炎と水のはじまり2
ー登場人物紹介ー
◆桜田風晴・・・田舎の農業高校2年。
◆大道正火斗・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。
◆安西秀一・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆桂木慎・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。
◆神宮寺清雅・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆椎名美鈴・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆真淵耕平・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。
◆真淵聖・・・耕平の長男。農業高校2年。
正火斗の水樹の話しは続く。
「大道英之との一件があってから水樹は変わった。女の子の友達に男子が親しくなると、その男子を────誘惑するようになったんだ」
「え?」
驚いて風晴は声を出していた。
「そして、その男子が自分に気持ちを乗り換えると──突き放した。それでも付き合おうとすると、ナイフで脅したんだ。"これ以上近づくなら刺す"と」
正火斗は手で顔を覆う。
「男子からは当然恐れられるようになり、女子からは……言うなれば軽蔑されていたと思う。
彼女達の気持ちも分かる。水樹が余計なことをしなければ、上手くいったカップルもあっただろうから」
「でも水樹はもしかしたら…………守ろうとしてるんじゃないのか?」
風晴の言葉に正火斗が顔をあげる。彼は
「君が水樹と同じ中学なら良かったのにな」
と有りもしないことをポツリと言った。
「カウンセリングで水樹は言ったそうだ。"友達を守っただけだ"と。"見せかけだけの嘘の愛に傷つけられることから守ったんだ"と」
「あ────……」
風晴はなんとも言いようがない声をだした。確かに水樹のやり方はひどく間違っている。でも、彼女の言い分に正しいものもある。
「専門家は、根本的な原因は男性への不信感と恐怖心、そして"自責の念"だと。大道の言葉に囚われて、水樹は事件そのものを自分のせいだと思い込んでいるんだろう。
果ては──
"妹さんは真実の愛を見つければ、きっと良くなるでしょう。" なんてお伽話の魔法使いみたいなことを言われた。──もう、匙を投げたんだと思う」
正火斗は最後に力を込め、それから脱力した。
風晴はその姿を見て言葉をかけた。
「確かに……その、水樹みたいな女の子に気がある素振りをされたら、揺るがない男子──多分日本中探してもそんな いないな。
女子には悪いけどオレ達ってまだ、高校生になったって"なんかさせてもらえたらいいな"って下心ありきで……その上で好意持つ感じだし。
酷いって言われたら酷いんだろうけど。本能って言うか。
今 "真実の愛を差し出せ”って言われても……キツいな。正直」
恋もろくにしてないのに。
「愛はひとまず置いておくとして、水樹の信頼を勝ち得て恐怖心を抱かせない候補者は いたんだ。ちゃんと」
正火斗の言葉に風晴は驚いた。
「オレの分かるヤツ?」
「勿論。秀一だから──安西秀一」
風晴の頭の中に白ポロシャツ、スラックス、七三分け、黒縁眼鏡の安西が浮かぶ。
「ええ!!?? 幼馴染みとは聞いてたけど…………幼馴染み以上? あの2人が?? 全然雰囲気違うというか……ええっと、釣り合いがあまり取れないって言うか……。どっちかって言ったら、お互いがお互いに嫌ってる感じも……」
多少だいぶ努力して多少、安西には失礼な発言になった。
正火斗は風晴の反応に笑った。
「だから”愛は置いておいて"──だ。
この5年間で、僕を除いて水樹が信頼していた異性は秀一だけだ。あいつといる時だけは素でいる────いや、素直ではないが、警戒してないのが分かる。しかも理由もある」
「それは?」
風晴は前のめりになって聞いた。
「話したように、大道英之については僕ですらなんの注意も水樹にしていなかった。秀一だけ──彼だけが水樹に警告してたんだ。この事件よりも前に」
"水樹のようにお姫様みたいに可愛い女の子は、新しいお父さんにだって気をつけた方がいいよ"
正火斗は頭の中で回想した。
宝来真夜呼と安西夫妻は仕事での付き合いが昔からあった。大道英之と母を引き合わせたのは安西夫妻だった。
家族で会食をした後 子供だけ別室に移ってから、確かに秀一は水樹に言った。水樹はその言葉に怒ったんだ。
それでも秀一は言った。
"でもすごく可愛いから、気をつけないと。だって可愛いすぎるんだよ、水樹は"
と。
ん? おいおい、そこに……愛はないか?
(小学生なら男女間で何を言っても無罪放免か?
あるいは5年経てば時効なのか?
5年何もしなければ執行猶予もだいたいはきれるが……
水樹の横に立つのを想像もしないのは、お前が果てしなく水樹を持ち上げているからじゃないのか)
正火斗が眉間にシワを寄せて物凄く思い悩んでいる姿だったため、風晴はその形相を見守った。
彼はやがて────肩を落として天を仰ぎ 息をついた。
「やめた。…………秀一の考えすぎる思考なんて たどりたくない」
「ああ、考えすぎてわけわかんなくなってるようなとこ、あるもんな」
風晴は同意した。
「水樹は新たな出会いもあったから、そっちに希望を持つよ。
真淵聖は……水樹に恐怖心を持たせず信じさせる可能性が、かなり高いと思う。彼のようなタイプは僕らの周りには いなかった」
それも同意だ。聖は彼にしかできない何かがきっとある。
風晴のスマートフォンがメール着信した。彼はそれを開いて見る。
「母さんだ。そろそろナス獲って降りて来いって。みんなもう朝食始めてる。それから、予約客の新聞記者もまた到着したって」
文面を聞いて、正火斗は縁側から立ち上がった。
彼は風晴に向かって言った。
「さあ、第二章の始まりだ」
読んで頂きまして ありがとうございました。
今回、うちの主役級男子2人の恋愛に関するトークがヘタれすぎて、作者としては"そんなんじゃ人気出ないだろ"と苦笑でした。
そっちについては頼りない子達ですが、引き続き宜しくお願いします。




