表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/110

第22話 評判の広がり ④

ある日の夜。


月明かりの中、私は医療記録を見返していた。


診療所の奥の部屋。

小さな蝋燭が、記録を照らしている。


揺れる炎。

影が、壁に踊る。


この数ヶ月で、百人を超える患者を診た。


重要な症例を清書した羊皮紙の束が、机の上に積まれている。

一人一人の記録。

一つ一つの症例。


そのほとんどが回復し、感謝の言葉を残していった。


「リーゼ様のおかげで、痛みが治りました」

「もう、普通に歩けます」

「ありがとうございます」


その言葉を思い出すと、胸が温かくなる。


でも、中には治せなかった患者もいる。


記録をめくる。

ある記録が目に入る。


「患者番号23。男性、68歳」


高齢で、複数の病気を抱えていた老人。


心臓が弱っていた。

肺も悪かった。

腎臓の機能も低下していた。


できることはすべてやった。

でも、間に合わなかった。


「患者番号51。女児、5歳」


手遅れの状態で運ばれてきた子供。


高熱が三日続いていた。

意識も朦朧としていた。


おそらく、敗血症。

全身に感染が広がっていた。


抗菌作用のある薬草を使った。

解熱処置もした。


でも、この世界には抗生物質がない。


二日後、息を引き取った。


その記録を見ると、今でも胸が痛む。


「もっと早く診られていれば…」


「もっと良い治療法があったのではないか…」


そんな自問自答が、いつも頭を離れない。


蝋燭の炎が揺れる。

影が、大きく動く。


でも、それでいいのだ。


完璧な医師など、いない。


すべての患者を救えるわけではない。

限界がある。


それを認めることが、医師の誠実さだ。


常に反省し、常に学び続ける。


それが、医師の生き方だから。


窓の外では、星が美しく輝いている。


満天の星空。

この世界の、澄んだ夜空。


同じ星空を、東京でも見上げていた。


救急車のサイレンが鳴り響く中、疲れ果てた体で。

病院の屋上で、一人、夜空を見上げた。


あの頃は、孤独だった。


仕事に追われ、休む暇もなく。

誰にも理解されず、一人で戦っていた。


でも、あの頃とは違う。


今の私には、家族がいる。


温かい家族。

優しい父と母。

頼もしい兄。


マルタがいる。


三十年の経験を持つ、信頼できる協力者。

共に学び、共に成長する仲間。


ハインリヒ先生がいる。


正式な医師として、私を認めてくれた人。

必要な時には相談できる、先輩医師。


支えてくれる人々がいる。


「私は、正しい道を歩んでいるのだろうか」


そう自問しながらも、心の中には確信があった。


……いや、本当に確信があるのか?

ただ、そう思いたいだけじゃないのか?


この道は、間違っていない。


多くの人を救い、この世界の医療を変えていく——


それが、私の使命なのだ。


記録を閉じ、私はベッドに横たわった。


柔らかいベッド。

温かい毛布。


明日も、診療が待っている。


どんな患者が来るのだろう。

どんな病気に出会うのだろう。


不安もある。


治せない病気に出会うかもしれない。

難しい症例に直面するかもしれない。


でも、期待の方が大きい。


一人でも多くの人を救いたい。


一つでも多くの知識を得たい。


そして、この世界の医療を、少しでも良くしたい。


その思いを胸に、私は静かに目を閉じた。


窓の外から、夜風が吹き込んでくる。

冷たいが、心地よい風。


遠くで、フクロウが鳴いている。

ホーホーという、穏やかな声。


十一歳の医師、リーゼ・ハイムダルの挑戦は、まだまだ続いていく。


この世界で、多くの命を救うために。


そして、医療という光を、この世界に広げるために。


私の心は、希望に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ