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ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者〜蛇足編〜  作者: 哀上
蛇足⑤

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徒然 2

 ……さて、そんな少し前の苦い記憶を思い出しつつ。

 行く当ても無く街をぶらついていた。


 暇といえば暇なのだけど、別段退屈しているわけではない。

 まさにコレと言った言葉は見当たらないものの。

 まぁ、こんな時間もそこそこ楽しんでいるって事だ。


 もうこの街に住んで長い。


 都会を離れてのスローライフ。

 前世でも何度かそんな妄想したことはあった。

 夏の田舎。

 その言葉だけで、どこかノスタルジーを感じる。


 睡眠のお供に。

 環境音のBGMだったり、バックに懐メロを流した青々とした映像だったり。

 ハマっていた時期もあったっけ。


 こんなブラック企業なんて辞めて、田舎でのんびり暮らそう!

 給料を求めなければ働き先ぐらい見つかるはず……


 そう考えて不動産サイトを眺めてみたり。

 地図を眺めてみたり。

 ついには、山菜やらキノコの図鑑まで買った覚えがある。


 ま、結局は妄想しただけなのだが。


 俺の性格。

 とことんまでに面倒ごとが嫌いなのだ。

 転職を面倒がって過労死するんだから筋金入りである。


 そんな俺が転職どころか田舎への引っ越しなんて。

 無理難題もいい所。


 今思えば、あれは体からの危険信号だったのかね?

 栄養が足りないと、その栄養素が入った料理を無性に食べたくなったりすると言うし。

 本能は休息を求めていたのかも。

 その訴えは結局退けられてしまった訳だが、理性というのも考えものだ。


 なんの因果か、死んだ結果その妄想が実現した訳だし。

 俺の本能も今は満足してくれている事だろう。


 そうやって妄想してる頃も、田舎に憧れるばかりでは無かったのだが。


 調べ始めるとね。

 色々と、目につく事も多い。

 良い所も悪い所も。


 普段見てるような動画、その内容にこそその手の情報は少ないものの。

 逆に、コメント欄はそんな愚痴とも取れる言葉で埋まっていることも多々。


「人間関係が面倒」

「田舎でもブラック企業はある」

「むしろ、田舎の方が酷い」


 店がない、特に夜は何もやってない、水道がどうだとか、道路がどうだとか……


 俺の本能が敗北したの。

 もしかしたら、これのせいもあったのかもしれない。


 田舎に休息がないなら引っ越すだけ無意味。

 むしろ、無駄に疲れる。

 何なら生活環境がさらに悪化する可能性もあると。


 本能も理性も自分な事に変わりはないのだ。

 どうせめんどくさがりに決まっている。


 そりゃ、負ける訳だ。


 その点この街は良い。

 住めば都。

 インフラって意味じゃ前世の田舎にもずっと劣るのだろうが、その分忙しなさの様な物も皆無。


 それだけで十分。

 他のマイナスを補ってあまりある魅力。


 俺が特別のんびりしてるだけ?

 ……確かに。

 改めて考えると、他の住民は皆汗水垂らして働いてるような気もする。


 何なら、肉体労働という意味では前世より過酷な所が多いかも?


 ……


 でも、いいのだ。

 俺がのんびり暮らせているのだから。

 それが全て。


 ふと、大通りからそれた脇道に小さな看板が目に入った。

 デフォルメされたハサミが描かれている。


 床屋か……


 自分の頭を触る。

 そういや、結構伸びてきてるな。


 この前切ったのはいつだったか。

 数ヶ月前。

 まだ、一年は経っていなかったと思う。


 そろそろ切るか。


 伸ばしっぱなし。

 おっさんで、見た目にほぼ気を使っていないとはいえ。

 伸び放題は流石に見栄えが悪い。


 それに、これから暑くなるのだ。

 このチートボディーが熱中症に負けるとは思えないが、単純に不快ではある。


 さっぱりした方が気分もいい。


 微妙に立て付けの悪い扉。

 ぎぃ、と少々耳に残る音を立てて開く。


 直せば良いのに。

 いつだったか、ベル代わりになるからこのままでいいのだと言っていたっけ。

 本気で言ってるんだか冗談言ってるんだか。


「らっしゃい。……って、これまた珍しい客だな」

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