第1章 ネタ切れで、まさかの異世界、創ります。
異世界転生というものをご存知だろうか。
異世界転生とは物語の主人公が「何らかの」きっかけを持ってもう一度人生をやり直す!的な物語だ。
今の世の中は空前の異世界ブーム。
ミーハーである僕神宿 隼人は今も異世界物を部屋で読みふけっている。
小説や漫画はミーハーであればあるほど面白いものに出会えるという持論だ。
しかし、沢山の異世界物を読んでいるうちに僕にはある1つの疑問点が浮かんだ。
それは、『異世界転生ネタは尽きないのか。』
という事だ。異世界と言っても空想の世界は人間の脳内で一から作れるのだから多種多様であろう。
しかし大元の軸なんて1本化しないか?空想の世界だからこそ話は偏りがちになるのではないのか。と小説を書けもしないのに考えていたら、目の前に神がいた。
ん?????目の前に『神が』居た?少し待ってくれ。展開が急すぎやしないか?
僕は、部屋で小説を読んでいました。
すると、目の前には神っぽい神がいました。場所も部屋から白い空間へと変わっています。神は何故か僕に向かって微笑みかけています。
え、僕死にました?え?僕の人生ここで終わったんですか。いやいや、本の読みすぎで気が動転しているのかもしれない。何かおかしなものでも食べてしまったのだろうか。それとも超能力的な力にでも目覚めてしまったのであろうか。何にせよ一旦現実逃避しよう。考えてはいけない…と、僕が目を閉じると、神であろう者が僕に囁いた。
「おーい、聞こえてる?聞こえてるね、よし。俺全知全能の神やってるんだけど、やっぱり異世界転生ってネタ尽きるよね〜。いや、一昨年くらいからちょっと危機感持ってたんだよ?だけどさぁ去年くらいから小説書いてる子達にネタ取られまくってさ、俺が転生させたら『これ見た事ある!』って言われまくって、もうやってらんねぇ!的な?」
と神はいかに異世界転生が大変なものなのかと、僕に愚痴り始めた。しかしまぁ僕の意思関係無しに話は進む進む。異世界転生も神のネタが尽きる事も存在するのか。
というか、この神凄い態度がラフだな…
そんなことより、今の状況を冷静に見ることの僕がいることに僕は何より驚いた。驚いた。が。
僕には気になることが山ほどあった。
「僕は死んだんですか?何故僕の前に神である貴方がいるんですか?ここはどこなんですか?疑問しか湧いて出てこないんですけど?!」
目の前にいるのが神である以前に僕は自分の現状を知り、今すぐにでもこの空間から脱出しなければならない気がした。早く元の世界に戻らなければ…ならない気がしたのだが、神は全てお見通しのようだ。
「君は元の世界には戻れないよ?」
は?
「君は僕の代わりに異世界を創るんだから。」
補足ね、と神はまた呟く。
「あー、戻れない訳では無いけど、村とか種族とか一切なしのゼロからの異世界に飛んでもらって、皆が見たことの無い面白そーな異世界を作ってもらってから家に返します! 」
パンっと手を叩き、屈託のない笑顔で話す神の姿がそこには、あった。
ん?!待て待てどういうことだ?
神は続けざまに言った。
「だーかーらー!俺の異世界転生ネタが尽きちゃったから、異世界転生ネタ尽きないのかなぁとか言っちゃってた君に異世界ごと作ってもらおうとしてる訳!理解できる?!伝わる?!」
はぁ?!意味が分からないんだが?!理解したくもない!
つまるところ、面倒くさい仕事を僕に投げようとしているということか?!
目の前の神はわざとらしく口笛を吹いた。
こいつ、全部心を読めるくせに都合の悪いことは遮断してやがる…
よし、逃げよう。
逃げればこの状況から抜け出せるかもしれない。
僕は走った。走って、走って、走りまくったら逃げ道が見つかるかもしれない。そう思い、出口を探したが行く先いく先は全て行き止まりである。
「そこ、行き止まりね」「あ、そこもね。」「あー、そっちは罠かけてある。」
必死に逃げ道を探している僕ををよそに、神は呑気に後ろから声を掛けてくる。
小一時間ほどたっただろうか。もう僕には反抗する体力なんて残ってやしなかった。
神は僕に言う。
「ねぇもう諦めたら?」
諦めたら僕が世界創らなきゃいけなくなるでしょうが!
ふと、ポンっと通知音のようなものが鳴った。
なんだろう。まぁ、いいか、と思ったのもつかの間、神はわざとらしく言った。
「あ、君が世界創る手続き、出来ちゃった♡」
え?なんて言った?僕が世界作る手続き?出来ちゃった?いや、聞き間違いだろう。
「いやー、初めて申請したからもう少し時間かかるかなぁって思ってたんだけど君が頑張って出口探しているうちに手続き完了したねっ」
これみよがしに神は『独り言』を聞かせてくる。
『良かった、良かった〜』なんて言っている神を他所に僕は絶望した。もう逃げられない。
しかし、逃げられないのであればもうやるしかない。僕の中にはひっそりと闘志のようなものが燃えたような気がした。
数刻後、僕は腹を括って、異世界構築とやらを引き受ける旨を神に伝えた。
すると神は微笑んだ。
「健闘を祈る」とだけ言い残し、気が付くと周りは白い空間から森へと変わっていた。
こうして僕は異世界転生する側ではなく『創る側』として新たな1歩を踏み出すのであった。




