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ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者〜蛇足編〜  作者: 哀上
蛇足④

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死闘 18

 おもちゃを持った女将さん。

 その姿に、さっきまで寝ぼけていた頭が急に高速で回り出す。


 これがただのおもちゃならなんの問題もなかった。

 獣っ娘と遊びに来たのかな、とか。

 その程度の感想。

 いや、現状に当てはめるとこの言葉すらなんか別の意味に聞こえてくるけど。

 それは一旦置いておくとして。


 ぱっと見、単にもふもふした可愛らしい尻尾の様に見える。

 実際尻尾ではあるし。

 ただ、これを認識した瞬間。

 昨夜の記憶が走馬灯の様に俺の脳裏を駆け巡った。


 おもちゃはおもちゃでも、いわゆる大人のおもちゃって奴で。

 そして、それを渡したのは間違いなく俺。

 何をしたかと言えば……


 さっきまで心地よく感じていた春の風、それが急に生暖かくじめっとした物の様に感じられた。


 背中にじっとりと冷や汗をかいているのが分かる。

 今更ながら後悔が。

 しかも、高速で回転した脳みそが出力するのは解決策などではなくどうにもならないという現状を伝えてくるのみ。


 無能すぎる。

 変化といえば、寝ぼけていた目が覚めたぐらいだろうか?


 寝起きで空回りしているのか。

 過去を振り返るに、俺の平常運転がこれな気がしないでもないけど。

 真実は神のみぞ知るということで。


 こんな事ならさっさと寝ておけばよかった。

 窓辺ですやすやと気持ちよさそうに寝ている獣っ娘が妬ましい。

 まぁ、アレだ。

 そんな現実逃避していても仕方ないか。


 ……ひとまず、


「すいませんでした!」


 盛大に土下座した。


 なんたって、解決策が何も思いつかないのだ。

 これ以外の選択肢が無い。


 今朝は、後悔はないとか。

 そんな様なことをほざいていた気もするが。

 強がりでした。

 本当に申し訳ございません。


 女将さんの足元。

 少し動かせば、容易く頭を踏めるぐらいの距離。

 我ながら見事な平伏だったと思う。


「ロルフさん? 急にどうしたんですか」


 言葉としては困惑といった様子なものの。

 その実、声色が冷たい。


 まずい。

 これ、ちゃんと怒ってるのでは?

 どうすれば……


 いやまぁ、現状とても冷静とは言えないって自覚はあるので俺の思い込み説も濃厚だけど。


「えーっとですね。昨夜のことは、ちょっとテンションがあがっちゃってたと言いますか」

「つまり、反省はしていると?」

「はい! それはもう、めちゃくちゃ反省してます」


 お、いけるか?

 とりあえず謝り倒せ!


「……ここじゃなんなので、他いきましょうか」


 え、他?


 女将さんの顔を見上げる。

 その視線は獣っ娘の方に向いていた。


 気持ちよさそうに寝てるからね。

 起こしたくないらしい。

 彼女も立派な共犯者の様な気がしないでもないが、誘導したって事で俺だけギルティ判定なのだろう。


 しかし、このアングル……

 女将さんのすぐ側、ほぼ足元で土下座したからね。

 視線を上げると。

 自然と下から見上げる事に。


 別にスカートを下から覗いてる訳でもないのだ。

 逆三角が見えたりなんてない。

 ただ、至近距離からのローアングルってのはなかなかどうしてそそる物がある様で。


「……ロルフさん?」

「いえ、なんでもないです! 行きましょう」


 睨まれた気がする。

 いや、ちゃんと反省はしてるんですよ。


 うん。


 女将さんに案内されるまま部屋を出る。

 客室からどんどん離れてるし。

 風呂場とも全くの別方向だ。

 この宿に通って長いけどこっちの方は来たことがない。


 処刑台に案内される囚人ってこんな気分なのだろうか?

 なんて思考が頭をよぎる。

 ま、そんな経験ないのだけれど。


 いや、近いのはあったわ。

 去年の王都で捕まったやつ、アレあのままだと間違いなく処刑コースだったからね。


 って、んな話はいいのだ。

 なんかどんどん人気も少なくなって、床なんかもキシキシ言い出してるし。

 一体何されるんだ?


 恐怖に震えつつ。

 とは言え、ついていかないわけにも行かず。

 素直に女将さんの後を歩く。


 少しして、見るからに古い扉の前で女将さんが止まった。


 ここが目的地らしい。

 何処だ?

 おそらく、今は使われてない部屋なのだろうが。

 宿の中でもかなり奥まった所に思える。


「ここならいくら大声を出しても大丈夫です」


 ひえっ、

 大声を出しても大丈夫とは?


 拷問でもされるのだろうか。

 確かに、多少俺もやりすぎた自覚はあるけど。

 それは過剰な気も……


 女将さんの手が伸びる。

 く、ここまでか。

 誰か。

 獣っ娘、頼む助けてくれー!


 ……へ?


 その手は俺に触れる前に止まり、差し出された手の中には見覚えのあるもふもふとした物体が1つ。

 えーっと……


「ロルフさん、反省しました?」


 こくこくと大袈裟なまでに頷く。


 それはもう。

 とんでもなく反省しました。

 調子乗ってました。


 本当は返事をしたかったのだが。

 妙な緊張感があったせいか、喉が渇ききって上手く言葉にならなかった。


「ところで、あの娘の母親が私だとしたら父親は誰だと思います?」

「え?」

「いいから答えてください」

「……それは、一応俺なんじゃないですかね」


 俺に獣っ娘の親代わりはふさわしくない、とか。

 そう言う話だろうか?


 確かに、今さっきも助けを求めたばかりだが。

 女将さんにお世話を押し付けておいてこんなことを言う資格がないのは重々承知なものの、それは惜しい。

 だって獣っ娘って可愛いじゃん!


 奴隷商の店頭で一目惚れして買ってしまったのだから、手放すのはどうかご勘弁を。


 俺の思考を遮る様に。

 ぐりぐりと、差し出されていたもふもふが押し付けられる。

 もふもふとした中に一部硬い部分もあって。

 ちょっと痛い。


 ……


 いや、いやいやいや。


「パパなんでしょう? お揃いですよ」

「えっと……」

「大丈夫、ちゃんと綺麗にしてありますから」


 そう言って、抵抗も許されないまま女将さんに押し倒されてしまい。

 ま、待って。ストップ!

 

 アーッ!

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