表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
外伝 ベルトルト・ヴァイス編 命の値段

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/237

第5話 恩人への誓い

外伝H ベルトルト・ヴァイス編「命の値段」


外伝H ベルトルト・ヴァイス編「命の値段」


第05話 恩人への誓い


回復は、順調だった。


手術から五日が過ぎ、わしは歩けるようになっていた。


   ◇


「ベルトルト様、経過は良好です」


リーゼが、傷口を確認しながら言った。


「傷も塞がりつつあります。あと数日で、旅ができる状態になるでしょう」


「そうか」


わしは、窓の外を見た。


「そろそろ、王都に戻らねばな」


「商会の者たちも、心配しているだろう」


「はい。でも、無理はしないでください」


リーゼが、真剣な顔で言った。


「傷が完全に治るまでは、激しい動きは控えて」


「分かっている」


わしは、苦笑した。


「年寄りの言うことは聞くものだ——と言いたいところだが」


「お前の言うことなら、聞こう」


リーゼが、小さく微笑んだ。


   ◇


「父上」


ハインツが、部屋に入ってきた。


「少し、外を歩きませんか?」


「外?」


「はい。この診療所の庭、見晴らしがいいんです」


わしは、リーゼを見た。


「先生、大丈夫でしょうか」


「短い散歩なら、問題ありません」


「むしろ、少し動いた方が回復が早まります」


「では、行くか」


わしは、ゆっくりと立ち上がった。


まだ腹は痛むが、歩けないほどではない。


   ◇


診療所の庭は、確かに見晴らしが良かった。


小高い丘の上にあり、領地の景色が一望できる。


緑の草原、遠くに見える森、小さな村々。


「いい景色だな」


わしは、深呼吸をした。


「ああ、生きているというのは……いいものだ」


「父上……」


ハインツが、隣に立った。


「私、考えていたんです」


「何をだ」


「商人として、本当に大切なものは何か」


わしは、息子を見た。


ハインツの表情は、真剣だった。


「父上は、いつも『人を見る目』だと言っていました」


「ああ」


「でも、今回のことで——私は、もう一つ大切なものに気づきました」


「何だ?」


「謙虚さ、です」


   ◇


わしは、少し驚いた。


「謙虚さ?」


「はい」


ハインツは、頷いた。


「父上は、人を見る目に自信がありました」


「でも、リーゼ先生のことは見誤った」


「それは——」


「父上のせいではありません」


ハインツが、真剣に言った。


「誰だって、間違うことはある」


「でも、父上は間違いを認めました」


「そして、謝りました」


「それが、大切なことだと思うんです」


わしは、黙って聞いていた。


「どんなに優れた商人でも、間違うことはある」


「大切なのは、間違いを認め、改められるかどうか」


「謙虚でなければ、それはできない」


「父上は——謙虚さを、持っていた」


「だから、リーゼ先生に謝ることができた」


「そして、先生も父上を許してくれた」


   ◇


わしは、息子を見つめた。


この子は——いつの間に、こんなに成長していたのだ。


「ハインツ」


「はい」


「お前も、いい商人になれるだろう」


「え……」


「人を見る目も大切だが、謙虚さも大切だ」


「お前は、両方を持っている」


わしは、息子の肩を叩いた。


「自信を持て」


ハインツの目に、涙が浮かんだ。


「……ありがとうございます、父上」


   ◇


その夜、わしはマルタと話をした。


「この診療所は、いつからあるのですか?」


「もう何年も前からですよ」


マルタが、お茶を淹れながら答えた。


「領主様——リーゼ様のお父上が、診療所を開きたいとおっしゃって」


「それで、リーゼ先生が医師を?」


「ええ。最初は私が薬草の知識を教えていたんですが……」


マルタは、遠い目をした。


「いつの間にか、リーゼ様の方が詳しくなっていました」


「あの子は、本当に天才ですよ」


わしは、驚いた。


「天才?」


「ええ。医学の知識、薬草の調合、手術の技術——」


「どこでそれを学んだのか、私にも分かりません」


「まるで、前世から医師をやっていたかのように……」


前世——


確かに、あの子供の知識は、尋常ではなかった。


   ◇


「マルタさん」


わしは、真剣に尋ねた。


「リーゼ先生は、なぜ医師をやっているのですか?」


「領主の子供なら、別の道もあったはずだ」


「……」


マルタは、少し考えてから答えた。


「リーゼ様は、こうおっしゃっていました」


「『目の前で苦しんでいる人がいれば、助けたい』」


「『それが、私の使命だ』と」


「使命……」


「ええ」


マルタの目が、温かくなった。


「あの子は、本当に……人を救うことに、すべてを捧げています」


「貴族の地位も、富も、関係ない」


「ただ、人を救いたい」


「それだけなんです」


   ◇


わしは、深く考え込んだ。


命を救うことに、すべてを捧げる。


それが、リーゼ先生という人間だ。


「……すごい子供だ」


「いえ」


マルタが、首を振った。


「子供ではありません」


「え?」


「リーゼ様は、子供の体をしていますが……中身は、違います」


「どこか、悟りを開いた賢者のような……」


「でも、時々ふと、年相応の少女らしさも見せる」


「不思議な方です」


わしは、頷いた。


確かに、あの少女は不思議だ。


子供とは思えない知識と技術。


だが、時折見せる純粋な笑顔。


   ◇


出発の前夜、わしはリーゼの部屋を訪ねた。


「リーゼ先生」


「ベルトルト様。どうかされましたか?」


「明日、出発する」


「はい。傷の状態も良好です。問題ありません」


わしは、椅子に座った。


「その前に、一つ聞きたいことがある」


「何でしょうか」


「お前は……なぜ、医師をやっているのだ?」


リーゼは、少し驚いたような顔をした。


そして——静かに答えた。


「幼い頃から、古い文献を読むのが好きでした」


「古い文献……?」


「はい。この国では失われた、遠い国の医学書です」


「そこに書かれていた知識を、実践してみたいと思いました」


   ◇


わしは、驚いた。


古い文献——遠い国の医学——


「そんなものが、あるのか」


「はい。腹を開いて手術する方法、腸を縫い合わせる技術——」


「どれも、その文献に記されていました」


リーゼが、頷いた。


「この国では珍しい知識かもしれません」


「でも、世界のどこかでは、当たり前に行われていた医療なのです」


「……」


「だから、私はこの国にも、その知識を広めたい」


「一人でも多くの人を、救いたい」


「それが、私の使命だと思っています」


わしは、深く頷いた。


   ◇


「リーゼ先生」


わしは、立ち上がった。


「お前の使命——わしには、手伝えることがあるかもしれん」


「え?」


「わしは商人だ。人脈と、金がある」


「お前の医療を広めるために、力になれるかもしれん」


「でも、今は広めないでほしいと——」


「ああ。今は、控える」


わしは、真剣に言った。


「だが、いつかお前の準備ができたら——」


「その時は、全力で協力しよう」


「薬草の流通、医療器具の調達、人材の紹介——」


「商人だからこそ、できることがある」


リーゼの目が、輝いた。


「ベルトルト様……」


「命を救ってもらった恩は、一生忘れん」


わしは、深く頭を下げた。


「リーゼ先生、これからもよろしく頼む」


「……こちらこそ」


リーゼが、微笑んだ。


「お体に気をつけて」



(続く)



回復は、順調だった。


手術から五日が過ぎ、わしは歩けるようになっていた。


   ◇


「ベルトルト様、経過は良好です」


リーゼが、傷口を確認しながら言った。


「傷も塞がりつつあります。あと数日で、旅ができる状態になるでしょう」


「そうか」


わしは、窓の外を見た。


「そろそろ、王都に戻らねばな」


「商会の者たちも、心配しているだろう」


「はい。でも、無理はしないでください」


リーゼが、真剣な顔で言った。


「傷が完全に治るまでは、激しい動きは控えて」


「分かっている」


わしは、苦笑した。


「年寄りの言うことは聞くものだ——と言いたいところだが」


「お前の言うことなら、聞こう」


リーゼが、小さく微笑んだ。


   ◇


「父上」


ハインツが、部屋に入ってきた。


「少し、外を歩きませんか?」


「外?」


「はい。この診療所の庭、見晴らしがいいんです」


わしは、リーゼを見た。


「先生、大丈夫でしょうか」


「短い散歩なら、問題ありません」


「むしろ、少し動いた方が回復が早まります」


「では、行くか」


わしは、ゆっくりと立ち上がった。


まだ腹は痛むが、歩けないほどではない。


   ◇


診療所の庭は、確かに見晴らしが良かった。


小高い丘の上にあり、領地の景色が一望できる。


緑の草原、遠くに見える森、小さな村々。


「いい景色だな」


わしは、深呼吸をした。


「ああ、生きているというのは……いいものだ」


「父上……」


ハインツが、隣に立った。


「私、考えていたんです」


「何をだ」


「商人として、本当に大切なものは何か」


わしは、息子を見た。


ハインツの表情は、真剣だった。


「父上は、いつも『人を見る目』だと言っていました」


「ああ」


「でも、今回のことで——私は、もう一つ大切なものに気づきました」


「何だ?」


「謙虚さ、です」


   ◇


わしは、少し驚いた。


「謙虚さ?」


「はい」


ハインツは、頷いた。


「父上は、人を見る目に自信がありました」


「でも、リーゼ先生のことは見誤った」


「それは——」


「父上のせいではありません」


ハインツが、真剣に言った。


「誰だって、間違うことはある」


「でも、父上は間違いを認めました」


「そして、謝りました」


「それが、大切なことだと思うんです」


わしは、黙って聞いていた。


「どんなに優れた商人でも、間違うことはある」


「大切なのは、間違いを認め、改められるかどうか」


「謙虚でなければ、それはできない」


「父上は——謙虚さを、持っていた」


「だから、リーゼ先生に謝ることができた」


「そして、先生も父上を許してくれた」


   ◇


わしは、息子を見つめた。


この子は——いつの間に、こんなに成長していたのだ。


「ハインツ」


「はい」


「お前も、いい商人になれるだろう」


「え……」


「人を見る目も大切だが、謙虚さも大切だ」


「お前は、両方を持っている」


わしは、息子の肩を叩いた。


「自信を持て」


ハインツの目に、涙が浮かんだ。


「……ありがとうございます、父上」


   ◇


その夜、わしはマルタと話をした。


「この診療所は、いつからあるのですか?」


「もう何年も前からですよ」


マルタが、お茶を淹れながら答えた。


「領主様——リーゼ様のお父上が、診療所を開きたいとおっしゃって」


「それで、リーゼ先生が医師を?」


「ええ。最初は私が薬草の知識を教えていたんですが……」


マルタは、遠い目をした。


「いつの間にか、リーゼ様の方が詳しくなっていました」


「あの子は、本当に天才ですよ」


わしは、驚いた。


「天才?」


「ええ。医学の知識、薬草の調合、手術の技術——」


「どこでそれを学んだのか、私にも分かりません」


「まるで、前世から医師をやっていたかのように……」


前世——


確かに、あの子供の知識は、尋常ではなかった。


   ◇


「マルタさん」


わしは、真剣に尋ねた。


「リーゼ先生は、なぜ医師をやっているのですか?」


「領主の子供なら、別の道もあったはずだ」


「……」


マルタは、少し考えてから答えた。


「リーゼ様は、こうおっしゃっていました」


「『目の前で苦しんでいる人がいれば、助けたい』」


「『それが、私の使命だ』と」


「使命……」


「ええ」


マルタの目が、温かくなった。


「あの子は、本当に……人を救うことに、すべてを捧げています」


「貴族の地位も、富も、関係ない」


「ただ、人を救いたい」


「それだけなんです」


   ◇


わしは、深く考え込んだ。


命を救うことに、すべてを捧げる。


それが、リーゼ先生という人間だ。


「……すごい子供だ」


「いえ」


マルタが、首を振った。


「子供ではありません」


「え?」


「リーゼ様は、子供の体をしていますが……中身は、違います」


「どこか、悟りを開いた賢者のような……」


「でも、時々ふと、年相応の少女らしさも見せる」


「不思議な方です」


わしは、頷いた。


確かに、あの少女は不思議だ。


子供とは思えない知識と技術。


だが、時折見せる純粋な笑顔。


   ◇


出発の前夜、わしはリーゼの部屋を訪ねた。


「リーゼ先生」


「ベルトルト様。どうかされましたか?」


「明日、出発する」


「はい。傷の状態も良好です。問題ありません」


わしは、椅子に座った。


「その前に、一つ聞きたいことがある」


「何でしょうか」


「お前は……なぜ、医師をやっているのだ?」


リーゼは、少し驚いたような顔をした。


そして——静かに答えた。


「幼い頃から、古い文献を読むのが好きでした」


「古い文献……?」


「はい。この国では失われた、遠い国の医学書です」


「そこに書かれていた知識を、実践してみたいと思いました」


   ◇


わしは、驚いた。


古い文献——遠い国の医学——


「そんなものが、あるのか」


「はい。腹を開いて手術する方法、腸を縫い合わせる技術——」


「どれも、その文献に記されていました」


リーゼが、頷いた。


「この国では珍しい知識かもしれません」


「でも、世界のどこかでは、当たり前に行われていた医療なのです」


「……」


「だから、私はこの国にも、その知識を広めたい」


「一人でも多くの人を、救いたい」


「それが、私の使命だと思っています」


わしは、深く頷いた。


   ◇


「リーゼ先生」


わしは、立ち上がった。


「お前の使命——わしには、手伝えることがあるかもしれん」


「え?」


「わしは商人だ。人脈と、金がある」


「お前の医療を広めるために、力になれるかもしれん」


「でも、今は広めないでほしいと——」


「ああ。今は、控える」


わしは、真剣に言った。


「だが、いつかお前の準備ができたら——」


「その時は、全力で協力しよう」


「薬草の流通、医療器具の調達、人材の紹介——」


「商人だからこそ、できることがある」


リーゼの目が、輝いた。


「ベルトルト様……」


「命を救ってもらった恩は、一生忘れん」


わしは、深く頭を下げた。


「リーゼ先生、これからもよろしく頼む」


「……こちらこそ」


リーゼが、微笑んだ。


「お体に気をつけて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ