道中にて もらい事故も起こる
ー登場人物紹介ー
◆桜田風晴・・・田舎の農業高校2年。
◆桜田晴臣・・・風晴の父親。市議会議員。6年前から行方不明。
◆桜田孝臣・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。
◆大道正火斗・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。
◆安西秀一・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆桂木慎・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。
◆神宮寺清雅・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆椎名美鈴・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆真淵耕平・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。
◆真淵実咲・・・耕平の妻。
◆真淵聖・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。
風晴が予想した通り、聖は今日はマウンテンバイクで民宿に来た。パーカータイプの半袖を着て 七分丈くらいのカーゴパンツを履いていた。
着いた時にはハアハアと荒い息をしていて、ひどく思い詰めた顔をしていたので、迎えた風晴と正火斗は正直 何事だろうかと思った。
オープンスペースに上がると、聖は風晴に意を決したように話かけた。
「桜田くん…………ごめんなさい」
「え?」
「昨日……行けなかった。お葬式。……分からなくて、何を……言ったらいいか」
聖は必死に言葉をつなぐ。
「お父さんに……桜田くんが……父親みたいに思ってる人を…………亡くしたってきいて」
聖は風晴を見た。
「分からなくなった。……何を言ったらいいのか。何を言っても……役立たない気がして。だから……来れなくて。お葬式にも……行けなくて」
不覚にも、風晴はちょっとジンとしてしまった。最近は涙腺がゆるくなってるようでヤバい。
「さ、桜田くんが……大丈夫じゃなかったのに、何も……何もできなくて……ごめんなさい」
聖はハアハアと息をついた。来たときの、マウンテンバイクを漕いで来た疲れからのものではなかった。
彼にとって、こんなに言葉を振り絞ることは大変だったんじゃないだろうか。風晴は正直困った。どう伝えたらいいのか──この気持ちを。真淵聖に……伝わるように。
(考えてくれてありがとう? 当番行ってくれたんだから役立ってる? 違う。そうじゃない。そうじゃなくて……)
聖は風晴を見てる。風晴の言葉を待っている。
「分かった! 真淵!」
風晴はついに声に出した。
「友達になろう! オレ達! ってか、こんなにオレのこと考えてくれて もう友達だと思う。お前ってホントにいいヤツで、友達になってくれたらオレは嬉しいんだけど」
思いもかけなかったワードが含まれていたのだろう。聖はしばらく理解に時間がかかっているようだった。
だが、そのうち人差し指を立てて
「…………友達」
と風晴を指差した。
風晴はうんうんと、笑顔で首を縦に振った。
すると聖は指を立てたまま、風晴の隣りに座っていた正火斗も指差し
「友達……!!!」
と認定してしまった!
風晴と正火斗は固まったが、聖はニッコリとした。
ニコニコしている聖に風晴は
「あー……真淵、その……」
と言いかけたが正火斗が
「いいよ。友達でいこう。友達が増えるのは嬉しいよ」
とそこは止めた。ニコニコな聖は
「嬉しい」
とハッキリと言った。
それを見てか、正火斗はさらに譲歩してくれた。
「僕と風晴はお互いに名前で呼び合っているから、君と僕も、君達も名前呼びでいいんじゃないか? 水樹なんか、勝手にもう君を名前呼びさせてもらっているようだし」
「分かった。……正火斗……」
それから聖は、風晴の方を向いて
「か、風晴……」
と言った。風晴は本気で結構嬉しくなった。うなずいて
「聖」
と、初めて下の名前で互いを呼び合った。
正火斗が
「聖、多分うちの2年の桂木慎も友達だと思って大丈夫だ。あいつ、同学年と会うと自動的に友達認定してるヤツだから。君ももう きっとなってる」
と言い出したので風晴は笑ってしまった。
「確かに。アイツなら大丈夫だ」
聖は真面目な顔をして
「桂木……慎……」
と繰り返した。
そして労せずに友達認定を受けてしまったことに胸がいたむのか、正火斗は妹の名前もだした。
「あとは水樹は? アイツは、凄く君と友達になりたがっているんだけれど……」
けれども聖は首を横に振った。
正火斗の落胆を、風晴は隣りで感じた。
聖に聞いてみる。
「駄目? グイグイ来られて……苦手とか?」
聖は
「女の子……言ってること……分かりにくい」
と言った──ので、男子2人は物凄く納得させられた。
「怒るタイミングとか、ホント謎だもんな。こっちが何もしてないうちから機嫌悪かったりするぞ」
「本心……あまり……言ってない気がする」
「女子はアレだろう? 周期的なものもあるから。まあ、あまり近寄りたくないのも分かるよ」
こうしてオープンスペースで話しをして、3人の友情は意外にもすんなりと育まれた。
正火斗はもらい事故状態、桂木に至っては御本人様不在だったが、とりあえず真淵聖には 3人もの"友達"がいきなりできた!
おめでとう聖!
エピソードタイトルはいつも最後につけますが、こんなタイトルになるとは。
ただの会話書いてるの、結構好きです。もうこのまま彼らの日々を書き続けたらいいのに。
そう言うわけに、いかないんだよなぁ。
夏はいつか終わる。
そして事件も、ちゃんと終わらせなければ。解決をして。




