【プロットタイプ】静かな涙
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
大人が泣く時って、何時もそう。
凄く静かに、嗚咽さえ漏らさず、トイレで泣くんですよ。
そうして戻った時、何食わ顔で過ごすんですよ。
切羽詰まった仕事をしていた。締切が本日中で、何度も催促が来た。その癖、事態はややこしいまま進み、全ての修正と変動と体裁を私が全て請け負った。
――まだ終わらないの? 今日、提出なんだけど。
誰もそんな事口には出さなかった。けども空気は張り詰めた糸を通じて伝わってくる。だから何時もの二倍以上頭を働かせて、必死にややこしい事態を解決しようと頑張った。
其れでも上手くいかなかった。何もかも上手くいかなかった。
結局、最終的に修正は全て上司が請け負って、その場はお開きとなった。
目を開き続けたせいか、涙が止まらない。焦燥感を和らげる為に掻きむしった肌が痛い。しっかりせねばと触れ続けた顔が悲鳴を上げる。
私の精神面は既にボロボロで、さり気なくトイレに避難した。そうして嗚咽さえ漏らさない様に、静かに泣いた。
「もう上がって大丈夫だから」
定時の十五分前。上司から言われた一言を皮切りに、私は逃げる様にその場を去った。
玄関のドアが開く音がして、乱暴に閉まる音がした。生気のない、緩やかな足音が此方に向かってくる。けれどもリビングのドアが開かれる事は無かった。足音は遠のいて行く。
違和感がある。同居人は、普段ならば必ず『ただいま』の挨拶をする。足音のテンポはもっと軽やかだ。そうして大抵、真っ先にリビングに来る。
だから様子を伺いに、鏡花の部屋の扉を叩いた。
鏡花は薄暗い部屋の中で、一人体育座りをしていた。こめかみを手首で押さえ付け、苦悶の表情を浮かべている。そうして口元には、人差し指の第二関節が運ばれ、まるで食い千切る様に歯を立てる。
異様な光景だった。少なくとも健全な常人がする行いとは思えなかった。
しかししうしていたのはたったの数秒。俺の姿に気が付くと、直ぐに辞めて草臥れた笑顔を浮かべた。
「ごめんね。挨拶しなくて」
「いや」
「疲れちゃったんだ」
「そうか」
「うん……」
次の言葉を紡ごうと唇を開く。けれども其れは細かく震えるばかりで、音を無さない。変わりに出たのは鏡花の涙だった。
ボロボロ、ボタボタと顔のシワを伝って落ちる。嗚咽は聞こえなかった。堪えているのか、肩と胸が大きく上下するばかりで、何にもなさない。
「あの……私……人を騙すの…………凄く得意で……。だから誤魔化すのも……得意なの。具合悪いのも、機嫌悪いのも、精神面最悪なのも、全部普通に見せるの得意なの………………」
其れは知ってる。どんな事があろうとも、自分の不利益になる様な事があれば、人格を変更して、当たり障りの無いように振る舞えるのが鏡花だから。
「周りに………心配かけ………なくて良かっ…………たって思ったけど、誰も……………私のこと心配してくれなかったな………」
其れから顔を下げて、また体を震わせた。肩は小刻みに震えたかと思えば、大きく上下する。時折漏れる吐息が、空気を介して伝わって来た。
泣いているのだ。必死に、泣きじゃくりたいのを堪えて、必死になって。
「そうして泣いたのか?」
大きく頭を引いた。
「トイレにいる時、電車乗る時、同じように。鼻水……きたないね」
其れからしばらく何かを話す訳ではなく、一緒に寄り添った。同居人が顔を上げて、声を発するまでそうしていた。
今日も散々な一日でした。
何やっても上手くいかない。最悪。
大人ってどうやって泣くか知ってます?
周りにバレない様に泣くんですよ。
表では平気な顔して、一人になった時に嗚咽さえ漏らさず、吐息だけ漏らして泣くんです。
仕事場で泣くって、それだけ大きな損害だから。
首になるまではいかないけど、その一歩手前。
面接なら落とされて当然のレベルです。
泣くって、メンタル駄目になった証拠だから。
メンタル駄目になるって、周りの損害も大きいから。
だから『此奴メンタルイカレてんな』って思われ無いように、泣きながら言い訳も考えるんです。
『悲しい』とか『苦しい』という気持ちだけで泣けるのは子供の時だけ。
だから子供のうちに、感情全面に出した泣き方しておくと良いですよ。
それさえ許されなくなる場面は出てきますから。