道程の確認1
※これまでの事件解説振り返りにあった方が良さそうですので、本日はこちらを載せています。
A県夜洛市 輪命回病院
西棟側 東棟側
7階 屋上
6階 産婦人科・乳腺外科 小児科
5階 呼吸器循環器内科・外科 心臓外科
4階 消化器内科・外科 脳外科・神経内科
3階 リハビリテーションルーム 整形外科
2階 手術室 ICU HCU 透析室
1階 外来患者受け付け インフォメーション
コンビニエンスストア 救急センター
夜洛市輪命回病院の爆破事件は、予想通り大々的に報じられた。
だが、犯人と見られる清掃員の男は、現場から死体で発見された。死因は西棟側の外付け非常階段からの転落。転落の原因は爆風と考えられていた。
それが、この爆破事件唯一の死傷者だった。
輪命回病院は電気系統が西棟、東棟と別々の管理になっており、整備・管理室は共に一階だった。おかげで、7階と6階全域、5階西棟、そして、点検のために4階西棟が使用不可にはなったが、他のエリアは引き続き使用可能となった。
桜田風晴の祖父、臣五郎の心臓手術も、1週間の遅れはあるが、予定通り行われることになっている。
真淵実咲は警察に出頭して、自らの行動の全てを話した。
真淵実咲に電話をかけてきたのは羽柴真吾だけで、他の人間はいなかった。始め駐在所に、電話がかかってきた時、この電話を切って、録音を消し、自分のスマートフォンから指定された番号にかけろと言われた。
その時点で、秘密を知っていると彼女は脅されていた。
男は具体的にはこう言った。
" 桜田風晴が桜田風子を疑うように しむけろ。あの親子の関係を壊すだけの理由を知っているはずだ。
さもなければ、お前の方の親子関係を崩してやる。長男に、次男を産む時にお前が何をしたのかを教えてやる。"
それで、実咲は言いなりになるしかなかった。
同時期に聖が桜田風晴と急速に親しくなったのは全くの誤算だった。怪文書を届けに行くのは簡単になったが、良心はより病んだ。
やがて、彼女は 聖にやっとできた友達を失わせたくないと言う気持ちが強まり、自らの秘密を守りながら桜田親子にも害をなさない策を探し始める。
彼女にとっては、それが自分の命をかける方法だった。最もその頃の精神状態は、正常とは言い難いものに、すでになっていたのだろう。
真淵実咲が自殺未遂をして病院に送り込まれることは、羽柴真吾には使える手駒が一つ増えることだった。だから彼女からの自殺の申し出を、彼はむしろ推した。
" 死ねば秘密は守ってやる。やってみろよ。" と。
羽柴は実咲に爆弾ベストを身につけさせて4階 東棟 脳外科・神経内科の突き当たりまで行くことを命じていた。が、真淵実咲がそこに行こうとした時、4階 東棟は正火斗の出した避難指示で人々が,ごった返していた。
どんなに病んだ状態でも、実咲も分かったのだ。この中で爆弾が爆発したら大変な被害になる、、、、と。せめてもと考えて、彼女は避難の済んだ無人の3階に降りる。そこで、聖が追いついたのだった。
尚、実咲は桜田孝臣の転落事故については関与を否定した。3通目の怪文書は、転落の前日に聖を桜田家に迎えに行った際にポストに投函していて、当日の早朝は自宅で就寝中だったと証言した。
警察に提出された怪文書3通からは皆、真淵実咲の指紋が検出されたが、梯子や制御盤からは、その指紋は出なかった。これがむしろ彼女の証言の裏付けとなった。
仮にどちらにも関わったとして、どちらかには手袋をして、どちらかの時は手袋をはずすのは、不自然だからだ。
この怪文書の件については、桜田親子は事件性を問わないと警察に申し入れている。真淵実咲を起訴したりせず、許すということである。
実咲の夫である真淵耕平巡査部長からは、辞表が提出されている。
A県警察本部はこれを受諾の見通しだが、県内の稀にみる大型事件の連続発生から、免職の実施を引き延ばすようだ。
灰畑駐在所の後任が決まるまでは。
爆破事件3日後・民宿(桜田家)
その日は、大道正火斗をはじめとする 高校生達に聞き取りが行われていた。
聴取ではあるが、彼らは今回完全な功労者だった。
私服の刑事2人と制服の警察官2人が来て、安藤星那と神宮寺清正への暴力的行為が正式に謝罪された。
正火斗は自分の刑事2人へのエレベーターでの押し出しをむしろ謝ったが、そこは全くの不問となる。
江元本部長からの申し出も伝えられた。
夜洛市と連絡を取って、表彰も考えたいということだったが、北橋勝介と正火斗は丁重に断った。それに、実際の表彰式はできたとしても数週間後になるらしい。その頃には、自分達は東京にいるだろう。
警察関係者4人、ミステリー同好会メンバー、北橋勝介、安藤星那、桜田風子、そして風晴を前にして、
正火斗は民宿の一階の広間で 羽柴真吾 と 緑川まどか に ついて語りだした。
解決編・(前半)炎スタートです。
説明文章ばかりになってしまいました。申し訳ありません。
次からはもっと読み易いです。
読んで頂いていることに心より感謝致します。
引き続きよろしくお願い致します。
シロクマシロウ子