーゼ先生、素晴らしかったです」


「ありがとうございます」


「教え方も、とても分かりやすかった」


先生は、満足そうに言った。


「医師たちも、満足していました」


「次回も、期待しています」


「はい。頑張ります」


部屋に戻ると、エリーゼとルーカス先輩が待っていた。


「リーゼ、どうだった?」


「うまくいきました」


私は、微笑んだ。


「みんな、真剣に聞いてくれました」


「そうだろうな」


ルーカスが、満足そうに言った。


「お前の技術なら、当然だ」


「でも、少し疲れました」


私は、正直に言った。


「八十人に教えるのは、大変でした」


「そうよね」


エリーゼが、優しく言った。


「ゆっくり休んで」


「はい」



その夜、部屋で今日のことを振り返った。


初めての講習会——最初は不安だったが、やってみれば意外とできた。医師たちは真剣に聞いてくれ、そして学んでくれた。


これは大きな意味がある。私の技術が他の医師に伝わり、その医師たちが患者を救う。間接的にもっと多くの人を救える——それが教えることの意義だ。


窓を開けると夜風が入ってくる。星が美しく輝いている。


「お父様、お母様、マルタさん」


星に向かって小さく呟いた。


「今日、初めて講習会を開きました。八十人の医師たちに教えました。みんな真剣に聞いてくれました——私の技術が、王国中に広がっていきます」


星が優しく瞬いている——まるで祝福してくれているかのように。


ベッドに入り、目を閉じる。


今日は大きな一日だった——でも良い疲れだ。やりがいのある疲れ。


「おやすみなさい」


小さく呟いて、眠りについた。


初めての講習会——成功だった。そしてこれからも続いていく。


月に一度の講習会、毎回新しい技術を教える——それが私の新しい役割だ。医師として、教師として。


少女医師の挑戦は、さらに広がっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ