表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら十歳の幼女医師でした~前世の医学知識で異世界医療を改革します~  作者: NN
外伝 カール王子編「折れない翼」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/237

第08話 折れない翼



兄上の誕生日当日。


王宮では、盛大な祝賀会が開かれていた。


   ◇


諸侯や貴族たちが集まり、兄上を祝福している。


僕は、自室で準備をしていた。


「殿下、準備はよろしいですか?」


リーゼ先生が、部屋に来た。


「ああ。緊張するけど……」


「大丈夫です。今まで通りにやれば」


リーゼ先生が、僕の服を整えてくれた。


「殿下、とても立派ですよ」


「……ありがとう」


僕は、窓の外を見た。


庭園に、たくさんの人がいる。


あの中を、馬で駆け抜けるのだ。


   ◇


「リーゼ先生」


「はい?」


「今日で、治療は終わりなのか?」


「いいえ。まだしばらくは、経過観察が必要です」


リーゼ先生が、微笑んだ。


「でも、殿下はもう大丈夫です。一人で歩けますし、馬にも乗れます」


「あとは、少しずつ筋力を戻していくだけです」


「そうか……」


僕は、少し寂しくなった。


毎日、リーゼ先生と一緒に訓練するのが、楽しかったから。


「でも、また会えますよね」


「もちろんです」


リーゼ先生が、頷いた。


「殿下が困った時は、いつでも呼んでください」


「約束だぞ」


「はい。約束です」


   ◇


厩舎で、シュテルンが待っていた。


「シュテルン、今日が本番だ」


僕は、シュテルンの首を撫でた。


「一緒に、兄上を驚かせよう」


シュテルンが、力強く嘶いた。


僕は、鞍に跨った。


もう、支えなしでも乗れる。


「行くぞ」


手綱を握り、庭園へ向かった。


   ◇


祝賀会場の庭園。


兄上が、貴族たちに囲まれている。


「アレクサンダー殿下、お誕生日おめでとうございます」


「これからも、王国のためにご活躍を」


「ありがとう」


兄上が、にこやかに応対している。


でも、その目はどこか寂しそうだった。


僕がいないから、だろう。


「病気のカール殿下は、まだ療養中でしょうか」


「ああ……弟は、部屋で休んでいる」


兄上が、小さく溜息をついた。


「本当は、一緒に祝いたかったのだが……」


その時——


「兄上!」


僕の声が、庭園に響いた。


   ◇


貴族たちがどよめく。


庭園の入り口から、一頭の白馬が現れた。


その上には——


「カール……!?」


兄上が、目を見開いた。


僕は、シュテルンに乗って庭園に入った。


背筋を伸ばし、堂々と。


「お誕生日おめでとうございます、兄上」


僕は、シュテルンを兄上の前で止めた。


そして、鞍から降りた。


自分の足で、地面に立つ。


「カール……お前、馬に……」


「乗れるようになりました」


僕は、笑顔で言った。


「歩くことも、できます」


僕は、一歩、二歩と兄上に近づいた。


しっかりとした足取りで。


「これが、僕からの誕生日プレゼントです」


   ◇


兄上の目に、涙が溢れた。


「カール……カール……!」


兄上が、僕を抱きしめた。


大きくて、温かい腕。


僕を守ってくれた、兄の腕。


「よく頑張った……よく頑張ったな……!」


「兄上こそ、ずっと僕を支えてくれた」


僕も、涙を流していた。


「ありがとう、兄上。兄上がいなければ、僕は諦めていた」


「馬鹿を言うな。お前は、自分の力で立ち上がったんだ」


兄上が、僕の肩を掴んだ。


「俺は、お前を誇りに思う」


「兄上……」


   ◇


周囲の貴族たちが、拍手を始めた。


「素晴らしい! カール殿下が回復されたとは!」


「奇跡だ……!」


「医師は誰なのですか?」


兄上が、声を上げた。


「皆、聞いてくれ!」


庭園が、静まり返った。


「弟を救ってくれたのは、リーゼ・フォン・ハイムダルという医師だ」


「彼女は、まだ十二歳の少女だが——」


「誰も治せなかった弟の病を、見事に治してくれた」


兄上が、リーゼ先生を探した。


リーゼ先生は、庭園の隅で控えめに立っていた。


「リーゼ先生、こちらへ」


僕が、手招きした。


リーゼ先生が、少し恥ずかしそうに歩いてきた。


「リーゼ先生に、心からの感謝を」


兄上が、深々と頭を下げた。


「弟を救ってくれて、ありがとう」


「もったいないお言葉です」


リーゼ先生が、慌てて頭を下げた。


「私は、殿下のお手伝いをしただけです」


「謙遜するな」


兄上が、リーゼ先生の手を取った。


「君は、命の恩人だ。この恩は、一生忘れない」


リーゼ先生の頬が、少し赤くなった。


   ◇


祝賀会が終わり、夜になった。


僕は、庭園で星を見上げていた。


「シュテルン……」


愛馬の名前を呼ぶ。


「星」という名の馬。


今夜の空には、たくさんの星が輝いている。


「カール」


兄上が、隣に来た。


「今日は、本当に驚いた」


「驚かせたかったんだ」


僕は、笑った。


「兄上は、いつも僕の前にいた。僕は、その背中を追いかけていた」


「……」


「でも、病気になって、追いかけられなくなった。それが、悔しかった」


「カール……」


「だから、もう一度追いかけたかった」


僕は、兄上を見た。


「僕も、兄上の隣に立ちたい」


「守られるだけじゃなく、一緒に戦いたい」


兄上が、微笑んだ。


「お前は、もう十分に強い」


「まだまだだよ。剣も、馬も、兄上には敵わない」


「いいや」


兄上が、僕の肩を叩いた。


「お前は、俺よりも強い」


「病気と戦い、打ち勝った。それは、剣の強さよりも価値がある」


「兄上……」


「俺は、お前を誇りに思う」


兄上が、真剣な目で言った。


「お前は、俺の自慢の弟だ」


僕は、涙を堪えきれなかった。


「ありがとう、兄上……」


   ◇


僕の名は、カール・フォン・ヴィルヘルムシュタイン。


十歳で病に倒れ、歩くことも、馬に乗ることもできなくなった。


絶望の中で、死を考えたこともあった。


でも、僕は諦めなかった。


兄上が、支えてくれた。


リーゼ先生が、道を示してくれた。


そして、僕は立ち上がった。


   ◇


折れた翼は、また生える。


諦めなければ、空は飛べる。


それを、僕は学んだ。


これからも、きっと辛いことがあるだろう。


壁にぶつかることも、あるだろう。


でも、僕は知っている。


諦めなければ、道は開ける。


一歩ずつでも、前に進める。


   ◇


「兄上」


「何だ?」


「いつか、また競争しよう」


「望むところだ」


兄上が、笑った。


「今度こそ、俺が勝つぞ」


「負けませんよ」


僕も、笑った。


星空の下、二人で笑い合った。


かつてのように。


いや——かつて以上に。


僕たちの絆は、病を乗り越えて、さらに強くなった。


   ◇


リーゼ先生——


君のおかげで、僕は翼を取り戻した。


君がいなければ、僕は飛べなかった。


だから、約束する。


この翼で、高く飛ぶ。


君に恥じない生き方をする。


そして、いつか——


僕も、誰かを救える人間になる。


君のように。


   ◇


夜空に、流れ星が走った。


僕は、願いを込めた。


——もっと強くなれますように。


——兄上の隣に立てますように。


——そして、リーゼ先生のように、誰かを救える人になれますように。


シュテルンが、厩舎から嘶いた。


まるで、「大丈夫だ」と言っているようだった。


「ありがとう、シュテルン」


僕は、微笑んだ。


「明日から、また頑張るよ」


   ◇


病気は、僕から多くのものを奪った。


でも、それ以上のものを与えてくれた。


諦めない心。


家族の大切さ。


支えてくれる人への感謝。


そして——生きることの喜び。


   ◇


僕の翼は、もう折れない。


どんな嵐が来ても、飛び続ける。


一歩ずつ、前に進む。


それが、僕の生き方だ。


リーゼ先生が教えてくれた、生き方だ。


   ◇


さあ、明日が来る。


新しい一日が始まる。


僕は、その一日を精一杯生きる。


兄上と一緒に。


シュテルンと一緒に。


そして、いつかまたリーゼ先生に会える日まで——


僕は、成長し続ける。



(外伝 カール王子編 完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ