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転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~

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第40話 同級生たちの反応

皮膚病の件から一週間が過ぎた。

私の名前は医学院中に知れ渡っていた。


「原因不明の皮膚病を、たった一人で解決した」「十二歳の天才医師」「疫病を封じ込めた実績を持つ」


噂はあっという間に学生たちの間に広がった。

廊下を歩くとみんなが私を見る——尊敬の眼差し、好奇の視線、そして羨望と嫉妬の目。


注目されることの重さを、初めて実感していた。



ある朝、講義室に入るといつもと空気が違っていた。

学生たちがひそひそと話しているが、私が現れると会話が途切れる。

一斉に向けられる視線。


居心地の悪さに胸が締め付けられる。

私はいつもの席に座った。


エリーゼが心配そうに声をかけてくれる。


「リーゼ、大丈夫?」


「はい……でも、何か雰囲気が……」


「あのね……」


エリーゼは声を潜めた。


「一部の学生たちが、リーゼのことを快く思ってないの」


「え……?」


「『子供のくせに偉そうだ』とか『特別扱いされてる』とか……そんな陰口を叩いてる人たちがいるの」


その言葉に動揺を隠せない。

確かに私は若い——十二歳で、他の学生より十歳近く年下。

特別に見えるのは仕方ないのかもしれないが……


「気にしちゃダメよ」


エリーゼが私の肩を叩く。


「妬んでるだけ。リーゼの実力を認めたくない人たちの僻みよ」


「でも……」


「大丈夫。本当の仲間は、リーゼの味方だから」


その時、教室の扉が開いた。

ヴェルナー先生が入ってくる。


今日は解剖学の中間試験の日だった。



問題用紙が配られる。

骨格の名称、筋肉の構造、神経の走行——全て授業で学んだ内容だった。


私は集中して解答していく。

前世の医学知識とこの世界での学びを融合させ、一問一問丁寧に答える。

周囲の緊張した空気を感じながらも、手は迷いなく動いた。


一時間後、試験終了。


ヴェルナー先生が解答用紙を回収し、その場で採点を始める。

学生たちは不安そうに結果を待っていた。


私も少し緊張していた。

注目されている今、もし悪い結果だったら——


十分後。


「結果を発表します」


ヴェルナー先生の声が響く。


「首席は……リーゼ・フォン・ハイムダル。満点です」


教室がざわめいた。


「また、リーゼか……」


「当然だろう。子供は暗記が得意だからな」


「特別扱いされてるんじゃないか?」


ひそひそ声が聞こえてくる。

その言葉の一つ一つが胸に突き刺さった。


私は不正をしていない。

ただ一生懸命勉強しただけ。

それなのに……



昼食時間。

食堂でルーカス先輩とエリーゼが待っていてくれた。


「リーゼ、満点おめでとう!」


エリーゼが嬉しそうに言う。


「ありがとうございます」


複雑な気持ちで答える。


「でも、何だか居心地が悪くて……」


「気にするな」


ルーカスが力強く言った。


「妬む奴はどこにでもいる。だが実力ある者は最終的に認められる。それがこの医学院の伝統だ」


「そうよ」


エリーゼも頷く。


「リーゼは実力で評価されてるの。年齢じゃない、実績で」


二人の言葉に少し勇気が湧いてくる。


その時——


「やあ、天才少女さん」


背後から皮肉めいた声がかけられた。

振り返ると、一人の男子学生が立っていた。

二十歳くらい、背が高く自信に満ちた表情。

鋭い目つきに、どこか挑戦的な雰囲気を漂わせている。


「君が噂のリーゼ・フォン・ハイムダルか」


「はい……」


「俺はフリードリヒ・フォン・エーベルハルト。二年生だ」


フリードリヒ——成績優秀でプライドが高いと評判の学生。

その名前は何度か耳にしていた。


「君、本当に十二歳なのか?」


「はい」


「へえ……それで解剖学試験満点か」


彼は腕を組む。


「すごいね。暗記が得意なんだろう」


その言葉に明らかな棘がある。


「いえ……ただ勉強しただけです」


「そうか」


フリードリヒは冷笑を浮かべた。


「だが暗記だけじゃ医者にはなれないぞ。実践が大切だ」


「それは承知しています」


はっきりと答える。


「だからここで学んでいます」


「ほう……」


彼は興味深そうに私を見つめた。


「じゃあ実践的な知識を試してみようか」


「え……?」


「簡単な質問だ」


フリードリヒの表情が真剣になる。


「患者が激しい腹痛と嘔吐を訴えている。右下腹部に強い圧痛がある。何の病気だと思う?」


虫垂炎——瞬時に診断がついた。

前世でもこの世界でも診たことがある症状だ。


「虫垂炎だと思います」


「正解」


彼は頷く。


「では治療法は?」


「外科的切除です。虫垂を摘出して感染拡大を防ぎます」


「ほう……」


フリードリヒは少し驚いたようだった。


「具体的な手術手順は?」


「腹部を切開して虫垂を露出させます」


詳しく説明し始める。


「根部を結紮してから切除し、断端を処理します。腹腔内を洗浄してから層別に閉腹します」


教室が静まり返った。

みんな驚愕の表情で私を見つめている。


「……君、本当に手術を見たことがあるのか?」


フリードリヒの声に驚きが混じる。


「いえ……」


少し躊躇したが、正直に答えることにした。


「実際に執刀したことがあります」


「何……?」


フリードリヒだけでなく、周囲の学生たちも息を呑んだ。


「十二歳で手術を?」


「はい。故郷の村で虫垂炎の患者さんを手術しました」


オットーのことを思い出す。


「幸い成功し、患者さんは完全回復されました」


教室がざわめいた。


「本当なのか……?」


「十二歳で手術なんて……」


フリードリヒは複雑な表情を浮かべている——驚き、疑念、そして僅かな尊敬の念が混じり合っているようだった。


「……参ったな」


彼は小さく呟く。


「俺もまだ見学しかしたことがない。君はもう実戦経験があるのか」


その言葉で、周囲の空気が変わったのを感じた。

単なる「暗記の得意な子供」ではなく、本物の実力を持つ医師として見る目に変わりつつある。



午後は病理学の授業だった。

病気のメカニズム、症状、診断法を学ぶ科目で、担当はハインリヒ先生——厳格だが知識豊富な教授として有名だ。


「今日は感染症について学びます」


ハインリヒ先生が黒板に精密な図を描き始める。


「感染症とは病原体が体内に侵入・増殖することで発症する疾患群です。病原体には細菌、真菌、寄生虫などがあります」


前世の知識と照らし合わせながら真剣に聞く。

この世界の医学は細菌の存在を理論的には理解しているが、顕微鏡技術がないため直接観察はできない。

そのため経験と推論に基づいた医学が発達している。


「例えば疫病」


ハインリヒ先生が続ける。


私は身を乗り出した。


「疫病は接触感染や飛沫感染で拡大します。隔離と衛生管理が予防の要となります」


「リーゼ君」


突然、先生が私の名前を呼んだ。


「はい」


立ち上がる。


「君は疫病封じ込めの実績があると聞いています。具体的にどのような対策を講じましたか?」


教室中の視線が集まる。

今度は試すような目ではなく、純粋に学びたいという目だった。


「まず患者の完全隔離を実施しました」


冷静に答える。


「健康者と患者の接触を遮断し、感染拡大を防止しました」


「次に徹底した衛生管理——手洗い、煮沸消毒、室内換気を義務化しました」


「治療面では症状別の対症療法を行いました。高熱には解熱剤、咳には去痰薬、脱水には水分・電解質補給」


「そして栄養管理も重視しました。免疫力維持のため、可能な限り栄養価の高い食事を提供しました」


ハインリヒ先生は満足そうに頷く。


「完璧です。まさに教科書通りの対策ですね。しかし五百人以上の患者に実際に対応したのは驚異的です」


周りの学生たちがまた驚きの声を上げる。


「五百人……?」


「本当にそんな大規模な疫病を……?」


私は少し照れくさくなった。


「はい……でも一人の力ではありません。師匠のマルタさんや村の人々の協力があったからこそです」


「謙虚ですね」


ハインリヒ先生は微笑む。


「しかしその実績は紛れもない事実です。皆さん、リーゼ君から学んでください。理論だけでなく実践こそが医学の本質なのです」



授業後、教室を出るとフリードリヒが待っていた。


「リーゼ」


「はい?」


「さっきは……すまなかった」


彼は気まずそうに言う。


「君を試すような真似をして」


「いえ……」


「だが君の実力は本物だと分かった」


フリードリヒは真剣な目で私を見つめる。


「年齢なんて関係ない。君は立派な医師だ」


「ありがとうございます」


「俺は……正直に言うと、十二歳の子供に負けるのが悔しかった」


彼は苦笑いを浮かべる。


「プライドが高すぎたんだ」


「でも君から学びたいことがたくさんある」


フリードリヒは手を差し出した。


「友達になってくれないか?」


私は少し驚いたが、嬉しかった。


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


彼の手を握る。


その日からフリードリヒは私の大切な友人となった——最初は対立していた彼が、今では頼れる先輩の一人だ。



夕方、部屋にエーリヒが訪ねてきた。


「リーゼ、調子はどう?」


「はい。少しずつ慣れてきました」


今日の出来事を詳しく話した。

同級生たちの複雑な反応、フリードリヒとの対立と和解、授業での評価——全てを包み隠さず。


「そうか。良かったな」


エーリヒは満足そうに頷く。


「俺も騎士団で頑張ってるよ。最初は厳しかったが、実力を認めてもらえるようになった」


「さすがです、お兄様」


嬉しくなる。

二人とも新しい環境で奮闘し、二人とも実力で評価を勝ち取った。


「お互い頑張ろうな」


エーリヒが私の頭を撫でる。


「ああ、そうだ。来週、休日があるだろう?」


「はい」


「一緒に王都を見て回らないか?」


エーリヒの提案に目を輝かせる。


「行きます!」


「よし。楽しみにしてろよ」



その夜、窓から星空を見上げた。

無数の星が美しく瞬いている——同じ星を故郷でも見ているはずだ。

お父様、お母様、マルタさん。


「みんな、見守っていてください」


小さく呟く。


「私、少しずつ仲間が増えています。最初は大変でしたが、実力を認めてもらえました」


星が優しく瞬いている——まるで励ましてくれているかのように。


ベッドに入り、今日の出来事を反芻する。


同級生たちの反応——嫉妬や反感もあったが、実力を示すことで認めてもらえた。

これが実力主義の医学院の現実だ。

年齢や身分ではなく能力で評価される。

厳しいが公平。

そして私にとって最高の環境だ。


対立から始まったフリードリヒとの関係も、今では貴重な友情に変わった。

人は変われる。

理解し合えば、敵も友になれる。


「明日も頑張ろう」


小さく呟いて目を閉じる。


尊敬できる友人たち、信頼できる先生たち、そして支えてくれる兄。

学ぶべきことはまだ山ほどある。

でも確実に前進している。


少女医師の挑戦は、まだ始まったばかり——



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