表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程  作者: シロクマシロウ子
解決編・炎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/128

17歳の道

ー登場人物紹介ー

桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵実咲まぶちみさき・・・耕平の妻。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。


北橋勝介きたはししょうすけ・・・フリージャーナリスト。


羽柴真吾はしばしんご・・・関光組組員。6年前から消息不明。

緑川みどりかわまどか・・・羽柴真吾の女。6年前から消息不明。


 


 その夜、風晴は寝る前のベッドでいろいろ考えた。


 秀一は常に学年上位の成績で、今回は来ていないが──ミステリー同好会メンバーの浅倉と言う女子生徒と いつもトップを競っているらしい。

 日本有数の進学校である凰翔院(おうしょういん)学園の中で、だ。

 つまりはかなり頭が良い。


 そんな彼が、ああも間違え迷い、どうしようもなくなってよりによって田舎の農業高校の自分の部屋を訪ねてくるとは。


(恋愛って 怖いもんなのか。そんなに?)


 自分の周りの好きとか付き合うとかは、ややこしさや面倒さはありそうだが、基本的には楽しそうなイメージだ。彼女が出来て浮かれて 自慢してる。

 でも秀一は────


(苦しそうだった。物凄く)


 風晴は寝返りを打った。タオルケットから脚を出す。エアコンは つけているが やはり暑い。


 水樹は医者に"真実の愛" を見つけたら良くなると言われていた。

 聖が引き金になって状態が改善した水樹は、自分で見つけたんじゃないか────秀一の中の "真実の愛" を。


 風晴は目を(つぶ)った。


 だとしたら……本当に誰かを好きになったら愛したら、あんなに苦しいのかもしれない。

 周りが見えなくなって馬鹿になって、前にも進めず後にも退けなくて。

 好きになりたくないのに惹かれて恋をしたくないのに──堕ちる。


 そんなことに……いつか自分もなるんだろうか。誰かに そんなふうに想われるようになる?

 今は想像もつかない。てんで子供(ガキ)みたいな気持ちだ。


 そう考えたら、それに耐えてる秀一は偉い気もした。


 うん。やっぱり……アイツって偉いな。馬鹿だけど


 とりあえず殴らなかったのは 正解だったと思える。


 水樹が見つけたものが "真実の愛 "であることを祈った。

 

 自分にとってはそんなものは全くまだ意味不明でも

 あの2人が辿り着くことを願うくらいは 許されるはずだ。


 今の自分は、明日 A県名産品グッズを聖と見つける。

それが 自分のしてやれることだった。







 翌日────

 いくらか気温が上がらない朝の早いうちに、聖は民宿に来た。


 聖はグレーの七分丈ワイドパンツにブルーの半袖パーカーだった。LINEで連絡は来ていたので、風晴はもうマウンテンバイクと外に出ていた。ミステリー同好会メンバーには、午前中は高校で用事があることにしていた。


「おはよう…………風晴!」


 聖は元気そうだった。それだけで風晴は嬉しくなる。


「聖おはよう!行こう!」


 マウンテンバイクに自分も乗って漕ぎ出す。2人は住宅街を抜けて、国道に向かった。







 国道では自転車も走って良い歩道がついているので、わざわざ車道側に出る必要はなかった。パッと見、人はいない。マウンテンバイクを少し横並びにして、風晴は聖に言った。


「もう、ここ真っ直ぐ行くだけだから。でも一つ目のコンビニに寄ろう。飲み物買いたい」


 風晴の言葉に聖がうなずく。

 目も合ったので、風晴は安心してペダルを力強く漕ぎ出した。

 国道と言っても、この辺りの道路脇は田んぼが広がっている。日差しが照りつき始めたが、風はあった。

 わずかに(ふく)らみだした稲穂は青々と光り、風に揺れてキラキラと波打っている。

 彼らはそれを背景に走り抜けた。








 水樹と桂木は、椎名へのプレゼントを選びにショッピングモールに向かう。

 駅に送るレクサスの車内で、北橋は桂木と水樹に言った。


「悪いね、陽邪馬(ひやま)市まで送れたら良かったんだけど。いくつか連絡取りたいところがあって。取れたら長くかかるかもしれないから、今日は駅までだね」


「全然いいです、北橋さん。帰りも歩くこともできますから」


 水樹は言った。

 桂木は何かを察したようで


「連絡って…………もしかしてイギリスとか?」


 と身を乗り出して聞いた。


「そう。まだ取り扱ってもらえるか分からないけど」


 北橋が言っているのは、輪命回病院の卵子提供詐欺のことだ。水樹と桂木は喜んだ。

 警察も動き出したし、そちらの方は、ゆくゆく当時の医師や看護師達が捕まる見込みが出てきた。


「あとは、緑川まどか の行方ですよね。一体どこにいるんだろう」


 水樹が呟く。


「遠くにいるとしても、絶対、誰かに風子さんや桜田を見張らせてはいるよな……きっと。"狙わさせてる"……じゃなきゃいいけど」


 北橋は何か考え込んではいたが、ここでは事件については言わなかった。

 代わりに彼は言った。


「あとは水樹ちゃんの恋の行方でしょ。どうなってるの?言えた?」


 桂木は目を丸くして水樹を見ることだけに、なんとか自分をとどめた。

 水樹はうつむいたが


「言えた。告白したし、付き合って下さいって言葉にした。────駄目かもしれないけど」


 と答えた。


()()って どう言うこと?」


 北橋が前を向いたまま聞く。


「返事してもらえなかったの。だから、考えておいて とだけ言ってきた。だけど…………」


 水樹は言葉を一度切った。車内は静かだった。


「ほぼ駄目ってことだとは……覚悟してる。あんなに迷って困ってるんだもの、無理なんだと思う。

 私それが受け入れたくなくて"考えて"なんか言ったけど、馬鹿だった。すっぱり認めたら良かったよ。その方が冗談みたいに笑えたかも」


 何もかもが上手くいかない。

 桂木は車のシートの背もたれに頭を付けて手を顔にやってる。その口が"あのバカ"と動くのを、北橋はバックミラーで見た。

 後部座席で、桂木の隣りが水樹だった。水樹は声に気がついたのか気がつかなかったのか……


「桂木は何にも言わないでよ?誰かに強制された秀一の気持ちをもらっても全然嬉しくなんかない。だから黙ってて!!」


 と叫ぶように言った。言ったが──すぐに頭を抱える。


「…………ごめん。私、八つ当たりだよね」


 水樹はすぐに謝った。


「いや、全然いいけど。今相当キツイんだろうとは分かるし」


 桂木は姿勢を変えて続けた。


「馬鹿だよなアイツ。水樹ちゃんみたいな女子に告白してもらってOKしないって、ほとんど頭おかしいって。多分、おかしくなったから返事出来なかったんじゃないか」


 実は かなり的を得ている。


 水樹は冗談だと思い、少し微笑んだ。


「ありがとう」


 北橋は水樹の微笑みにいくらか安心した。

 彼は口を開いた。


「あとは、まあ…………」


 レクサスが駅についた。車が速度を落として止まる。

 北橋は振り返って、水樹と顔を合わせて言った。


「凄く真剣に考えているのかもしれないよ?彼。

 水樹ちゃんのことを」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
青い春のような空気の中にちょこちょこと入ってくる不穏の残滓が……………。 緑川まどかは存外近くにいる気もするんだがなあ。
風晴と聖のシーンはほっこりしますね。 二人はもっと親密になって行けそうです。 (*´ω`*) 水樹サイドは、皆が安西をフルボッコ。 当然でしょう。 (・∀・) 北橋は何かと水樹を気にかけていますよ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ