仲間のための道を
ー登場人物紹介ー
◆桜田風晴・・・田舎の農業高校2年。
◆桜田風子・・・風晴の母親。民宿を営む。
◆大道正火斗・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。
◆安西秀一・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆桂木慎・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。
◆神宮寺清雅・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆椎名美鈴・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆真淵耕平・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。
◆真淵実咲・・・耕平の妻。
◆真淵聖・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。
◆真淵和弥・・・耕平と実咲の次男。
聖と風晴はコンビニエンスストアに着いていた。イートインスペースがある作りだったので、2人は買った飲み物とスナック菓子を持って休憩していくことにした。
中途半端な時間だからか 他には誰もいなかった。
カウンタータイプの席に 2人は並んで座った。
まずはペットボトルを開けて、ゴクゴクとジュースを飲む。2人共喉が渇いていた──所作が一緒になった。
一息ついて 風晴は聖を見た。
聖が視線をそらさなかったので、彼はそのまま聞いた。直球だった。
「おばさん元気? 聖の母さん」
聖はうなずいた。
「良くなってると……思う。和弥とも会えた……」
風晴は
「良かった。本当に。真淵巡査部長が辞めるってのは残念だけど。……これからって大丈夫?」
と気になっていたことを聞いた。
聖は買ってきていたチョコレート菓子を食べていた。
飲み込んで 口を開いた。
「多分だけど……お母さんが罪にならなければ……退職金はもらえるみたい。あとは警備会社とかで……お父さん働くつもりだって。……本当は農家の真似事みたいなのも したいみたいだったけど……お金は必要だから」
風晴はコクコクとうなずいた。なんとなく聖の口調が良くなった気がする。いや多分、気がするだけじゃない。
「駐在所は後々出るんだよな? 引っ越しとか……転校ってする可能性ってあるのか?」
灰畑町で警備の仕事は無い気がした。住まいは無くなる。それでも、陽邪馬市や夜楽市からなら今の高校に通えるはずだが。
「分からない……けど、引っ越し しないとね。でも転校はしないと……思う」
「なんで?」と 風晴が聞くと
「将来の夢……飼育員だから。…………動物園の」
と聖は小さく言った。
「飼育員なんだ!! 聖の夢!」
風晴は驚いて声が大きくなった。聖は恥ずかしそうに、なんだかモジモジしている。
風晴は聖がちゃんと将来像を描いていて偉いと感心した。同時に、安心も。
飼育に関する高校はA県だと風晴達の農業高校くらいだ。聖が将来をそう考えているなら、転校するわけがない。
ホッとしてると、聖の方から聞かれた。
「風晴は……将来、何になるの?」
聞かれて────風晴は止まってしまう。
聖が返事を待っている。彼は考えながら口にした。
「前は 農業をやろうと思ってたんだ。……それしか無かったから。今は よくわからなくなってる。やりたいことが何なのか 探してる感じ」
意外にも聖は
「あるよね……そういう時……」
と同意した。
スナック菓子を食べ終わっていたので、2人共あとは席を立った。コンビニを出て 再びマウンテンバイクに乗る。
物産館を目指して。
風晴と聖は、40分後には物産館のあるエリアの駐車場に辿り着いていた。
そこはいわゆる道の駅のような感じで、物産館以外にも蕎麦屋やカツ丼屋、蜂蜜工房が店を出していた。
2人は駐輪場にマウンテンバイクを停めた。しっかりと鍵もかけた。物産館の入り口ではソフトクリーム屋もやっていた。帰る前に絶対食べようと風晴は思った。
建物の中は野菜や食品も売っているからか、エアコンがしっかり効いている。それだけでだいぶ助かる。
風晴は土産用の箱菓子やレトルト食品は素通りして、工芸品やグッズのコーナーに 聖と来た。
「このへんかなと思うんだけど。なんか良いのあるかな」
2人は一つ一つを物色し始めた。6人に同じ物を送るのは なかなか大変だ。予算の都合もある。
第一候補に上がったのは A県形の石鹸だった。シトラスの香りで置いておくだけで芳香剤にもなるし、勿論手や体も洗える。巾着タイプの袋に入っていて、その袋にもA県のイラストが入っているのだ。もしとっておきたいと思えば、袋でもそれが出来る。
ハンカチや箸も候補には上がった。だが男子には使いづらそうなデザインだったり、高額だったりした。
とりあえず色々見て回っていると、聖が立ち止まって動かないコーナーがあった。後ろから
「なんか面白いものあったか?」
と声をかける。
聖は集中していたのか、少し驚いたかのように パッと振り返った。
そして風晴に向かって指差す。
風晴はそれを見るために 聖の横に並んだ。
陽邪馬市にある明交動物園のグッズコーナーで、聖が指差していたのは、ビーズ製の動物達のキーホルダーだった。
明交動物園はA県唯一の、そして結構大規模な動物園だ。きっと聖の就職先第一候補になる。彼が注目したのも当然だ。
聖は ビーズの白鳥を一つとって
「水樹さんみたい…………」
と言った。
「ああ!」
風晴は大きくうなずく。確かにイメージピッタリだ。
「桂木くんはコレ。……秀一は……こっちかな」
そう言って 聖はピューマとイルカを指差した。
イルカは眼鏡を外した秀一とは、イメージが重なる気がした。聖は見たこと無いはずなのに──凄い。
「神宮寺と椎名って一年生達は、多分コレ」
風晴はアルパカとリスを手に取った。小さな粒のビーズは
揺れるとキラキラと輝く。神宮寺の のっぽなところや、いつも何かを持っているような椎名をイメージした。
2人は最後に
「正火斗は……」「コレだろ!」
と同時に指差した。
白頭鷲のキーホルダーだ。カッコいいし優美だし、彼は猛禽類が絶対に似合う。
2人は少し笑い転げたが 聖は言った。
「でも……A県って感じじゃない。綺麗だけど……駄目かも」
「小さくて扱い易い感じだし値段が安いから、石鹸と合わせて買えるんじゃないか?だったら気にしなくてもいい」
2人はその場で合わせた商品の価格を計算してみた────予算内に納まりそうだ。ラッピングまではお願いできないが、無料の紙袋は個数分つけてもらえた。
良い買い物ができて2人は満足した。
風晴は 物産館を出る時にちゃんと忘れなかった。
「聖、コレ食べて行こう!!」
2人は ずんだ&黒豆ソフトを注文した。




